ある土曜日の夜。筧家のダイニングテーブルでは、夕食を終えた良男と幸子がお茶を飲みながらくつろいでいます。ソファでは投資を勉強中の満がうれしそうな顔をしながらスマートフォンをのぞき込んでいます。「どうしたの?」。幸子が満に話しかけました。
満 きのう、ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)で持っている銘柄の株価が突然、大きく上昇したんだ。日経平均株価は大きく下がっているのに。なぜだろう?
幸子 2日前の夕方に決算を発表したようね。利益が伸びているから、これが評価されたのかもしれないわ。
満 見落としていたよ。
良男 そもそも、満は決算が何か知っているのかい?
満 企業の「通信簿」みたいなもので、上場企業が3カ月に1回発表するんだよね。ある期間にどのくらいのモノやサービスが売れて、どのくらいの利益が出たかがわかるんだ。
幸子 企業の業績は、その企業の置かれた状況や将来性を分析するのに欠かせないの。景気や金利、為替相場などの動きに大きく影響を受けるわ。景気が良くなると通常、サラリーマンが会社から受け取る給料が上がって、多くの人がモノやサービスへの支出を増やすの。食品や衣類などの小売りが代表的ね。流通などの関連産業も活発になって、多くの会社の業績が拡大しやすくなるの。もちろん、株価は上昇しやすくなるわ。

良男 金利はどのように影響するんだい?
幸子 金利が下がると、例えば個人は住宅ローンを借りるコストが低くなるなどのメリットがあるわ。多くの人が家を買うと、住宅メーカーが恩恵を受けたりするの。自動車ローンなども組みやすくなるわ。企業は金融機関から資金を調達しやすくなるから、設備投資が活発になる傾向があるの。産業用ロボットを製造する会社などに注目が集まりやすくなるわ。