植物食べ尽くすバッタの大発生 東アフリカに迫る危機

日経ナショナル ジオグラフィック社

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の気候科学者ウェンジュ・カイ氏によると、2018年の秋には正のインド洋ダイポールモード現象が発生していたという。その後、数カ月にわたりやや負になっていたが、それから急激に正になり、2019年の秋には1870年以来2番目の強さになった。最近の東アフリカとオーストラリアの状況は、それから予想されるとおりのものだった。

「アラビア半島に大雨をもたらした異常に活発なサイクロン・シーズンは、強い正のインド洋ダイポールモード現象によって誘発されました。オーストラリアで記録的な干ばつになった原因も同じです」と、商用気象サービス「ウェザー・アンダーグラウンド」の気象学者ボブ・ヘンソン氏は説明する。

2018年5月にアラビア半島に上陸したサイクロン「メクヌ」。こうしたサイクロンが東アフリカの蝗害の原因になったと考えられている(PHOTOGRAPH COURTESY NASA WORLDVIEW)

「もっと早くから行動するべきでした」

最近の研究は、地球が温暖化すると、このパターンが一般化してくると指摘している。カイ氏の研究チームによる2014年の論文は、炭素排出量が最悪のシナリオをたどった場合、今世紀末には極端に強い正のインド洋ダイポールモード現象の頻度が3倍近くまで増加すると予想している。これに続く2018年の論文では、地球温暖化を1.5℃以内にとどめられたとしても(世界はこの目標値を10年以内に超えてしまうおそれがある)、その頻度は2倍に増えるとしている。カイ氏によると、インド洋ダイポールモード現象が全体としてすでに正の方に向かっている証拠があるという。

そのせいで蝗害が増えるかどうかはまだわからないが、可能性はある。ダイポールモード現象のような海洋循環パターンを考えなくても、気候変動により各地の海水温は上昇しており、豪雨の頻度が増えると予想される。最近の研究から、地球温暖化によりアラビア海の秋のサイクロンの威力がすでに増していることが指摘されている。同時に、気候変動を東アフリカ全域の干ばつや少雨と結びつけ、より不確かな将来像を描き出し、今よりも危険になることはほぼ確実だとする研究もある。

東アフリカの気候がどの方向に進むかはまだわからないが、蝗害を食い止めるために支援機関は緊急支援を行っている。この1月にはFAOが国際社会に対し、蝗害に苦しむ5カ国のバッタの駆除と農民・牧畜民の援助のために7600万ドル(約85億円)の緊急支援を呼びかけた。クレスマン氏は、資金は集まるだろうと見ているが、行動のタイミングを心配している。バッタは繁殖を続けていて、ただちにもっと積極的な駆除を行わないと、必要な支援は格段に大きくなるおそれがある。

「基本的に、もっと早くから行動するべきでした」とクレスマン氏は言う。

(文 Madeleine Stone、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年2月25日付]

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