植物食べ尽くすバッタの大発生 東アフリカに迫る危機

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/13
ナショナルジオグラフィック日本版

ソマリアとエチオピアでサバクトビバッタの四半世紀ぶりの大発生が起きている。数億匹のバッタはケニアに移動して農地に壊滅的な被害を及ぼし、ただでさえ脆弱なこの地域を脅かしている(PHOTOGRAPH BY BEN CURTIS, AP)

今、東アフリカでバッタの大量発生による被害「蝗害(こうがい)」が広がり、数千万人の食料供給が脅かされている。ひとつの都市を覆い尽くすほどに広がったバッタの群れが作物や牧草地に襲いかかり、ものの数時間ですべてを食い尽くしている。バッタの大量発生は、東アフリカでこれまでに7カ国に拡大した。近年にない規模だ。

このバッタはサバクトビバッタという。アフリカと中東の乾燥した地域に生息していて、大雨が降って植物が繁茂すると大発生する。東アフリカとアラビア半島では、過去2年間でサイクロンに複数回見舞われるなど、異常に雨の多い天気が続いた。専門家は、この天気が蝗害の主な原因とみる。

このところ嵐が増えているのは、近年顕著になってきた「インド洋ダイポールモード現象(IOD)」と関連しているという。これはインド洋の東部と西部で海水温の差が生じる現象で、オーストラリア東部に大きな被害をもたらした森林火災とも関連する。

一部の専門家は、今回の蝗害はこれから起こる大きな変化の前触れかもしれないと指摘する。海面温度の上昇は嵐のエネルギーを高め、気候変動は今回の蝗害を引き起こしたような海洋循環パターンを定着させるからだ。

「サイクロンの多い年が続けば、『アフリカの角』と呼ばれる北東部での蝗害の発生数も増加するでしょう」と言うのは、国連食糧農業機関(FAO)の上級蝗害予報官であるキース・クレスマン氏だ。

バッタはどのように増えるのか

クレスマン氏によると、サバクトビバッタの大量発生のきっかけは2018年5月のサイクロン「メクヌ」だった。このサイクロンはアラビア半島南部の広大なルブアルハリ砂漠に雨を降らせ、砂丘の間に多くの一時的な湖を出現させた。こうした場所でサバクトビバッタがさかんに繁殖して最初の大発生が起きたと見られる。同年10月にはアラビア海中部でサイクロン「ルバン」が発生して西に進み、同じ地域のイエメンとオマーンの国境付近に雨を降らせた。

サバクトビバッタの寿命は約3カ月で、その間に繁殖する。繁殖の条件がよければ、次の世代のバッタは20倍にも増える。つまり、サバクトビバッタは短期間のうちに急激に増加するのだ。2018年の2つのサイクロンによって、わずか9カ月の間に大発生が3度起こり、アラビア半島に生息するバッタはざっと8000倍に増えた。

増えすぎたバッタの群れは移動を始めた。2019年の夏までに、それは紅海とアデン湾を飛び越えてエチオピアとソマリアに渡り、その後、もう一度繁殖したとクレスマン氏は言う。

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