継続して見えてきたドライバー育成の可能性

――今は何人の子どもが参加しているのでしょうか?

19年の予選となるトライアルは全国24カ所のサーキットで実施され、1373人の子どもたちが参加しました。みんなが走った回数を合わせると5000回以上のトライアルをしたことになります。18年は945人だったので、年々参加人数は増加しています。レーシングカートを本格的にやっている子は参加できないルールなので、モータースポーツ初心者の子たちばかりです。16年から、全国大会である決勝は鈴鹿サーキットのゴーカートコースで2日間開催し、19年は100人の子どもたちが参加しました。

トップ10に入った子どもは、無償でレーシングカートに乗って練習ができる「アカデミー」というコースにステップアップできます。この10人には僕が直接指導します。さらに優勝者には何らかの形でレース活動ができるように支援しようと、今プランニングしているところです。

With you Japan ×Glico「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE 2019」ACADEMYの受講風景

―――ドライバーの若手育成につなげる?

始めた頃はそんなこと全く考えていなくて、ただ夢を持って挑戦すること、その楽しさを知ってもらうことが目的でした。でもたった1日のトライで未経験から全国でトップ10に入るような子たちは、将来カーレースの世界で戦えるスピードセンスと可能性があるわけです。そんな子どもたちの自信につなげ、少しでもチャンスが巡ってくるようにしたい。ひいては業界の活性化につながればいいと思っています。

実際に、2年前に優勝した子は、レンタルカートのメーカーが主催する大会で1位になり、日本代表として世界選手権に行きます。そうした成長を見られるのはうれしいし、彼は我々のキッズチャレンジのイベントにも手伝いに来てくれて、後輩たちにアドバイスをしたり、ゴーカートの調整をしたりしていました。そんな姿にも成長を感じました。

――復興地KIDS応援イベント「With you Japan Festa」も続けていらっしゃいます。

17年にインディ500で優勝したことをきっかけに、もっと東北を盛り上げていきたいという思いで、始めました。昨年は主旨に賛同してくださった日米協会のサポートのもと、たくさんの企業・団体スポンサーのご協力のもと、楽天生命パーク宮城で開催しました。こちらも、チャレンジすることをテーマに、キッズカートはもちろん、スケートボードやスラックライン、競技用車いすやラートなど、日常ではなかなか体験できないことをプロと一緒に体験してもらうコーナーや、逆に、普段自分が取り組んでいるダンスや、けん玉、津軽三味線などをステージで発表するなど、チャレンジする楽しさを知ってもらうことを目的にしています。

復興地KIDS応援イベント「With you Japan Festa2019@東北」

ただ、当然ですが震災を経験した子どもたちは年々成長していて、それによってプログラム内容も変えていく必要があります。震災の年に生まれた子たちが20歳になるまでを一区切りと考えていますが、それ以降、どのような活動をしていくかは、みなさんのアドバイスも頂きながら考えていきたいと思っています。

いずれにせよ、「ゴーカートって楽しいよね」と子どもに知ってもらえる機会はつくりたいと思っています。僕自身、車によって成長させてもらえたし、チャレンジなしではチャンスは巡ってこないことを、身をもって教えてもらいましたから。

アメリカンドリームを体現しているインディカー・シリーズ

――いよいよ3月15日に20年のインディカー・シリーズが開幕します。19年は2勝し、2回のポールポジションを獲得され、最終戦まで6位(最終戦を終えてランキング9位)で締めくくりました。振り返ってどんな年でしたか。

インディカーに転身して昨年は10年目の節目の年でした。選手目線では納得できない部分もありましたが、シーズン初の複数レースで優勝し、念願だったポール・トゥ・ウィン(予選を1位通過し、決勝ではポールポジションからそのまま優勝する)も達成できた。最終戦まで選手権6位で走れたことは、10年の集大成としていいシーズンだったと思います。

今のチームに在籍して1年目は1勝、19年で2勝しているので、チームの体制も少しずつ良くなってきました。一丸となって前進しています。

――10年の年月を振り返り、ここまで来るのは大変だったという気持ちの方が強いでしょうか?

転身した当時、初心に戻ってチャレンジャーの心境で挑みました。特にオーバルコース(楕円形のオーバルトラックを周回するコース)はF1のコースと勝手が違いますから、ある程度の覚悟はしていました。ただ、得意としていたロードコースで結果を出せるまでに予想以上に時間がかりました。

大変でしたが裏を返せば、非常にやりがいのあるチャレンジだったと思っています。F1は、各チームがオリジナルのマシンを製造するため、チームの実力の差が大きく出ます。マシンの性能が高いトップチームに在籍している一握りのドライバーしか表彰台を狙えない世界ともいえます。一方、インディカーは、どのチームも同じマシンを使うため、マシンを動かすドライバーとマシンを調整するエンジニア、戦略を練るストラテジストらのテクニックやリソース、ノウハウで、1万分の1秒を争うことになる。弱小チームでもアメリカンドリームをつかむことができます。17年のインディ500で頂点を取れたときは、初めてサーキットでレース観戦をしたときから、30年来の夢が叶った瞬間でした。年数はかかったけど、多くの方に応援してもらい、ずっと挑戦してきて、本当に良かったと思いました。

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今シーズンはシリーズチャンピオンを狙える