打ち合わせはプロジェクトの部品 全体を見て設計せよクリエイティブディレクター 佐藤可士和(3)

打ち合わせは、この設計の中の重要な要素になります。そして、大きな構造の中に組み込まれていますから、常にそれぞれがゴールに向かうための目的を持っていることになります。そこで何を話し合うのか、何を決めるのか、はっきりしていなければおかしいわけです。

仕事の構造を意識しておくことで、すべての打ち合わせが目的を伴ったものになっていくのです。

構造ができていれば、「今日はブレインストーミングの日だ」などといったことが明確になります。そうすれば「急いでアイデアを確立させる必要はない」「とにかくいろんな意見を出し合う場だ」「焦ることはない」などという思いも共有できます。

ところが、打ち合わせの目的が曖昧だったり、参加者の間で共有できていなかったりすると、突然打ち合わせの前に「今日は役員も急遽(きゅうきょ)、加わることになりました。可士和さんから、アイデアをプレゼンテーションしていただけるんですよね?」などと問われるような事態に陥る。当然、そういう段階ではないので、こちらに用意はありません。するとプロジェクトはストップしてしまうのです。

仕事の構造と目的が理解できていない典型例だと思います。仮に役員が同席したいと急に申し出たとしても、打ち合わせの目的は変えられません。物事にはプロセスがあるのです。役員にはっきりと、「今日の打ち合わせの目的はこうです」と告げる必要があるでしょう。

ゴールから逆算して打ち合わせを何回にするかはケースバイケースだと書きましたが、原則はあると思っています。それは「できるだけ少ない回数を心掛ける」ということです。むやみに打ち合わせを入れようとするのは、参加者の時間を奪う行為でもあるからです。

そもそも、打ち合わせの回数は少ないほうがいいのです。本当に必要なものだけをやる。まずは「この打ち合わせは本当に必要か」を常に精査する意識を持っておくべきだと思っています。

プロジェクトには、ゴールがはっきりしていないこともあります。これもやりたい、あれもやりたい、という要望がたくさん出てきたり、何かをしたいけれど何をしていいのかわからなかったり、というケースです。

しかし、明確にいえることは、一度にたくさんのことはできないということです。そこで話をするのが、まずは課題をはっきりさせること。クライアントには何が問題なのかを整理していきましょう、というお願いをします。

あれもこれも、ではなく、まずはどれをやるのか決めるのです。

課題を設定し、コンセプトを立て、実際のアイデアを考え、デザインをし、それをどう運用するかを決める。それが、僕が関わる多くのプロジェクトの基本的な流れですが、最も重要なのは、最初の課題の設定です。これがズレたら、何も生み出せない。そもそも、何が問題かわからなければ、解決することなどできないのです。

POINT
▼プロジェクトの「構造計算」を行う
▼適正な打ち合わせの回数をゴールから逆算する
▼「あれもこれも」ではなく「まずはどれをやるのか」を決める
佐藤可士和
撮影:尾鷲陽介
クリエイティブディレクター。慶応大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。
1965年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。著書に『佐藤可士和の超整理術』『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』など。

佐藤可士和の打ち合わせ (日経ビジネス人文庫)

著者 : 佐藤 可士和
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 880円 (税込み)

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