ノキア凋落の原因は「相転移」だった

この本では、「ルーンショットの相」から「政治重視の相」に転移した事例として、2000年代初頭に携帯電話で市場シェア・ナンバーワンを誇っていた、フィンランドのノキアを取り上げている

2004年、ノキアの少数のエンジニアが全く新しい電話を発明した。インターネットに接続可能で、大型カラーディスプレーと高解像度カメラが付いている。併せてオンラインアプリケーションストアも開設したい、と彼らは興奮気味に語った。ところが、経営誌の特集で称賛された同じ経営陣がその両方を却下した。3年後、エンジニアたちは自分たちの突飛なアイデアが、サンフランシスコのステージ上で実現しているのを目にした。スティーブ・ジョブズが iPhone をお披露目したのである。
5年後、ノキアは行き詰まり、2013年にモバイル事業を売却した。同事業のピークからこのときまでに、ノキアの企業価値はおよそ2500億ドルも低下した。極めて革新的だったチームが様変わりしていた。
(「はじめに」 19ページ)

本来なら手に入れられたかもしれないスマートフォンでの天文学的な額の売り上げと利益は、ノキアの手をすり抜け、アップルのジョブズにさらわれてしまった。その最大の原因は、組織が相転移を起こし、「政治重視の相」に転移していることに、経営陣が気づかなかったことだ。

「政治重視の相」にあると、組織はルーンショットを潰しにかかり、二番煎じ的な収益の見通しが立ちやすいアイデアやプロジェクトを採用する方向へと傾いていく。

組織の相転移をコントロールするには?

では、「政治重視の相」への転移を防ぐためにはどうしたらいいのか。相転移で注目すべきは、転移を引き起こす要因を見つけ出せば、どの「相」にするかを人為的にコントロールしたり、転移のタイミングを予測したりすることができる点だ。

すべての人は違うし、すべてのチームは違うけれども、相転移がおもしろいのは、予測がつきやすいということだ。組織は一定の規模を超えると必ず変化する。それは水が一定の温度を下回ると必ず凍り、車の密度が臨界点を超えると必ず渋滞が発生し、強風のなかで森の木が一つ燃えると必ず山火事になるのと同じで、いずれも相転移の事例だ。
それぞれの人やチームは謎かもしれないが、集団が相転移を経験する可能性は数学的な確かさを持つ。素晴らしいのは、相転移を一度理解したら、それをコントロールできるようになる点だ。もっと丈夫な素材、もっとよい道路、もっと安全な森をつくる――そして、もっと革新的なチームや会社をつくることもできる。
(挿話「創発の重要性」 252ページ)

では、どのようにしたら、組織を「政治重視・二番煎じ重視の相」から「ルーンショットの相」へ移行できるのか。

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