オリオン座の巨星、再び輝く 超新星爆発起こらず

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/14
ナショナルジオグラフィック日本版

ベテルギウスは全天で最も明るい星の1つだ。写真はデジタイズド・スカイ・サーベイ2のデータからカラー合成したもの(COMPOSITE IMAGE BY ESO/DIGITIZED SKY SURVEY 2. ACKNOWLEDGMENT: DAVIDE DE MARTIN)

オリオン座の肩の位置にある巨星ベテルギウスに死が迫っているという心配は、どうやらとりこし苦労だった。2019年10月から急激に暗くなり、超新星爆発が危惧されていたが、しばらく爆発の恐れはなさそうだ。最新の観測結果は、ベテルギウスが以前の明るさを取り戻しつつあることを示している。

観測チームは2020年2月22日付けでオンライン学術誌「アストロノマーズ・テレグラム」に、「明らかにベテルギウスの減光は止まっていて、徐々に明るくなりはじめている」とする速報を出した。「先例のない減光の様子と、この驚くべき星が次にどうなるかを理解するには、引き続きあらゆる種類の観測が必要だ」という。

ベテルギウスが明るくなりはじめたことで、天文学者たちは2019年末から暗くなった原因を探れることを期待すると同時に、超新星爆発を目撃する機会を逃したことを残念がってもいる。

「私は、超新星爆発は起こると言いたいところです」と言うのは、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのアンドレア・デュプリー氏だ。「超新星爆発の直前、前夜、1週間前、1カ月前にどんなことが起こるのか、私たちはほとんど情報を持っていないからです」

どんどん暗くなった巨星

ベテルギウスは比較的若い赤色巨星で、ふだんは夜空で最も見つけやすい明るい星の1つだ。地球から約700光年の距離にあり、この星を太陽の場所に置けば、木星の軌道まで飲み込んでしまうほど大きい。ベテルギウスは周期的に脈打っていて、その表面には、うごめき、膨らんだり、しぼんだりする巨大な対流セル(胞)がモザイクに並んでいる。その対流セルは太陽の表面にあるプラズマの粒にも似ているが、はるかに巨大だ。

「巨大なセルです! 直径は地球から火星までの距離ほどもあります」とデュプリー氏。「ベテルギウスの表面は想像を絶する世界です」

ベテルギウスの明るさは、星自体の脈動や、対流セルの膨張や収縮に伴って変動する。アラビア語に由来する名前をもつこの星は、そもそも明るさが変わる変光星で、いくつかの周期に合わせて規則的に暗くなったり明るくなったりしてきた。

けれども昨秋、ベテルギウスはいつも以上に減光しはじめ、明るくなることなく、どんどん暗くなっていった。年末にはもとの明るさの40パーセント以下まで暗くなり、夜空で10番目に明るい星ではなくなったどころか、トップ20にも入らなくなり、天文学者が記録をとりはじめて以来最も暗くなってしまった。

「恒星の進化をリアルタイムで眺めるのは楽しいですよ」とデュプリー氏は言う。「私たちがこれまで見たことがない現象が、ベテルギウスで起きています。ほかの星でも同じような現象が見られたことがあるかどうかはわかりません」

ベテルギウスが暗くなった原因はまだわからない。一部の天文学者は、明るさが変わる周期がたまたまいくつか重なったために、いつもより暗くなったのではないかと推測している。ベテルギウスから大量のちりが噴出して星を覆い隠したのではないかと推測する天文学者もいる。さらに、減光はやはり死の前兆と考える科学者もいる。巨星が重力崩壊を起こして爆発する直前に、宇宙空間に大量のちりを放出すると考えられているからだ。

ベテルギウスのような大質量の星にとって、超新星爆発は避けられない。問題は爆発するかどうかではなく、いつ爆発するかだ。ベテルギウスが爆発するときには、地球から日中でも見えるほど明るく輝くことになるだろう。

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