新型コロナ、揺らぐ強権中国の持続性(武者陵司)武者リサーチ代表

写真はイメージ=123RF
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界の株式相場が乱高下している。サプライチェーン(供給網)の機能不全で世界景気が悪化しかねないとの懸念が強いためだ。米連邦準備理事会(FRB)は3月3日、緊急利下げに踏み切ったが株式市場では「利下げは織り込み済み」と受け止められ、好感する動きは限られた。

新型コロナウイルスは韓国、イタリア、イランなどに広がり、感染拡大が早期に収束する見通しは立っていないため、世界の金融市場は当面不安定な展開が続きそうだ。しかし新型コロナウイルスの発生源である中国での感染者数はピークアウトしつつある。こうした動きが確かになれば、中国を中心とするグローバルサプライチェーンはひとまず回復し、株式など世界の金融市場は落ち着きを取り戻す公算が大きい。

金融市場の動向以外に筆者が見逃せないと考えているのが中国の習近平(シー・ジンピン)政権への影響である。習政権は感染封じ込めを強権的に進めているのに続き、今後は景気対策に力を入れることが予想され、中国景気の底割れを回避できるだろう。これは習政権の基盤をさらに強化する可能性がある。ただし新型コロナウイルス問題は中国への経済依存の危うさと中国の統治システムの欠陥を同時に浮き彫りにした面がある。長期的にみると中国の強権体制にとって大きな転換点になる可能性があると筆者は考えている。

中国での感染はピークアウト

3月1日付英フィナンシャル・タイムズによると、中国での新型コロナウイルス新規感染者数は2月27日時点で329人とピークの8割減となり、中国以外の新規感染者数の半分となっている。「湖北省を除けば31の省・自治区・直轄市の約9割は新規感染者が連日0~1人にとどまる」との報道も伝わっており、中国国内に限ってみれば事態は沈静化に向かいつつあるとみてもよさそうだ。

中国政府は民主主義国では見られない強権とテクノロジーを活用した監視制度によって人々の行動を支配する力を持っているとされ、新型ウイルスの感染拡大封じ込めでも有効に機能したとみられる。対新型コロナウイルス戦争にメドが付くとすれば、習政権は景気対策に総力戦で臨むだろう。

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