植物食べ尽くすバッタの大発生 東アフリカに迫る危機

日経ナショナル ジオグラフィック社

不運はこれで終わらなかった。2019年10月に東アフリカの広い範囲で激しい雨が降り、さらに12月には季節外れのサイクロンがソマリアに上陸したのだ。おかげでバッタはさらに繁殖した。

バッタの群れは繁殖を続けながら新たな土地に襲いかかっていった。12月末には最初の群れがケニアに到達。猛スピードで北部から中央部へと移動していった。2020年の1月にはケニアで過去70年で最悪の規模の蝗害が発生した。ジブチとエリトリアでも蝗害が始まり、2月9日にはウガンダ北東部とタンザニア北部にバッタが到達しはじめた。

迫りくる「壊滅的な打撃」

最悪の大量発生はこれから起こるのかもしれない。秋に雨が降ったことで少なくとも2つの世代のバッタが大発生できるようになり、「当然のことながら非常に危険な状況を引き起こす」からだとクレスマン氏は言う。

氏は、今年6月にはサバクトビバッタの個体数が現在の400倍に増え、もともと飢饉(ききん)に脅かされているこの地域の作物や牧草地に壊滅的な打撃をもたらすおそれがあると危惧する。FAOによると、現在、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ケニア、ソマリアの1300万人が「きわめて深刻な食料不足」に陥っていて、さらに2000万人がその一歩手前の状況にあるという。

「タイミングが問題なのです」とクレスマン氏は言う。東アフリカでは、ほとんどの作物は最初の雨期である3月か4月に植えつけられる。「雨期が始まり、農夫が作物を植えようとする時期が、新しい世代のバッタが発生する時期と一致してしまうのです」

アラビア半島でのバッタの繁殖を促した2018年の2つのサイクロンは、どちらも異例のものだった。NASAが説明しているように、アラビア海では数年にわたりサイクロンが1つも発生しないことも珍しくない。

2018年が嵐の多い年だったとすると、2019年は、北インド洋にサイクロンが存在していた日数や、サイクロンの「熱帯低気圧積算エネルギー(ACE:台風の活動度の指標)」が過去最大を記録するなど、多くの新記録が出た極端な年だった。めったにない12月の嵐は、そうした極端な兆候の1つにすぎない。

近年の(特に2019年の)嵐と関連が深い出来事が、インド洋ダイポールモード現象だ。これには、インド洋の東と西のどちら側の海水温が高くなるかで、負と正の現象がある。負のダイポールモード現象では、偏西風が暖かい海水をオーストラリア付近まで押しやり、インド洋の東側であるオーストラリア南部の雨量を増やす。対して、正のダイポールモード現象では偏西風が弱まるため、東アフリカ付近の海水温が高くなり、降水量が増える。

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