書店員おすすめ面白マンガ 1位は『SPY×FAMILY』
面白いマンガを読みたいがどれがいい? それに答えるのが「全国書店員が選んだおすすめコミック」ランキングだ。投票した書店員や出版取次の担当者の座談会から「SNS映え」「スマホ向き」などキーワードがみえた。
文教堂書店青戸店長の青柳将人氏 ランキングは順当。話題の作品が選ばれた。
日販コミック仕入課の小西昂洋氏 ウェブ発マンガが多数入った。4位『新しい上司はど天然』、8位『可愛いだけじゃない式守さん』、9位『見える子ちゃん』と1話完結で10~15ページ程度の、スマートフォンで気軽に読める作品が人気だ。
青柳 SNS経由の、ゆるく楽しめるものが支持された。共通するのは、大手マンガアプリにバナー広告を出していたこと。インパクトのある絵やコマのバナーで引きつけて試し読みに導いた。
TSUTAYAの古川潤氏 TSUTAYA店舗でも、連載時にツイッターで人気化した話題作に目星をつけ、1巻発売時に大きく展開した。売れやすいのは、SNSに貼りやすいキャッチーなコマや絵があること。
日販コミック仕入課の小林祐子氏 1位『SPY×FAMILY』は、1巻発売前の『少年ジャンプ+』内でのコメント数が過去最大だったようだ。日販も1巻発売に合わせてリーフレットを制作した。
古川 例外的な遅咲きの人気作としては、5位『薬屋のひとりごと』がある。1巻から最新5巻までほぼ同数売れている。中世の東洋で、下働きをする少女が宮中で起こる難事件を解決する物語は読み応えがある。
青柳 原作の小説も右肩上がりで売れている。同作を別視点から描いたマンガ『薬屋のひとりごと 猫猫の後宮謎解き手帳』(小学館)もあり、重層的に楽しめる。
小林 作品のポイントは、『SPY×FAMILY』はスリルありアクションあり、クールな主人公と疑似娘との胸キュンする会話などほっこりコメディーまでありで幅広い読者が楽しめる。2位『チェンソーマン』は『ファイアパンチ』の藤本タツキ氏の新作だ。
古川 『チェンソーマン』の読み始めは、若い子のマンガのようで入り込めなかったが、読むうちにどんどん好きになった。B級ホラーの要素を多く取り込んでいて、サブカル好きにも話題だ。
青柳 ストーリーの作り方が独特。今までの冒険・アクションの王道を壊そうとしている。
古川 B級ホラー要素では『見える子ちゃん』も。見える子ちゃんが見えているお化け、幽霊のクオリティーの高さがすごい。
小西 ストーリーの軸もしっかりある。単純な1話読み切りものと一線を画している。
青柳 そう。本当の魅力が分かるのは2巻以降。
小西 3位『その着せ替え人形は恋をする』の、目立たない男子×人気のギャルの組み合わせ。コスプレの衣装づくりの過程や心理描写がていねいで飽きさせない。控えめな男子とギャルが仲良くなる設定は、男性読者が投影しやすい視点だ。
青柳 ギャルが、本気のコスプレーヤーとしてアニメやゲームのヒロインになりたいという設定。ゴスロリをしたい女の子を描いた『着たい服がある』(講談社)のように、大々的に言いづらい趣味を楽しむ内容もいい。
小林 お色気×ラブコメといえば、6位『あせとせっけん』も。
古川 女性に支持が広がったのは意外。社内で目立たない存在の女性が、華がある男性から好かれるという設定に成功した。
小林 ヒロインの慣れない恋愛にドキドキする感じを「ムズキュン」というそうだが、2人の恋愛の様子を見守りたくなる。
小林 『新しい上司はど天然』はボーイズラブを匂わせる。『おっさんずラブ』などの流行の波に乗った。
古川 10位『ライドンキング』も異世界モノブームに乗ったもの。とはいえベテランの作家がオリジナルで切り込んだ作品だ。(日経エンタテインメント!3月号から再構成)
[日本経済新聞夕刊2020年3月7日付]
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