検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

カート体験で子どもに笑顔を 佐藤琢磨の震災復興支援

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

米国フロリダ州セントピーターズバーグで3月15日(現地時間)、2020年の自動車インディカー・シリーズが開幕する。10年に自動車レースの最高峰フォーミュラ・ワン(F1)から米国のインディカー・シリーズに転身し、17年にインディアナポリス500マイル(インディ500)優勝という日本人として初の快挙を遂げたのが佐藤琢磨選手だ。インディカー・シリーズ参戦11年目を迎えた彼は、43歳の今も現役レーシングドライバーとして果敢に攻め続ける。そんな佐藤選手に、長年レースで活躍し続けられる理由や、東日本大震災を機に始めたキッズカートチャレンジへの意気込みについて聞いた。

レーシングドライバーが復興支援にどう関われるかを自問

――東日本大震災を機に、子どもたちがカートを体験できるイベントを継続されています。どんな目的で開催されたのでしょうか。

11年3月11日に発生した東日本大震災の約2週間後にインディカー・シリーズの開幕戦を控えていました。母国がこんな大変なときに自分がレースに参加していいのか、何かできることはないのか、とても悩みました。しかし、自分の活動を多くの方々が支援して下さっていることもあり、レースを続けることが被災地の応援になるのではと気持ちを切り替え、インディカー・シリーズに参戦しました。

そして「With you Japan」というプロジェクトを立ち上げ、天災にめげずに頑張る子どもたちへの長期的支援を目指して活動を始めました。最初は、ドライバー仲間やスタッフたちの応援メッセージを被災地に届けたり、米国の16州を回るインディカー・シリーズの合間に、開催地の州にある小学校に協力いただいて、授業の一環として日本の現状を伝えたりしました。一緒に悲しんでくれた米国の生徒たちが書いた励ましの手紙やアートワークの作品を被災地の子どもたちへ送りました。また自分の記念ヘルメットをはじめ、様々なチャリティーオークションなどを通じて募金活動を行いました。

被災地にも足を運びました。グラウンドがなくなり、原発事故の影響から外で遊べない子どもたちの現状を目の当たりにして、少しでも力になりたいと、ツインリンクもてぎや自動車メーカー各社にご協力いただき、11年8月には運動会を開催しました。ホンダやトヨタ、日産のドライバーなどメーカーの壁を超えて協力してくれて、体を動かすことを目的に、子どもたちと目一杯遊びました。

自分はレーシングドライバーなんだからレースという題材を使って復興イベントを開こうと14年に始めたのが、子どもたちにゴーカートを体験してもらう「キッズカートチャレンジ」です。最初は、被災地の子どもたちを100人ほど呼んで開催しました。

―――開催してみてどんな感想を持たれましたか?

すごく面白い発見がありました。ゴーカートは、ほとんどの子が初体験でみんな知らない世界。喜ぶ男の子が多い中、恐らく車好きの両親に連れてこられた8歳ぐらいの女の子が、「怖くて、私には無理、できない」と言い出しました。でも、自分より小さい小学1年生がうれしそうに運転している姿を見て、悔しい気持ちもある。「とりあえず乗ってみる」と、加速してブレーキをかける練習から始め、ハンドルを切る練習などをし、少しずつ上達していきました。できるという感覚を体感し、夕方には1人でサーキットを走ってタイムトライアルに挑戦。チェッカーフラッグを受けた時の、ヘルメットの中は満面の笑みでしたね。

つまり、悔しい思いを経験することで、不可能だと思っていたことに挑戦する気持ちが湧いてくる。そして少しずつできるようになる成功体験が生まれ、最後はめちゃくちゃ楽しかったという達成感を味わえる。これがわずか1日で体験できる。普段の生活ではたやすく経験できないサーキットだからこそ得られる教育体験の一つではないかと思いました。

そんなチャレンジすることの素晴らしさを子どもたちに伝えたいという思いから、江崎グリコの協賛のもと、毎年さまざまなスローガンを掲げて少しずつ拡大をしてきました。16年のときは、関東の子どもたちと東北の子どもたちと一緒に組んで1台を5人で乗る耐久レースを開催しました。誰が何周走るかは自分たちで決めてもらい、強さを伸ばし弱い部分をどう補填するか考えてもらうので、子どもたちも楽しかったと思います。

継続して見えてきたドライバー育成の可能性

――今は何人の子どもが参加しているのでしょうか?

19年の予選となるトライアルは全国24カ所のサーキットで実施され、1373人の子どもたちが参加しました。みんなが走った回数を合わせると5000回以上のトライアルをしたことになります。18年は945人だったので、年々参加人数は増加しています。レーシングカートを本格的にやっている子は参加できないルールなので、モータースポーツ初心者の子たちばかりです。16年から、全国大会である決勝は鈴鹿サーキットのゴーカートコースで2日間開催し、19年は100人の子どもたちが参加しました。

トップ10に入った子どもは、無償でレーシングカートに乗って練習ができる「アカデミー」というコースにステップアップできます。この10人には僕が直接指導します。さらに優勝者には何らかの形でレース活動ができるように支援しようと、今プランニングしているところです。

―――ドライバーの若手育成につなげる?

始めた頃はそんなこと全く考えていなくて、ただ夢を持って挑戦すること、その楽しさを知ってもらうことが目的でした。でもたった1日のトライで未経験から全国でトップ10に入るような子たちは、将来カーレースの世界で戦えるスピードセンスと可能性があるわけです。そんな子どもたちの自信につなげ、少しでもチャンスが巡ってくるようにしたい。ひいては業界の活性化につながればいいと思っています。

実際に、2年前に優勝した子は、レンタルカートのメーカーが主催する大会で1位になり、日本代表として世界選手権に行きます。そうした成長を見られるのはうれしいし、彼は我々のキッズチャレンジのイベントにも手伝いに来てくれて、後輩たちにアドバイスをしたり、ゴーカートの調整をしたりしていました。そんな姿にも成長を感じました。

――復興地KIDS応援イベント「With you Japan Festa」も続けていらっしゃいます。

17年にインディ500で優勝したことをきっかけに、もっと東北を盛り上げていきたいという思いで、始めました。昨年は主旨に賛同してくださった日米協会のサポートのもと、たくさんの企業・団体スポンサーのご協力のもと、楽天生命パーク宮城で開催しました。こちらも、チャレンジすることをテーマに、キッズカートはもちろん、スケートボードやスラックライン、競技用車いすやラートなど、日常ではなかなか体験できないことをプロと一緒に体験してもらうコーナーや、逆に、普段自分が取り組んでいるダンスや、けん玉、津軽三味線などをステージで発表するなど、チャレンジする楽しさを知ってもらうことを目的にしています。

ただ、当然ですが震災を経験した子どもたちは年々成長していて、それによってプログラム内容も変えていく必要があります。震災の年に生まれた子たちが20歳になるまでを一区切りと考えていますが、それ以降、どのような活動をしていくかは、みなさんのアドバイスも頂きながら考えていきたいと思っています。

いずれにせよ、「ゴーカートって楽しいよね」と子どもに知ってもらえる機会はつくりたいと思っています。僕自身、車によって成長させてもらえたし、チャレンジなしではチャンスは巡ってこないことを、身をもって教えてもらいましたから。

アメリカンドリームを体現しているインディカー・シリーズ

――いよいよ3月15日に20年のインディカー・シリーズが開幕します。19年は2勝し、2回のポールポジションを獲得され、最終戦まで6位(最終戦を終えてランキング9位)で締めくくりました。振り返ってどんな年でしたか。

インディカーに転身して昨年は10年目の節目の年でした。選手目線では納得できない部分もありましたが、シーズン初の複数レースで優勝し、念願だったポール・トゥ・ウィン(予選を1位通過し、決勝ではポールポジションからそのまま優勝する)も達成できた。最終戦まで選手権6位で走れたことは、10年の集大成としていいシーズンだったと思います。

今のチームに在籍して1年目は1勝、19年で2勝しているので、チームの体制も少しずつ良くなってきました。一丸となって前進しています。

――10年の年月を振り返り、ここまで来るのは大変だったという気持ちの方が強いでしょうか?

転身した当時、初心に戻ってチャレンジャーの心境で挑みました。特にオーバルコース(楕円形のオーバルトラックを周回するコース)はF1のコースと勝手が違いますから、ある程度の覚悟はしていました。ただ、得意としていたロードコースで結果を出せるまでに予想以上に時間がかりました。

大変でしたが裏を返せば、非常にやりがいのあるチャレンジだったと思っています。F1は、各チームがオリジナルのマシンを製造するため、チームの実力の差が大きく出ます。マシンの性能が高いトップチームに在籍している一握りのドライバーしか表彰台を狙えない世界ともいえます。一方、インディカーは、どのチームも同じマシンを使うため、マシンを動かすドライバーとマシンを調整するエンジニア、戦略を練るストラテジストらのテクニックやリソース、ノウハウで、1万分の1秒を争うことになる。弱小チームでもアメリカンドリームをつかむことができます。17年のインディ500で頂点を取れたときは、初めてサーキットでレース観戦をしたときから、30年来の夢が叶った瞬間でした。年数はかかったけど、多くの方に応援してもらい、ずっと挑戦してきて、本当に良かったと思いました。

――結果につながった要因は?

やはりチーム力です。もちろんドライバーも求められる最高の仕事をしなくてはなりませんが、そこに持っていくまでの準備とチーム力が物を言います。走るのはマシンだけれど、それを動かし力を発揮するのは人間。ドライバーと勝利を目指すんだという気持ちがエネルギーやモチベーションに変わり、質の高い仕事につながる。運も含めて一つでも欠けてしまったら優勝できません。

――チーム力を上げるために佐藤さん自身、何をされましたか?

スタッフに敬意を示して、ともにやっていくという覚悟や求心力が大事になります。チームレベルをみんなで上げていく作業はとても面白い半面、意見が分かれて一筋縄ではいかないこともたくさんある。でも僕は挑戦者としてこの世界に入ったので、郷に入れば郷に従えではないけれど、エンジニアのやり方をまずは見てみようと思いました。もちろん、結果が悪くて最初に切られるのはドライバーなので、ずっと受け身でいるわけにはいかない。だからある程度、彼らのやり方を把握し、彼らのやり方にリスペクトを示した上で、僕のアイデアをざっと机の上に並べます。互いの歩み寄りでベストな答えを見つけてチャレンジしてみるのです。

エンジニアも、机上の計算だけでドライバーの意見を否定はしません。うまくいけば一つの成功という経験値をゲットでき、うまくいかなくても、さらなる提案をして挑戦し続けるだけ。自身の責任や緊張感は相当大きいですが、だからこそ絶対に結果を出すという気迫でハンドルを握ることができます。

成功したときは、僕に向けられたスタッフの目が変わります。次も僕の意見を聞いてみようかと。コミュニケーションを取り、結果を常に出し続ける努力が、「このドライバーのために、チームのために仕事をしよう」というスタッフの気持ちにつながります。

今シーズンはシリーズチャンピオンを狙える

――経験値の多いベテランの方が有利なのでしょうか?

インディカーもドライバーの若年化が進んでいて10代もいます。ストリートコース、ロードコースは経験があるから勝つというわけでもない。でも、オーバルコースはレース展開も含めて経験が必要のように思います。僕自身、最初はインディカーのドライバーとして足りない部分があったし、毎年乗り続けて、より速く、より正確なドライビングスキルの引き出しが増えてきました。若年化が進む中、自分なりに毎年進化を重ねて、10年という年月を乗り越えてきました。

――今シーズンの目標は?

1勝、2勝ではもう誰も驚かないでしょうね。それだけ僕に対する期待値が上がったのは幸せなこと。いかに大変なことかは自分が一番分かっているので軽々しくは言えないけれども、今シーズンの目標は3勝以上を目指します。昨年のショートオーバルコースでの勝利で、スーパースピードウェイ、市街地コース、常設のサーキットであるロードコースの4種類全てのタイプのコースで勝つことができた、現役6人の仲間入りを果たせました。究極の目標としては、シリーズチャンピオン以外に狙うものはないです。

佐藤琢磨
レーシングドライバー。1977年東京都生まれ。高校時代から自転車競技を始め、インターハイ、全日本学生選手権優勝。鈴鹿サーキットレーシングスクールフォーミュラー(SRS-F)に入学し首席で卒業。単身渡英して、英国F3選手権に参戦し、2001年に同シリーズのタイトルを獲得。02年F1デビュー。04年米国グランプリで3位となり表彰台に上がる。06年スーパーアグリ(SA)F1チームに移籍したが2年半の活動後、同チームが撤退。10年米国最高峰のフォーミュラカーレース「インディカー・シリーズ」に参戦。13年第3戦で念願の初優勝。17年第6戦米インディアナポリスのインディ500で悲願の日本人初優勝。18年にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍。19年は2勝を達成。

(ライター 高島三幸、写真 厚地健太郎)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_