とっておきの笑い、こんなときこそ 談笑小話集
立川談笑
日本全国、いや世界中でストレスがたまって、いまにも爆発しそうですね。こういうときは、スカッと笑いましょう。とっておきの小話をフィクションを交えながらご紹介します。ワハハでもニヤリでもできたら、ご喝采!
ホワイトハウスにて
その日、トランプ米大統領はテレビの前でサッカーの試合を見ていた。米国対メキシコの国際戦。その熱心な様子を見て側近が聞く。
側近「おや? 大統領、意外ですね。サッカーに興味がおありでしたか」
大統領「いいや。興味もないし、ルールも知らん。ただ、いまいましいメキシコ人たちをやっつけるのを見たいだけだ」
しばらくするとトランプ大統領がテレビの前で叫びはじめた。
大統領「おいおい! おまえたち仕事なんかしてないでこっちへ来い! これを見てみろ! やった! とうとうやったぞ! わっはっは!」
集まった側近たちがテレビを見るとまだ得点は0-0。メキシコのゴール近くでファウルがあり、これから米国側のフリーキックになるところだった。
側近「いやいや、お言葉ですが大統領。たしかに大チャンスではありますがまだ得点は入っていませんよ。これからフリーキックといって、ゴールが決まるかはこの後です」
大統領「そうじゃない。これを見てみろ! とうとうメキシコ人が自分たちで『壁』をつくりはじめたぞ!」
最高級のプライド
北海道の一本道を最高級のロールス・ロイスが疾走していた。ところがあろうことか、急にスピードが落ちたかと思うとピタッとエンジンが止まり、車がまったく動かなくなってしまった。あたりには人家も店もない。男は途方にくれて外に出た。そしてスマホをとりだした。
男「あー、もしもし。おたくで買ったロールス・ロイスね。どういうわけだか動かなくなっちゃったんだ」
業者「かしこまりました。GPS(全地球測位システム)で位置を確認いたします。北海道ですね。では20分ほどお時間をいただけますでしょうか」
10分ほどするとどこからか爆音が響いてきた。大型のヘリコプターだ。目の前に舞い降りると後部ハッチが開き、中から出てきたのは同じ色と型のロールス・ロイス。
業者「こちらをお使い下さい。手続きなどはこちらで済ませますので」
古い方の車を積み込むとヘリは飛び去って行った。そして後日。販売担当者と話をする機会があった。
男「いやあ、あの時は助かったよ。ありがとう。故障車の替わりを、まさかヘリで届けてくれるとはね」
業者「あの、おっしゃっておられる意味が分かりかねますが。『わたくしどもロールス・ロイスの車が、故障』ですって? ご冗談でしょう」
早く言ってよ
きのうの牛乳
朝食後、中学生の息子が母親に言った。
息子「かあさん。やっぱりきょう、学校休もうかと思うんだ」
母「あら、どうかしたの?」
息子「おなかが痛いんだ」
母「いつから?」
息子「うーん、きのうの昼すぎからかなあ」
母「やだ。ヘンなものでも食べたんじゃない?」
息子「きっとかあさんがきのうの朝、出した牛乳だよ。ほら、『1週間も賞味期限切れてるよ!』って言ったら、かあさんたら『ちょっとくらい過ぎてたって大丈夫! かあさんの鼻を信用しなさい』って。あの牛乳でおなかこわしたんだよ。さすがに1週間はアウトでしょう」
母「失礼なこと言わないでよ。じゃあきのう飲んだ牛乳が腐ってたっていうの? だってあんた、今朝だってきのうと同じ牛乳飲んでるのよ」
思い切って告白
男「ミユキちゃん、ちょっといいかな」
女「突然どうしたのカズヤくん。なんかちょっと怖い顔してるんだけど」
男「思い切って告白するよ。入学式のときからずっと好きだったんだ。おれと、付き合って下さい!」
女「カズヤくん……」
男「おねがいします!」
女「そういうことってさ。在学中に言ってよ。30年ぶりの同窓会でする話じゃないよね」
登校前のゆううつ
平日の朝。
「たかし! たーかし! 起きなさい! いつまで寝てるの。ほらほら、歯ぁ磨いて顔洗って、朝ごはん食べて。さっさと支度して学校行きなさい。んもう。毎朝なんだかんだ言って、結局行くんだから。同じことなら楽しく元気に学校行けばいいでしょ? あんたが行かなくて誰が授業するの? 先生がずる休みしたがっちゃダメでしょ!」
レーガン米大統領のスピーチ
「私は、アメリカ合衆国大統領としての資質を完璧に備えております。第1に、抜群の記憶力! 第2に! ……えーっと、何だっけ?」
これはレーガン大統領(在任1981~89年)が実際にあちこちで使った、いわば「鉄板のつかみネタ」です。こうなるとジョークというよりも、ユーモアとかウイットといった類いですね。面白いのでここからはちょっと路線変更しましょうか。
生きるか死ぬかの状況なのに
もうひとつ、レーガン大統領の言葉から。一番有名なやつ。
死の瀬戸際でジョークをかます大統領
首都ワシントンで銃撃されたレーガン大統領。病院に搬送され、胸部に受けた銃弾を摘出する緊急手術を受けることになった。
ストレッチャーに乗せられ手術室に運ばれながら、執刀する医師たちを見上げて酸素マスクをはずして言ったのがこのセリフ。
「みんな、共和党支持者ってことで大丈夫かな」(" I hope you are all Republicans.")
もちろんレーガン大統領は共和党。緊迫した場面での一言に、その場の医師も看護師もどっとウケたそうです。「全員、共和党員です。ご安心を」と答えた執刀医は、実は民主党員だったというオマケ付き。同じ時に、救急救命室に駆け付けたナンシー夫人にかけた言葉も有名です。
「避(よ)けりゃよかった」("Honey, I fogot to duck.")
これはかつて、「拳聖」と呼ばれたボクシングの世界王者、ジャック・デンプシーが王座から転落した試合の直後、電話口で妻にもらした伝説的名ゼリフの引用です。ぎりぎりの強がりが、かっこいい。もうひとつ。その時レーガン大統領が看護師に筆談でジョークをかましています。日本人にはかなり分かりづらいのですが、紹介しますね。
「こうなったらフィラデルフィアでも構わないから、この世にいたいよ」( "All in all, I'd rather be in Philadelphia.")
WCフィールズという有名なコメディアンのネタだそうです。死ぬよりはマシな所がフィラデルフィアってことですか。ずいぶんな言われようですね。
日本でも「瀕死(ひんし)のジョーク」、ありますよ。昭和の爆笑王こと、先代林家三平師匠。死の床にあった病院で「もしもし! 聞こえますか? お名前を言って下さい!」と意識の確認をされた三平師匠。もうろうとしながら、こう口にしたそうです。
「か……加山、雄三です」
どうぞ皆さん、健やかにお過ごしくださいね!!!
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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