コードバンに近大マグロ 姫路のタンナー新喜皮革の技ニッポン発ラグジュアリー(4)

2020/3/12
独特のツヤを持つコードバンやホースハイドといった馬革から作るバッグ。そのなめし技術は世界でも高く評価される
独特のツヤを持つコードバンやホースハイドといった馬革から作るバッグ。そのなめし技術は世界でも高く評価される
「ラグジュアリー」という言葉から連想されるブランドとは。エルメス、シャネル、アルマーニ、ブリオーニ――。それは欧州に集中する。歴史や高度な技術に裏打ちされた最高無比の品質、所有者に夢を与える美しさと心地よさ。そうした条件を備える作り手と創造物が「ラグジュアリーブランド」を公言する。では、日本に同様のブランドを生み出す素地はないのか。そんなことはない。洗練された美意識、精緻なモノづくりの技術、時代を超えて人々を魅了する素材。この国にはあまたの条件がそろう。そして今、まさに「ニッポン発ラグジュアリー」創造への挑戦が始まっている。



「革のダイヤモンド」コードバン、日本で唯一一貫生産

「革のダイヤモンド」という呼び名を持つ皮革がある。高級バッグや靴に使われる馬革、コードバンだ。希少な部位である尻の革の一部分で、宝石のように研磨すれば、その表面は独特の光沢を放つ。兵庫県姫路市にある新喜皮革は60年以上馬革のタンナー(皮革原料生産者)を営み、日本で唯一、コードバンを一貫生産してきた。2010年には馬革のバッグや小物を生産・販売する子会社、その名もコードバンを設立し、自社ブランド「ジ・ウォームスクラフツ マニュファクチャー」を展開。馬革の素材から製品までを一手に担う、世界でもまれな会社となった。

コードバンのブリーフケースは弁護士など士業のファンも多い(税別40万円)
ホースハイドを使った人気のトートバッグ(Circe)の限定品でバラの型押しタイプ(税別14万8000円)

皮革工場と同じ建物にあるコードバンの工房を訪ねると、軽快な音楽が流れるなか、10人ほどいる若手職人が小物の製造に没頭していた。皮革のカット、縫製、検品――。小規模なこの工房の手仕事から、国内外のファンを魅了する商品が次々と生み出されていく。

代表的な商品の一つがコードバンを使ったウォレットだ。しっかりした作りながら、持てばしっとり手になじむ。内側もすべて馬革だ。通常の長財布は完成までの工程がほぼ80。かたやこの財布はおよそ200工程かかる。深みのある黒、鮮やかな赤、シックなパープルと、美しい発色も高級革ならでは。オーダー会ではたちまち売り切れてしまうという人気の商品だ。

ベストセラーのジップウォレット。コードバンの高級感と鮮やかで深みのある色が人気だ(税別6万8000円)

すべての商品をデザインしているのは、デザイナーでコードバン常務の米田浩さん。「最高のコードバンを使うからにはファスナーなどの部材、技術、デザインすべてがコードバンに背かない、最高のものでなければいけない」と語る。このジ・ウォームスクラフツは、かつて米田さんが新喜皮革に入社する前、自身で運営していたファッションブランドをベースにしている。

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「革は肉を食べた後の副産物。その本質を伝えていきた
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