「見えにくい」は認知症のリスク 目の変調は対応早く

かすむ、ぼやけるなど目の変調は早めにチェック=PIXTA
かすむ、ぼやけるなど目の変調は早めにチェック=PIXTA

年齢とともに、かすむ、ぼやけるといった「見えにくさ」を感じることが増えてくる。だが、年のせいだから、と放置するのは危険。ドライアイとうつの関連や、白内障による見えにくさが認知機能低下につながることなどが分かってきている。一方、白内障手術で抑うつ状態や認知機能が改善するという報告や、目の動きをとらえることで簡易に認知機能の低下がわかる検査も登場している。早めに「目の変調」をチェックして、認知機能を守りたい。

白内障手術で抑うつ、認知機能も改善

対象物を見るだけでなく生涯の健康を下支えするのが視機能。イギリスで行われた「高齢社会で自立して生活するための条件を探る研究」では、認知機能、身体機能、視機能の3つの維持が重要と提言。視覚障害は他の機能障害を招き、死亡リスクも高めるとし、予防の必要性を説く。[注1]

日本は世界の中でも最も速く高齢化が進む国の一つ。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症となり、700万人を超えるという推計もあるが[注2]、認知機能の維持には視機能が大きく関わっているようだ。

米国で行われた60歳以上を対象にした約3000人の調査では、部屋の向こう側のテレビ画面が見えない、新聞が読めないといった視覚障害があると、認知機能障害や認知症のリスクが1.9~2.6倍になるという結果が出ている。[注3]

加齢によって罹患(りかん)数が増える白内障と認知機能の関連を研究するのが、筑波大学医学医療系眼科の大鹿哲郎教授。「白内障の手術を行い、視機能が回復すると、抑うつ状態、認知機能も改善した(グラフ)」(大鹿教授)。

白内障は目のレンズ機能を果たす無色透明な水晶体のたんぱく質が変化し、濁ることによって発症する病気。視界がかすんだり物が二重に見えるようになったりして、日常生活に支障が出る。水晶体の初期の混濁を含めた有病率は、50歳代で37~54%、60歳代で66~83%、70歳代で84~97%、80歳以上で100%とされている。[注4]

「しかし、白内障は手術によって治療できる。濁った水晶体を取り除き、眼内レンズと交換する手術は日帰りで受けることができ、術後は視界が鮮明に見えるようになる」(大鹿教授)

白内障の両目手術を受けた102人の患者(平均年齢75.3歳)を対象に、手術前と手術2カ月後の視覚関連QOL(VFQ-25)、うつスコア(BDI)、認知機能テスト(MMSE)を比較。白内障手術は、視覚関連のQOLと認知機能を有意に改善し、うつスコアでも改善が見られた。また、視覚関連QOLと認知機能、さらに認知機能とうつスコアには有意な相関が見られた。(Am J Ophthalmol. 2008 Sep;146(3):404-9.)

[注1]Int J Epidemiol. 2014 Aug; 43(4): 1063-1072.

[注2]「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業)

[注3]JAMA Ophthalmol. 2017 Sep 1;135(9):963-970.

[注4]科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究、2002(厚生労働省)

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