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新型コロナによる肺炎 通常の肺炎と何が違うのか

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

新型コロナウイルスによる感染症は拡大の一途をたどっている。このウイルスに感染すると、風邪のような症状だけで済むこともあれば、肺炎を発症し、命を落とすこともある。不安は募るばかりだが、こうした状況で一番大切なのは、この感染症を正しく理解し、正しく恐れること。特に「肺炎」については、誰もがその名前を知っているが、実態を理解している人は少ない。そもそも肺炎はどのような病気か、なぜ肺炎で亡くなる人が多いのか。新型コロナウイルスによる肺炎は、これまでとは何が違うのか。肺炎を避け、予防するにはどうすればいいのか。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんに解説していただく。(※この記事は、日経Goodayに2020年3月3日に掲載された記事の転載です。情報は掲載時点のものです)。

◇  ◇  ◇

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大し、収束の糸口が見えない。折しも今は、風邪やインフルエンザだけでなく、スギ花粉症の流行時期にもあたる。咳や鼻水、発熱などの症状が出たとき、「新型コロナでは?」と不安に感じる人も多いだろう。

安倍晋三首相は、大規模なイベントを2週間自粛するように呼びかけたことに続き、3月2日から春休みまで全国の小中高校と特別支援学校を臨時休校にする、という異例の要請を表明した。まさに前代未聞の事態を迎えている。

パニックを起こさず冷静に行動するためには、この感染症について正しく理解することが大切だ。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は未知の病原体であり、まだまだ分からないことが多い。だからこそ、誰もが不安を抱えている。

私たちがまず知っておくべきは、「肺炎」という病気についてだ。新型コロナウイルス感染症において人の命が奪われるのは「肺炎」が原因。まず肺炎について正しく理解すること、それが新型コロナウイルスを「正しく恐れる」第一歩となる。

ウイルスによる炎症が上気道だけでとどまれば軽症だが…

そもそも肺炎とは、その名の通り「肺に炎症が起こった」状態だ。多くは感染症で、気道から侵入した細菌やウイルスなどの病原体が肺の中で炎症を引き起こす。なお、感染が原因ではないアレルギー性の過敏性肺炎もある。

それに対し、風邪は、炎症が起きる場所が違う。別名「上気道炎」というように、気道のうち、食べ物も通る上側「上気道」(喉頭から上)で炎症が起きている。これより奥の、空気しか通らない下部が「下気道」(気管から肺まで)であり、体のさまざまな防御システムがあるため、健康な人なら細菌やウイルスの侵入は許さない。

つまり、普通の風邪の場合、ウイルスが侵入したとしても上気道止まりとなる。だから、たいていの場合、のどや鼻などの炎症で終わるわけだ。では、新型コロナウイルスはどうなのだろうか。

「新型コロナウイルスに感染すると、まず風邪のような症状が1週間ほど続きます[注1]。多くの人はそれで回復しますが、中には重い肺炎の症状が出る人もいます。つまり、上気道にとどまらず下気道にもウイルスの侵入を許したというわけです」(大谷さん)

なぜ高齢者や持病のある人は重症化しやすいのか?

ここで理解してもらいたいのは、新型コロナウイルスに感染したとしても誰もが肺炎になるわけではなく、軽症で済むことが多いということ。体の防御システムが機能して、下気道への侵入を阻むことができれば、軽症で収まることも多い。これは中国における患者データの分析の結果からも見えている。

中国の4万4672人の感染者のデータを分析した結果、新型コロナウイルスの感染が確定した患者の81%は軽症(肺炎ではない患者、または軽症肺炎の患者)で、重症は14%、重篤は5%となっている。

また、致命率(患者数に対する死亡者数の割合)は2.3%、死亡者の多くが60歳以上か、心血管疾患や糖尿病など持病のある患者だった(参考記事「新型コロナ、中国7万人の患者分析 致命率高齢で高く」)。

「軽症で済むかどうかの分かれ道は、体の防御システムが機能するかどうかにかかっています。高齢者や基礎疾患のある方は、免疫力が低下していて、防御システムがうまく働かず、重症化しやすいのです」(大谷さん)

ここで、年齢と免疫力、そして病気の頻度の関係を示したグラフを紹介しよう(下図)。これを見ると、加齢とともに免疫力が落ちていくのに伴い、病気にかかるリスクが着実に高まっていることが一目瞭然だ。もちろん個人差はあるが、一般に免疫力は思春期でピークを迎え、40代で半分に、70代で10%に落ちてしまう。当然、加齢とともに、肺炎にかかるリスクは着実に上がっていく。

また、咳によって異物を吐き出すのも防御システムの1つだが、これも加齢とともに衰える。ウイルスや細菌がのどの奥まで侵入すると、気道の表面にあるセンサーが異物を察知して脳に伝え、脳は、即座にのどに対して、異物を吐き出すように指示する。これが咳だ。

このほか、気道には細かい毛(線毛)がビッシリと張り巡らされており、これも異物の侵入を防ぐ。線毛の毛先は粘液で覆われており、口の方向になびくように動いているため、異物をキャッチして、ベルトコンベヤーのように口へと運んでいくのだ。この絡めとられた異物は、咳をすることで痰として吐き出される。

「このような防御システムがあるため、通常、病原体は上気道で炎症を起こす程度で、なかなか下気道まで入れません。ところが、年を取ったり、糖尿病や心疾患などの持病があると、このようなシステムがうまく働かないことがあるのです」(大谷さん)

[注1]このため、感染初期の症状では風邪と見分けるのは難しい。

ウイルス性肺炎はそもそも診断が難しい

新型コロナウイルスによる肺炎は、当たり前だが、「ウイルス性肺炎」だ。ところが、「健康な人がなる肺炎は、多くの場合、細菌性肺炎です。細菌性のほうが、ウイルス性に比べると、診断や治療がしやすいのです」と大谷さんは話す。

細菌性とウイルス性では、肺の中で炎症が起きる場所が異なる。細菌性肺炎の場合は、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が、気道の末端にある「肺胞」という小さな袋の中で増殖し、炎症を起こす。高熱が出て、咳とともに、膿ともいえる黄色や緑色の痰がたくさん出てくる。このように、肺胞の中で炎症が起きる肺炎を、「肺胞性肺炎」という。

一方、ウイルス性肺炎は、今回の新型コロナウイルスのほか、インフルエンザウイルスや、RSウイルス、麻疹ウイルスなどによって、肺胞壁やその周辺の「間質」で炎症が起きるもので、悪化すると、肺胞の組織が線維化して硬くなっていく。このように間質で炎症が起きる肺炎を「間質性肺炎」といい、ウイルス以外には、カビなどのアレルギーが原因でも起きる。

「細菌が原因の肺胞性肺炎は、レントゲンなどの画像診断で、濃い影が写ります。これは、肺胞の中に炎症物質が充満しているからで、このような影を『湿潤影』といいます。一方、ウイルスが原因の間質性肺炎は、薄いすりガラス状の影しか出ず、軽症の場合はCT(コンピューター断層撮影)でなければ分からないほど薄い影になることもあります」(大谷さん)

細菌性肺炎では、画像診断で濃い影が出るうえに、黄色や緑色の痰が出るので分かりやすく、また聴診器をあてると、特徴的な音が聞こえるという。一方、ウイルス性肺炎は、画像診断ではぼんやりとした影になり、そもそもケースとして数が少ない。

「高齢者は、インフルエンザになったときに肺炎を併発する率が高いのですが、その場合でも、ウイルス性ではなく細菌性であることが多い。つまり、インフルエンザで免疫力が落ちたときに、肺炎球菌などが原因となって、肺炎が起きるわけです。一方、ウイルスが原因の肺炎は、数としてはずっと少ないのです」(大谷さん)

細菌性肺炎が疑われる場合、抗菌薬(抗生物質)を投与すれば、症状が良くなることが多い。複数の菌に対して効く抗菌薬もある。一方で、ウイルス性肺炎の場合、その原因となっているウイルスを退治する抗ウイルス薬があればいいのだが、そもそもインフルエンザウイルスなど一部のウイルスしか治療薬がないのが現実だ。ご存じのように、新型コロナウイルスもまだ治療薬が作られていない。

感染力が高く、治療薬がないことが不安のもとに

ここまで、そもそもウイルス性肺炎が、細菌性肺炎に比べて、診断や治療が難しいという話をしてきた。それに加え、新型コロナウイルスが未知のウイルスであるがゆえの難しさもある。

その1つとして、新型コロナウイルスが当初、考えられていたよりも感染力が強いことが挙げられる。1人の感染者から何人に感染するかを示す「基本再生産数」は、新型コロナウイルスの場合、WHO(世界保健機関)が暫定的に出した値は1.4~2.5だが、ほかの機関はそれよりも大きく見積もっているところが多い。なお、基本再生産数は、季節性インフルエンザが1.3程度、SARS(重症急性呼吸器症候群)で2~4だ。

「感染力が強いのは、無症状の感染者からもウイルスが排出されていることと関係しているかもしれません[注2]。また、ウイルスの生存期間が比較的長いことを示唆する報告もあります[注3]」(大谷さん)

そして、新型コロナウイルスには、インフルエンザウイルスにあるような治療薬やワクチンはまだない(治療は基本的に対処療法のみ)。また、連日報道されているように、検査体制が整っておらず、簡易検査キットもまだできていない。これが多くの人を不安にさせている大きな要因になっている。

だが、検査や治療薬については、明るい話題もある。ウイルスを特定するための「PCR検査」が、これまでは1日に限られた件数しかできず、医師が保健所に要請しても断られるケースがあったが、3月6日より保険適用されるようになり、この問題は解消される可能性が出てきたのだ。

また、治療薬については、新しい薬を開発するのには1年以上の時間がかかるものの、一方で「既存の薬を適応外使用することが検討されています。新型コロナウイルス感染症にも効果が出る可能性があります」と大谷さん。

WHOでは、ロピナビルやリトナビルといった抗HIV薬や、抗ウイルス薬のレムデシビルの試験を始めており、3月半ばには結果が出るとしている。日本でも、新型インフルエンザ薬「アビガン」(一般名ファビピラビル)などの試験を始めた。これらが新型コロナウイルス感染症の治療薬として使えるようになるかもしれないのだ。

[注2]参考記事「新型コロナ、無症状の感染者からも発症者並みウイルス」

[注3]ドイツのグライフスヴァルト大学附属病院の研究チームが、新型コロナウイルスに近いSARSやMERS(中東呼吸器症候群)のコロナウイルスに関する研究文献22本をレビューしたところ、SARSやMERSのウイルスを付着させた物体の表面で、最長9日間、感染力が保たれていたという。https://doi.org/10.1016/j.jhin.2020.01.022

予防の基本は「手洗い」 30秒以上かけて

最後に、現時点で私たちができる予防策をまとめておこう。

新型コロナウイルスの感染ルートは主に2つとされている。「飛沫感染」と「接触感染」だ。

【飛沫感染】感染している人のくしゃみ・咳によって空気中にウイルスなどの病原体が「飛沫」として排出され、それを吸い込むことによって起こる感染。だいたい1~2メートルの距離で感染する。
【接触感染】感染ウイルスが含まれた鼻汁、唾液などに直接触れることで手にウイルスがつき、その手で口や鼻を触ることで感染する。

これらへの対策は、従来のインフルエンザと同じで、「徹底した手洗い」が最も重要になる。外出先から戻ったとき、トイレに行った後、食事の前などには必ず石けんで手を洗うようにしよう。軽く水で流す程度の手洗いはNG。下の図にあるように石鹸を使って30秒以上かけてしっかり洗うことが大切だ。ノロウイルスと違って、新型コロナはアルコールでも消毒できるので活用したい。

マスクは間接的な効果が期待できる

マスクでは新型コロナウイルスの感染を防げないといわれているが、間接的な予防効果は期待できると大谷さんは言う。

「マスクをしていると、喉の乾燥が防げます。喉が乾燥すると、気道の防御システムの力が弱まるので、喉の乾燥を防ぐことには意味があります。また、マスクできちんと鼻や口を覆えば、不必要に指などで鼻や口に触れてしまうことを避けられるので、結果的に接触感染の予防にもなります」(大谷さん)

ただし、マスクは正しい使い方を守らなければ意味がない。例えば、サイズが大きいものを使っていると、隙間ができてウイルスの侵入を許してしまう。また、つけ外しするときは、ゴム紐の部分を持って行う。特に外すときにフィルター部分を触ってしまうと、指にウイルスがつく可能性があるので注意だ。

マスクは正しい使い方を守る

もちろん、自分に感染症の疑いがあるときも、マスクを着用しよう。感染が広まるのを防ぐには、そもそも人が集まる場所に行かないこと。風邪のような症状があれば、感染を広げないために外出を控え、できれば仕事も休んでほしい。

これからの季節はスギ花粉症が本格化するのも問題だろう。「新型コロナウイルスは鼻の中にもいるので、くしゃみで飛沫感染が増えてしまいます。また、花粉症の人は気になって鼻などを指でつい触ってしまいます。すると、接触感染が増えやすくなるので注意が必要です」(大谷さん)。花粉症に悩まされている人は、今年は必ず薬をのんで症状を抑えるようにしたい。

また、新型コロナウイルスは、飛沫よりも粒子が小さい「エアロゾル」による感染も取りざたされている(参考記事「新型コロナで可能性指摘 『エアロゾル感染』とは?」)。「エアロゾル感染の可能性があるのなら、部屋の換気も大切になります。空気清浄機を使うのもいいでしょう。0.1マイクロメートル(0.0001mm)の粒子でも吸着する空気清浄機であれば、インフルエンザやコロナウイルスでも吸着できます」と大谷さんはアドバイスする。

◇  ◇  ◇

新型コロナウイルスは未知の病原体であり、不安に思う人は多いが、先ほども述べたように新型コロナウイルス感染症で人の命を奪うのは肺炎が原因だ。今回は、そもそも肺炎がどのような病気か、そして新型コロナウイルスによる症状が、これまでとどう違うのかについて解説してきた。

肺炎は、新型コロナウイルスかどうかにかかわらず、日本人にとってとても身近な怖い病気だ。現在、日本では年間で13万人を超える人が肺炎で亡くなっている(誤嚥性肺炎を含む。厚生労働省の平成29年「人口動態調査」より)。新型コロナウイルスによる肺炎を正しく恐れることができるならば、将来の肺炎対策につながる。

(ライター 伊藤和弘、図版制作 増田真一、イラスト 堀江篤史)

大谷義夫さん
池袋大谷クリニック院長。2005年に東京医科歯科大学呼吸器内科医局長に就任。米国ミシガン大学に留学などを経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。全国屈指の呼吸器内科の患者数を誇るクリニックに。呼吸器内科のスペシャリストとして「あさイチ」「林修の今でしょ! 講座」「名医のTHE太鼓判! 」など多くのTV番組に出演。著書も多数。

[日経Gooday2020年3月3日付記事を再構成]

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