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ハーバード大准教授が語る 男女の妊娠力高める食生活

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妊娠しやすさと栄養との関係を科学的に解明する研究を続けてきたハーバード大学公衆衛生大学院栄養疫学准教授のジョージ・チャヴァロ氏が2019年末に初来日し、東京・大手町で講演した。チャヴァロ氏は、日本で2013年に出版された『妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法』(日本経済新聞出版社)の著者の一人。講演と、出版後に分かった最新研究の成果を踏まえたインタビューから、「カップルで始めたい食生活の6つの法則」を紹介する。どれもすぐに始められることばかりだ。

女性だけでなく男性への有効性を確認

「私たちは、約1万8000人を8年間追跡調査した米国の看護師健康調査2の結果から、女性の妊娠の可能性を高める食生活の法則を導き出し、『妊娠しやすい食生活』で詳しく解説しました。その後の研究で、この法則は、女性だけではなく男性にも同様に当てはまり、カップルで実践すべきだということがわかりました」。チャヴァロ氏は、そう説明した。

看護師健康調査(Nurses' Health Studies、NHS)は、ハーバード大学公衆衛生大学院が1976年から12万1700人の既婚女性看護師(30~55歳)を対象に始めた大規模な疫学研究だ。第2次看護師健康調査(NHS2)は、NHS1より少し若い25~42歳の未婚・既婚看護師11万6430人を対象に1989年から始まった。チャヴァロ氏らは、NHS2の対象者のうち、「妊娠を希望している」と回答した約1万8000人を8年追跡調査して、食生活と妊娠との関係を調べた。

その結果、「妊娠の可能性を高める法則」(下表)のうち、1つでも実践している女性は、1つも実践していない女性に比べて不妊になるリスクが30%下がった。また、実践数が多い女性ほど、排卵障害になるリスクが低かった[注1]

【妊娠の可能性を高める6つの法則】
●全粒小麦粉、玄米などの精製度の低い穀類を選び、精製された炭水化物は減らそう。
●不飽和脂肪酸を積極的にとり、トランス脂肪酸は避けるようにしよう。
●植物性たんぱく質を積極的にとり、動物性たんぱく質の割合を相対的に減らそう。
●葉酸(少なくとも1日400μg)や鉄分を積極的にとろう。
●水を十分に飲む。砂糖入りの清涼飲料水は控え、コーヒー、紅茶、アルコールは飲みすぎない。
●体重をコントロールしよう。太りすぎているなら、体重の5~10%を減量する。日本人の場合、最適なBMIの目安は19~23程度。1日30~60分、体を動かそう。

 
※『妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法』(日本経済新聞出版社)とチャヴァロ氏の取材を基に編集部が作成)

男性もこれらの法則を実践すれば、精子の運動率が上がることが複数の研究で分かってきた。米国の大学生188人を対象にした研究[注2]では、魚や鶏肉、果物、野菜、豆類、全粒粉の穀類中心の食事をしている男性の精子の運動率は、赤身肉、ベーコンやソーセージなどの加工肉、白いパンなど精製された穀類、ピザ、スナック菓子、砂糖入り清涼飲料水や甘い物を好んで食べている男性より高かった。

スペインの大学生215人を対象にした研究[注3]でも、果物と野菜、魚介類を含む地中海食中心の食事は、加工肉やフレンチフライ、スナック菓子中心の食生活より、精子の運動率を明らかに高めることが分かっている。

血糖値の急上昇は生殖機能に悪影響

チャヴァロ氏らハーバード大の研究グループが、マサチューセッツ総合病院と共同で行っているEARTH(The Environment And Reproductive Health)研究でも、6つの法則のような食生活をより忠実に実践している人のほうが、生殖医療による出産率が高いことが示されている[注4]

「中でも、精製された穀類ではなく、全粒粉を含む精製度の低い穀物などの炭水化物や野菜・豆などをとって、血糖値の上昇を緩やかにすることが特に重要」とチャヴァロ氏は話す。

血糖値が生殖機能にまで影響を及ぼすのはなぜなのか。チャヴァロ氏によると、女性の場合、精製された穀類や砂糖入り清涼飲料水、スナック菓子などによって血糖値が急激に上がり、それを下げるために膵臓からインスリンが大量に分泌されると、性ホルモン(テストステロンやエストロゲン)と結合する作用のある物質(性ホルモン結合グロブリン)の分泌が低下する。テストステロンは男性に多いが、女性も卵巣や副腎から分泌している。性ホルモン結合グロブリンが少なくなると、結果的に、結合する相手のいないテストステロンが血液中にとどまって排卵の邪魔をすることになるのだ。こうしたテストステロンの増加は、排卵障害をもたらす「多のう胞性卵巣症候群」の原因にもなる。

一方、男性の場合は、血糖値の急激な上昇を繰り返してインスリンの効き目が悪くなると、糖化などによって精子の質が低下するのだ。

オメガ3脂肪酸を積極的にとる

「妊娠の可能性を高める6つの法則」の2つ目の不飽和脂肪酸というのは、魚に多いことで知られるオメガ3脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸と、オリーブオイルやキャノーラ油などに多い一価不飽和脂肪酸のことだ。悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールの数値を下げ、血液中に血栓(血液の塊)ができるのを防ぎ、心臓病や動脈硬化からも体を守る働きをする。

「特に、最近脚光を浴びているのが、魚だけでなく、クルミ、亜麻仁油などに豊富に含まれているオメガ3脂肪酸です。精子細胞膜のオメガ3脂肪酸の割合が高い男性ほど、精子濃度が劇的に増加しました。魚の摂取量が多い人ほど、総精子数が多いことも分かっています。逆に、同じ不飽和脂肪酸でも植物油などを加熱した際などに生じるトランス脂肪酸は、血管の健康や精子の精製に悪影響を及ぼし、その摂取量が多いほど、排卵障害や不妊のリスクが高まります。健康への悪影響が大きいため、米国など多くの国では、すでにトランス脂肪酸の使用が禁止されています」とチャヴァロ氏は語る。なお、トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングなどに多いとされるが、日本ではメーカー各社が減らす努力を行っており、その場合には商品に表記されていることも多い。

[注1]Obstet Gynecol. 2007 Nov;110(5):1050-8.

[注2]Hum Reprod. 2012 Oct; 27(10): 2899-2907.

[注3]Hum Reprod. 2015 Dec;30(12):2945-55.

[注4]Am J Obstet Gynecol. 2019 Jun;220(6):567.

魚と葉酸はカップルで積極的にとりたい

3つ目の植物性たんぱく質は大豆製品、ナッツ類などからとれる。「減らしたほうがいい動物性たんぱく質は、牛肉、豚肉などの赤身肉と加工肉です。魚はむしろ増やしたほうが、妊娠可能性が高まります」(チャヴァロ氏)

前述のEARTH研究[注5]でも、月1回程度しか魚を食べない女性の生殖医療による出産成功率は34.2%だったのに対し、週2~3回食べる女性では47.7%と明らかに高かった。

4つ目の葉酸はビタミンBの一種で、厚生労働省も妊娠の可能性のある女性には、神経管閉鎖障害のリスク低減のために、サプリメントで1日400μgを摂ることを薦めている。EARTH研究の結果では、食事からの摂取に加えて葉酸サプリメントを1200~1500μg補充している米国人女性は、葉酸の摂取量が1日400μgの女性に比べて生殖医療による妊娠成功率が高かった。血液中のビタミンB12濃度が高いと生殖医療の妊娠成功率が高まることも分かっており、チャヴァロ氏は、葉酸800μg以上とビタミンB6、B12の入ったマルチビタミンサプリの摂取を薦めている。

葉酸に関しては、女性だけではなく男性でも重要であることが最近の研究で分かってきた。EARTHスタディの一環であるチャヴァロ氏らの研究[注6]では、女性の摂取量には関係なく、パートナーの葉酸摂取量が400μg増えると妊娠期間が平均2.6日長くなり、早産リスクが下がった。動物試験では、パートナー男性の葉酸摂取量が、女性の胎盤の脈管構造の発達に関係し、妊娠高血圧症や早産を抑える働きをしていたことも確認されている。

ただし、厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準2020年版」で葉酸サプリメントの1日の耐容上限量を男女とも18~29歳と65歳以上は900μg、30~64歳は1000μgに設定しているので、注意したい。耐容上限量は、それを超えると過剰摂取による健康被害のリスクが0ではないことを意味する。

さらに、6つの法則には含まれていないが、排卵障害や不妊との関係が注目されている微量栄養素は、ビタミンDだ。生殖医療を受けている100人の米国人女性を対象にしたチャヴァロ氏らの研究[注7]では、血中ビタミンD濃度が高い人のほうが出産成功率が高かった。ビタミンDは、キノコ類やサケ、青魚などの食品からとる方法のほか、日光を浴びれば皮膚で合成できる。

チャヴァロ氏は、「ビタミンDが含まれる食品は限られるので、日光に当たってビタミンDを合成することが大切です。充足している人がサプリメントでビタミンDを摂取するメリットはあまりありませんが、ビタミンD欠乏症(血中ビタミンD濃度20ng/ml未満)の人はサプリで補充するとよいでしょう」と話した。

太りすぎだけでなく、痩せすぎもダメ

また、砂糖を大量に含む炭酸飲料や清涼飲料水は、肥満を招くだけではなく、血糖値の上昇が排卵を抑制し、精子の質の悪化につながる。

6つ目の体重コントロールについて、チャヴァロ氏は、BMI[注8]18.5未満のやせ過ぎと肥満(BMI25以上)は妊活に悪影響を与えると指摘する。看護師健康調査2やEARTH研究から導き出された妊娠に最適なBMIは米国人の場合20~24まで。男性の肥満(BMI25以上)は、出産成功率を低下させることも複数の研究で明らかになっている。

「日本人などアジア人は骨格が細いため、BMI19~23程度が最適と考えられます。体重や血糖値をコントロールして妊娠しやすい体を作るためには、1日30分程度の有酸素運動を続けることも重要です」(チャヴァロ氏)

運動をまったくしていない人は、1日30分ウォーキングをするなど体を動かせば、糖尿病などの病気の予防にもつながる。一方、体操選手や長距離ランナーのような激しい運動とやせ過ぎは、生殖機能に悪影響を与えるので、避けたほうがいいそうだ。

「残念ながら、これらの法則をカップルで忠実に守れば妊娠が必ず成功するかといえば、答えは『ノー』と言わざるを得ません。妊娠が成立する可能性を高める方法ではあるものの、これを食べれば妊娠するという食べ物はないからです。排卵障害、無精子症などの人は、生活改善とともに、生殖医療機関に相談してほしい。ただし、不妊治療の成績は米国でも頭打ちであり、年齢による卵巣予備能の低下を根本的に治療する方法はいまだに確立されていません。それでも、食や栄養、運動習慣の改善は、妊娠を希望するカップルが、自分たち自身で今日から取り組めることです。これらの法則は、長い人生を健康に生きることにもつながりますので、カップルでぜひ続けてみてください」とチャヴァロ氏は強調した。

チャヴァロ氏が指摘するように、これらの法則は加齢とともに増える糖尿病や心臓病、脳卒中の予防にもつながる項目だ。「妊娠の可能性を高める法則」を実践して元気な赤ちゃんを授かり、自分たちの健康も守られれば一石二鳥と言える。

[注5]Am J Clin Nutr. 2018 Nov 1;108(5):1104-1112.

[注6]Reprod Biomed Online. 2019 Nov;39(5):835-843.

[注7]Am J Clin Nutr. 2016 Sep;104(3):729-35.

[注8]BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

(取材・文 福島安紀、構成:黒住紗織=日経BP総研 ヘルシー・マザリング・プロジェクト、取材協力 細川忠宏=パートナーズ代表取締役)

ジョージ・E・チャヴァロさん
ハーバード大学公衆衛生大学院栄養疫学准教授。2006年ハーバード大学大学院博士課程修了(栄養疫学)。ハーバード大学附属ブリガム・アンド・ウィメンズ病院疫学研究者、ハーバード・メディカルスクール准教授。米国の大規模疫学研究「第2次看護師健康調査(NHS2)」、「EARTH研究」を実施し、栄養疫学の観点から病気や不妊の要因研究を行う。『妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法』(日本経済新聞出版社:原著『The Fertility Diet』)の著書の一人。

[日経Gooday2020年2月20日付記事を再構成]

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