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通路の真ん中に設置した特設の平台に旧著と並べ、4列に積み上げる(紀伊国屋書店大手町ビル店)

通路の真ん中に設置した特設の平台に旧著と並べ、4列に積み上げる(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店に戻る。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務を実践する企業が増えたせいか、東京・大手町でも来店客がいつもより少ないという。それでも『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』が爆発的に売れ続けるなど、力の入った新刊への反応は悪くない。そんな中、書店員が注目するのは、日本を「未来に賭けられる国」にする展望を精緻な現状分析とともに提言したヤフー最高戦略責任者(CSO)の一冊だった。

強い思いみなぎる400ページ超

その本は安宅和人『シン・ニホン』(ニューズピックス)。副題に「AI×データ時代における日本の再生と人材育成」とある。著者の安宅氏はマッキンゼーで幅広い商品・事業開発に携わったあと、ヤフーに転じ、2012年からはCSOとして全社横断的な戦略課題の解決、事業開発に取り組むとともにデータ及び研究開発部門も統括する。16年からはデータドリブン時代の基礎教養を慶応大学湘南藤沢キャンパスで教えるなど、人材育成にも取り組む。イノベーション政策やデータサイエンス教育をめぐってさまざまな政府委員を務めるなど、有識者としての活動も幅広い。その著者が「自分の限界までストレッチして」書き下ろしたのがこの本だ。

「はじめに」で著者は言う。「もうそろそろ、人に未来を聞くのはやめよう」。続けて「そしてどんな社会を僕らが作り、残すのか、考えて仕掛けていこう」と呼びかける。この強い思いが400ページを超える論考の全編にみなぎる。

多くの分野で伸びしろは巨大

第1章で示される時代の全体観は、「すべての産業がAI×データ化する」歴史的な変革期というものだ。そこでは知的生産そのものが変わり、富を生む方程式も変わる。地政学的重心も中国、インドを軸にアジアへとシフトしつつある。

第2章では、そんな時代観の中での日本の現状を示す。生産性は世界的に一気に高まってきたこの15年あまり、日本だけが大きく伸ばせていない。単身者を除く貯蓄なし世帯の比率(31%、2017年)は高度成長が始まった頃の水準。インド、韓国より低い男性の家事労働時間。トップ高等教育機関における女性比率の低さ。多くのデータは日本が中進国並みの状態になっていることを突きつける。

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