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食料備蓄足りてる? いざという時の必須4点セット

災害時の栄養を考える(1)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

地震や台風、豪雨のような災害が起きたとき、あるいは、新型コロナウイルス感染症のような人々に免疫のない新型の感染症が大流行して、外出や買い物がままならなくなったときなど、いざというとき、命をつなぐのは水と食事だ。非常時の食事は、おにぎりやカップ麺さえあればいいというものではなく、栄養が偏った状態が続くと健康を大きく損なう恐れがある。万一に備え、どんなものをどれだけ備蓄すればいいのか。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国際災害栄養研究室室長の笠岡(坪山)宜代さんに聞いた。

備蓄は足りていない!

災害が発生すると、規模にもよるがライフラインの復旧まで1週間以上を要するケースが多く見られる。また外部からの支援物資もすぐに届くわけではなく、物流機能の停止などによってなかなか食料が手に入らないことも想定される。その間は備蓄食料に頼るしかないが、2011年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると、災害時に備えて非常用食料を用意している世帯の割合は47.4%と半数以下だった。

「豪雨などの災害が頻発している最近でも、この実態はあまり変わっていないようです。自分の身に降りかからないとなかなか危機感が持てないのか、まだ家庭での備蓄は不足しています」と、笠岡さんは警鐘を鳴らす。こうした背景もあり、2019年に改訂された「災害時に備えた食品ストックガイド」(農林水産省)では、家庭備蓄は「できれば1週間」を推奨している。

「私が避難所の支援を行った東日本大震災では、被災地に食料が届くまでに最短で5~6日は必要でしたので、3日分の備蓄では明らかに足りません。特に乳幼児や高齢者、慢性疾患を抱えている人、食物アレルギーの人など、要配慮者と呼ばれる人向けの特殊食品は避難所などでは手に入りにくいため、そうした方々向けには少なくとも2週間分の備蓄が必要です」(笠岡さん)

要配慮者向け備蓄の詳細は次回以降に紹介するが、上記の「慢性疾患を抱えている人」には、糖尿病、脂質異常症、痛風などの代謝性疾患、高血圧、腎臓病の人などが当てはまり、こうした人は医師に指導されている食事療法をできるだけ続けられるように、2週間分の備蓄が必要だ。普段健康な人や、グレーゾーンの人も、非常時には過度のストレスなどにより血圧・血糖の状態が悪化しやすいため、決して人ごとではない。

水・主食・おかず・熱源の4点セットを

では、具体的にどんなものを備蓄したらよいのだろうか。笠岡さんは次の4点セットを推奨している(図1)。それにはワケがある。

(1)水
…飲料水、調理等に使用する水を含め 1日3リットル×人数分×1週間
(2)主食
… 米、レトルトご飯、乾麺、カップ麺、小麦粉、シリアル類 等
(3)おかず(主菜・副菜)
…缶詰、レトルト食品、フリーズドライ食品、乾物、日持ちする野菜 等
(4)カセットコンロ(熱源)
…1週間分でカセットボンベ6本程度×人数分

 笠岡さんらが東日本大震災の避難所で食事状況を調査したところ、多くの避難所では穀類など主食が過剰に供給される一方、乳製品、肉類、野菜などおかずになる食品は不足しているところが多かった(図2)。

災害時の栄養補給は、発災直後からの水分、そして生死を分けるタイムリミットといわれる72時間(3日)以内までは生き延びるためのエネルギーが必要だ。そのため「水」や「主食」が不可欠なのは言うまでもない。

しかし、その後4日以降は、おにぎりやパン、カップ麺などの主食ばかりでは必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養が不足し、健康を損なうリスクが高まってしまう。さらに1カ月以降は、長期化する被災生活の中で、いかに栄養をとり健康状態の悪化を防ぐかという段階へ、時間の経過とともに求められる栄養も変化する(図3)。そのため、食料備蓄も単に空腹を満たす主食さえあればいいわけではなく、「栄養を管理できる備蓄」、つまり「おかず」が必要となるわけだ。

「東日本大震災での食料不足の経験から、魚や野菜などがとれる『おかず』の備蓄がガイドにも追加されました。実際に私たちが分析したところ、何かしらのおかずを提供していた避難所では栄養面が改善していました。健康を損なうリスクを減らすためにも、主食だけでなく、おかずは絶対に必要です」(笠岡さん)

また、長期にわたる過度のストレスや不安にさいなまれる災害時だからこそ、温かい食事や汁物のニーズも高まる。そこで不可欠とされるのが、湯を沸かすための「カセットコンロ」などの熱源だ。水を入れると蒸気が出て温まる発熱剤と加熱用袋がセットになった食品加熱パックなども備えておくとよいだろう。

「災害時は食欲が落ち、全体の食事量が減ります。食事は栄養も大事ですが、それだけではなく、温かいものを食べてホッとする、幸せ感を感じて楽しく食べられるということがとても大切です。食欲も湧いて生きる力につながります」(笠岡さん)

笠岡さんによれば、災害時も「できるだけ日常に近い食事」に近づけることが大事だという。ビタミンなどの栄養素をとる手段としてはサプリメントも一策ではあるが、それよりも、まずは缶詰、レトルト食品などでバラエティーに富むおかずをとれるように工夫しよう。食事量が少なく、基本的なエネルギーが不足しているところに「栄養が足りないから」とサプリメントばかり補うと、サプリメントでとった栄養素の過剰症状が出る恐れもあるからだ。

「栄養が不足しがちな災害時には、ビタミンやミネラルなどの栄養素をコーティングした栄養強化米なども役立ちます。サプリメントは食事でエネルギーをしっかりとったうえで栄養バランスを補うために用いるのであればよいので、発災から1カ月以降などエネルギーが十分とれるようになったフェーズで使うほうがよいと思います」(笠岡さん)

災害食は日常で試しておく

もっとも、いくら食事が大事だとはいえ、不安や緊張が続く災害現場では食欲が落ち、食べたことがない食品は食べたくないという人が多い。避難所でも外国製の缶詰など食べ慣れないものは残っている光景がよく見られたという。そのため、いつも食べているものや、買っておいてもすぐにストックがなくなるような好きな食品を多めにストックしておくことが備蓄のポイントだ。その点、市販のレトルトのおかゆなどは、食欲がないときも食べられるし、乳児の離乳食や飲み込みにくくなった高齢者の食事として、温めても冷めた状態でも食べられるなど応用範囲が広い。備蓄しておくと役立つ食品の代表格だ。

さまざまな災害食も市販されているが、購入するときは品質を見極めよう。2017年には防災訓練で食べた災害食が原因で食中毒が発生したことがあり、そうした被害を防ぐために日本災害食学会では災害食の認証制度を実施している。宇宙日本食の認証を参照した基準を満たした食品に認証ロゴマークがついているので、選ぶ際の参考にしたい。また、災害食を備蓄する場合は、一度は食べてみることをお勧めする。

「食べてみると、意外と塩気が強い、スプーンがあるほうがいい、想像以上に飲み水が必要など、いろいろなことが分かります。日常の一部として普段から楽しみながら、好みのものを探してみてください」(笠岡さん)

備蓄品は2カ所以上に分散して保管

また、ポリ袋に食材を入れて湯せんで火を通す「パッククッキング」などの調理法も普段から試しておくと、いざというとき役立つ。耐熱性のある高密度ポリエチレン袋があれば、食材と調味料を入れて煮たり、ゆでたりと、お湯だけで簡単な食事を作ることができる。一度に複数の調理ができ、洗い物も不要なため、災害時のスキルとして知っておくとよい。

食品以外に下の表に記したような家庭用品も備蓄しておくと便利だ。さらに、飲み食いしたものは必ず排せつされるので、食料の備蓄を行う際は排せつ物の処理のことまで考えるのも大切だと笠岡さんは言う。

「避難所の多くは共同トイレで、なるべく行きたくないと我慢する人が多くいます。そのため、水を飲まない、食事を食べないという悪循環に陥りがちです。食べたものは必ず排せつされますから、災害用簡易トイレも備蓄品に加えておくことをお勧めします」(笠岡さん)

【表】あると便利な備品
□ 食品用ポリ袋(耐熱温度130℃以上、湯せん対応のもの)
□ ラップ
□ アルミホイル
□ クッキングシート
□ キッチンペーパー
□ キッチンばさみ
□ 鍋、やかん
□ おたま、トング
□ 除菌スプレー(ペーパー)
□ 紙皿、紙コップ
□ 割り箸、使い捨てスプーン

備蓄品を用意したら、1カ所に保管するのではなく、分散して収納することもポイント。例えば豪雨などで1階が水浸しになっても、2階に備蓄があれば当分はしのげるからだ。2階建て以上の場合は各階に分散備蓄をしておくなどしよう。消費期限のある食品は古いものから消費し、消費した分を買い足す「循環備蓄(ローリングストック)」で、常に一定量の食品が備蓄されている状態を保つことができる。

日常の一部として「いつも」備える

「避難所での炊き出しは避難者自身が行っている姿が多く見られました。自助・共助・公助と言われますが、やはり自分の身は自分で守る自助が基本だと、現場の後方支援の経験からも実感します」と笠岡さんは強調する。

あなたの家庭では、自分を守るための備えができているだろうか。十分な食料備蓄とともに知識もスキルも「備蓄」しておくこと、そして災害食の味見やパッククッキングへの挑戦など日ごろから意識して行動することが重要。いざというときに運命を分けるのは、「いつも」の備えだ。

次回は災害時に起こりやすい健康問題について、詳しくお伝えする。

(ライター 塚越小枝子、図版作成 増田真一)

笠岡(坪山)宜代さん
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国際栄養情報センター国際災害栄養研究室室長。1991年東京家政大学卒業(管理栄養士)、97年高知医科大学大学院博士課程修了(医学博士)。99年国立健康・栄養研究所入所。2018年より現職。分子栄養研究を経て災害時の食・栄養問題について研究。日本の政府関連機関で初めての災害栄養専門部署を立ち上げる。東日本大震災、西日本豪雨等において栄養支援の陣頭指揮を執る。

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