カードを楽々収納 キャッシュレス時代のプチ財布
財布やポーチの小型・スリム化が進んでいる。きっかけは昨年10月の消費税増税。政府のポイント還元策に伴いキャッシュレス決済が一段と普及し、小銭を持ち歩く必要性が少なくなったためだ。ワンタッチでクレジットカードなどが飛び出すタイプや三つ折りの財布が人気。スマートフォンが収納しやすい小型ポーチ類もよく売れている。
財布売り場に異変が起きたのは2019年秋だった。渋谷ロフト(東京・渋谷)が消費税増税に合わせて「支払い革命 Welcome to キャッシュレス」と銘打ち、小型でスリムな財布類約600点を集めた特別売り場を作ったところ「予想以上に好調な売れ行きが続いている」という。
最も売れているのはオランダのブランド「SECRID」の小型財布。レバーをスライドさせると収納されたクレジットカードや交通系ICカード、ポイントカードなどが最大6枚程度まで飛び出す仕組み。一枚ずつズレた状態で出てくるので取り出しやすい。中心価格帯は税抜きで1万円前後。サラリーマンやワーキングウーマンに人気で品切れが相次いでいる。
キャッシュレス決済に対応し、小銭入れのスペースを最小限に抑える一方、カードの収納機能を充実させた。収納部分はアルミニウム製でカードの破損を防ぐほか、スキミングによる被害も防止できる。「機能性に加えてファッション性も高い」(30代男性)ことから支持が集まっている。
フランスのブランド「OGON」の小型財布もよく売れている(1万円前後)。やはりレバーを動かすとカードが出てくるタイプの人気が高い。外国人観光客が多かった同店では新型コロナウイルスの感染拡大による影響があるものの、19年12月から今年1月までの財布の売り上げは前年同期比で2割増と逆風をはねのけて好調だという。
「以前は様々なものが収納できる長財布がはやっていたが、キャッシュレス決済が普及したのに伴い、小型・スリム化が財布の大きなトレンドになっているようだ」と渋谷ロフトのギフト雑貨担当者は指摘する。
西武池袋本店(東京・豊島)でも財布は小型化やスリム化がキーワードだ。売れ筋は日本のブランド「サマンサタバサ」のプチチョイスの折り財布(1万6000円)。カードサイズの三つ折りで持ち運びに便利なのが特徴(11センチ×8.5センチ×4センチ、重さ107グラム)。カードの収納機能も充実している。牛革製で色はピンクやベージュ、イエローなどの売れ行きが良い。
小型ポーチの人気も高まっている。サマンサタバサのポケット付きウォレットショルダー(1万9000円)はスマホなどが収納しやすいのが特徴。最近のスマホ画面の大型化にも対応しており、携帯用バッテリー、ティッシュ、ハンカチ、アクセサリー、文房具、メーク類などと一緒に入れて持ち運ぶのに便利だ。
欧米の高級ブランドでも小さな箱形のショルダーバッグが売れ筋になっている。箱形の形状からファッション関係者には「カメラバッグ」と呼ばれており、ストラップ部分が幅広でズレにくいタイプが人気。好みのデザインに付け替えることもできる。
キャッシュレス化の波でカードやスマホなどで支払いを済ます機会が急速に増えてきた。社会のニーズや持ち歩くアイテムの変化に従い、財布やポーチの形状、機能も大きく変貌を遂げつつある。
(編集委員 小林明)
[日本経済新聞夕刊2020年3月14日付]
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