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令和の時代になっても、世の中にはまだ解明されていない謎が山ほどある。たとえば、どのようにして鳥は群れ、病気は流行し、テロリストは行動し、生態系は壊れるのか。こうした複雑系の現象を解明する科学として「相転移(そうてんい)」が注目を集めている。

物理学者にしてベンチャー起業家であるサフィ・バーコール氏の最新刊『LOONSHOTS<ルーンショット>』(三木俊哉訳、日経BP)のなかで、相転移のアプローチを用いて人間の組織の謎を解明しようと試みている。なぜ、組織は活性化したり、衰退したりするのか。その原因は、「文化」といった曖昧なものではなく、「人数」「人事・報酬制度」といった「構造」にあり、それをコントロ-ルすれば、硬直化した組織でも活気を取り戻し、イノベーションを生み出せるようになるという。その主張を本書から見ていこう。

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発想が斬新なほどつぶされやすいジレンマ

物理学者でバイオテク起業家のサフィ・バーコールは2019年、米国で出版した著書『LOONSHOTS<ルーンショット>』のなかで、「相転移の科学」をビジネスの世界で応用する方法を説き、ベストセラーになった。

本のタイトルになっているルーンショットとは著者の造語で、「誰からも相手にされず、頭がおかしいと思われるが、実は世の中を変えるような画期的アイデアやプロジェクト」を指す。世界を変えるような最も重要なブレークスルーは、「いかれた発想=ルーンショット」から生まれると、著者は力説する。ただ、そうした発想が生まれたときは、あまりに斬新すぎて、潰されてしまうことが多い。逆に言えば、ルーンショットを自分たちのモノにできた企業は、競合を出し抜き、飛躍的に発展できる。

ここで、相転移の話が関係してくる。もろくて潰されやすいルーンショットを育て、花開かせるには、組織がどんな「相(そう)」にあるかが非常に重要な鍵を握るからだ。

「相転移(そうてんい)」というと難しそうだが、コップ1杯の水を思い浮かべてほしい。常温の水(液体の「相」)を冷凍庫に入れて冷やせば氷(固体の「相」)になる。つまり、温度を下げることによって、液体の「相」から固体の「相」に転移する。このように、相転移は、ある要因(水の場合は「温度」)によって、物の様態や性質が様変わりする現象を指す。

水と同じく、人の組織にも「相」があり、相転移を促す要因が整えば、組織はクリエーティビティーあふれる「ルーンショットの相」から、新しいアイデアを潰し社員が自らの出世に精を出す「政治活動の相」へ突然変容するというから恐ろしい。

著者のバーコールは、組織の相転移を引き起こす要因は、「文化」ではなく「しくみ・構造(ストラクチャー)」だと言う。しかも、どんなに文化が優れていても、組織の規模が拡大すれば相転移を避けて通れないと主張する。

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