新築・リノベ・資金相談 不動産会社は「強み」で選べ不動産コンサルタント 田中歩

2020/3/18

お金の面で言うと、不動産会社が持つ機能としては住宅ローン、ライフプランニング、火災保険の提供といったものが主流でした。しかし、2015年の相続税改正で基礎控除(相続税がかからない範囲の金額)が下がったことから、住まい以外の不動産を保有する人が相続対策や保有資産の効率的運用を意識せざるを得なくなったという面もあり、不動産会社の機能は個人や一族の財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の作成・分析や、貸借対照表の中の不動産の効率性、他の資産とのポートフォリオマネジメント、タックスコントロールなどといった分野に広がりを見せています。

不動産会社にも得手不得手がある

かつてのような消費者ニーズであれば、どの不動産会社でも同じようなサービス提供は可能でしたし、大手と中堅・中小でもさほど大きな差はなかったのではないでしょうか。実際、求められた提供価値は、宅地建物取引士の資格試験の範囲で学ぶことをきちんと実践できることと個々人の経験値が重要で、会社間で差が出るとしてもブランド力や不動産の情報量の差が主なものだったと思います(情報量は最近のITの進展で差別化要因ではなくなりつつあります)。

しかし、不動産、建築、お金が互いに絡み合いながらニーズが多様化すると、そのすべてに対応できる不動産会社は決して多いとは言えなくなってきました。また、これら3つの要素を総合的に鳥瞰(ちょうかん)し、消費者のニーズに応えることができるという人材を抱えている不動産会社もそうは多くないのです。

こうなると、消費者にとって大事なことは、自分の求めるニーズや課題が、不動産、建築、お金のどこに起因しているかを理解した上で、それを解決する解を導き出してくれそうな不動産会社をどうやって見つけるかが課題となります。

建築ノウハウや資金相談、融合サービスで強み発揮

こうした中で、これまでとは異なる様々な強みを持った不動産会社が世の中でその存在感を強めています。建築士でありながら宅地建物取引士、かつファイナンシャルプランナー(FP)という人材を抱え、お金の相談から土地探し、注文住宅までを一括で取り扱う不動産会社、中古住宅探しとリノベーションを専門に取り扱う不動産会社、インスペクション(建物状況調査)や個人向け総合不動産コンサルティングを中心に行う不動産会社などです。

また、設計会社やFP会社、投資助言業などの会社が不動産仲介に参入したり不動産会社と協業したりするケースも散見されますし、人工知能(AI)で購入希望者のニーズに合った物件を紹介するサービス提供をはじめ、取引データを利用して独自に将来の賃料や価格を統計学的に推定し、賃貸事業や投資用不動産のアドバイスをしたり、ポートフォリオ構築のアドバイスをしたりすることができる人材を抱える不動産会社も出てきています。

これまでの不動産を中心としたカテゴリーに、建築とお金という要素を組み込み、多様化したニーズに応えようという動きと言えます。もちろん、大手や中堅不動産会社も手をこまねいているわけではなく、新たなサービスを生み出しています。

売る、買う、貸す、借りるという不動産に関する方針が決まっている場合は、どの不動産会社に依頼しても一定の解決はしてもらえるでしょう。しかし世の中が複雑化すればするほど、不動産に対して何をどう決め、実行すべきなのかという問題に直面することが多くなるはずです。ここで述べたような不動産、建築、お金を融合した中での解を求めていかざるを得ない場合には、各社の特徴や得手不得手を自分で確かめ、適切に選んでいくことが重要になっていくでしょう。

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「転ばぬ先の不動産学」は今回をもって連載終了となります。お読みいただいた読者の皆さま、4年間、本当にありがとうございました。また会う日まで。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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