投資の本質 「もうけを増やす」にあらず(澤上篤人)さわかみ投信会長

日経マネー

草刈貴弘氏(左、撮影:竹井俊晴)

草刈 働くことで社会の中で役に立っているという感覚が持ていないと切ないですよね。自分の時間を切り売りしている感覚も同じでしょう。生活のために自分を犠牲にしているという感覚で働いても長続きしないと思います。

投資も同じで、自分さえもうかればよいという感覚では、いつかむなしくなると思います。投資の目的は確かに資産を増やすことかもしれませんが、自分が手放したお金が社会に貢献し、巡り巡って大きくなって返ってきたら、それは素晴らしいことですよね。税金にも同じような側面がありますが、投資なら自分の意志でお金を投じる先を選択し、その成果や効果を目に見える形で確認できます。

澤上 世の中のため、人々のため、自分は何ができるか……。やはり我々は、生きていく上でそれぞれの意志や将来への夢、そして情熱といったものを大事にしたい。お金に働いてもらおうとする時も同じで、世のため、人のために役立たせていただくという思いや志は欠かせない。

投資のリターンというが、リターンには「もうける」とか「値ザヤを抜く」といった意味はない。あくまでも資金を投入して、皆に喜ばれて、ありがとうという言葉と共に戻ってくるのが「リターン」だ。

草刈 リターンは必ず未来から返ってきます。その未来が良いものでなかったら、それは何のリターンなのかということになってしまいます。

こういった観点で考えると、投資の仕組みや金融商品についてあれこれ教育するより、社会全体のつながりや仕組み、その背景や歴史を学ぶ機会・場所を設ける方がはるかに大切だと思います。

澤上 そうだよね。もっと本質的で、まともな議論を展開したいものだ。そうしないと、投資というものが経済活動の上っ面を追い掛けるだけの、安っぽいものになり下がってしまう。これは日本経済にとっても、国民生活にとっても、大きな損失となるよ。

澤上篤人
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立
草刈貴弘
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)

[日経マネー2020年4月号の記事を再構成]


日経マネー 2020年 4 月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP
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