組織の転移を左右する「マジックナンバー150」

水は「温度」によって液体から固体に相転移を起こしたが、組織は「サイズ」と「構造」によって相転移を起こすとバーコールは主張する。そして、特に重要なのが、組織の人数だ。それをバーコールは「マジックナンバー(M)」と呼び、通常は「M=約150」になるという。

給料とエクイティ(ストックオプションなどの成功報酬)を組み合わせたインセンティブを調べていると、組織の臨界規模があることに気づく。マジックナンバー「M」だ。規模がそれ以上になると、プロジェクト重視から政治重視へバランスが変化する。
この閾値以下だと、全社員がルーンショットを生み出そうと奮闘するが、閾値を超えると自身の昇進の重要性が高まり、政治がいきなり顔を出す。ルーンショットは軽んじられ、フランチャイズ(二番煎じのアイデア)がもてはやされる。個々の社員はイノベーションを信じているかもしれないが。
(第7章「相転移II マジックナンバー150」 317ページ)

ここが『LOONSHOTS<ルーンショット>』の核心部分の一つだ。組織には相転移を起こす「人員数=マジックナンバー」があり、それを超えてしまうといや応なく「政治重視の相」に転移してしまう。水がセ氏0度より下がると突然凍るように、組織も人員数がマジックナンバーを超えると、突然、「政治重視の相」に転移する。

ただし、いい話もある。マジックナンバーはインセンティブ・報酬制度や組織の構造(各部署の人数など)によって変動し、組織がフラットで、社員のやる気にむすびつくインセンティブ制度がある組織は、マジックナンバーを150よりも大きくできる。つまり、組織が拡大しても「ルーンショットの相」を保ち続けたいと思うなら、インセンティブ制度や部署の人数、組織の階層数などの「構造」を工夫して「マジックナンバー」を増やせばいい、ということだ(本書には、マジックナンバー算出の方程式も載っている)。

それを図で示すと下記のようになる。

集団の規模が臨界閾値(前述の方程式のマジックナンバー)以下なら、ルーンショットを実現しようとするインセンティブが働く。そのマジックナンバーを超えると、政治重視(昇進のための政治工作)の方向へインセンティブが移動する。典型的な集団構造の場合、マジックナンバーはおよそ150だ。しかし、構造のパラメータ(エクイティ比率、適合レベル、マネジメントスパン、給与アップ率)を調整することで、そのマジックナンバーを増やすことができる(だから破線は斜めに傾いている。調整不可能なら、破線は垂直になる)。同じことを別の表現で言うなら、政治重視の相にとらわれた150人を超える集団は、その構造を修正することによって、ルーンショット重視の相を取り戻すことができる。
(第7章「相転移II マジックナンバー150」 321ページ)

社員数が増えても、創業期の頃の輝きを保ちたいと考えている経営者は多い。組織が「凍りつかない」ようにするためのマネジメントの視点として、「相転移」の考え方をぜひ取り入れていただきたい。

(日経BP 沖本健二)

LOONSHOTS<ルーンショット> クレイジーを最高のイノベーションにする

著者 : サフィ・バーコール
出版 : 日経BP
価格 : 2,200円 (税込み)

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