再犯の悪循環、就労支援で絶つ 現実知る僕だからこそクロスキャリア代表 鈴木将吾さん

鈴木さんの夢は「太陽」になること。「太陽を浴びていると悪いことをする気にならないですから」
鈴木さんの夢は「太陽」になること。「太陽を浴びていると悪いことをする気にならないですから」

過去に間違いを犯しても、人は変われる。そのための環境と夢さえあれば――。鈴木将吾さん(24)はそう信じて、2020年1月に前科者・受刑者に特化した就職支援サービスの会社、クロスキャリア(東京・渋谷)を立ち上げた。高校・大学中退、窃盗・傷害容疑で逮捕、少年院入り……。他人や家族を傷つけ、自分もどん底に落ちた過去をもつ自分だからこそ、やらなければいけない仕事がある。その使命感が、安定したキャリアをなげうって起業する道へと突き動かした。

「出所後に就職できず、生活できないために窃盗などの罪を犯すケースもある。その悪循環を断ち切りたいんです」。会社設立の狙いについて、鈴木さんは思いを込めて語った。裏付けとなりそうなデータがある。法務省の「犯罪白書」によると、2018年に刑法犯で検挙された約20万6000人のうち再犯者は48.8%。さらに、同年に刑務所に再入所した人のうち、無職が72.1%を占めた。過ちを犯した人にも挑戦するチャンスを提供することで、少しでも再犯を防ぎたい。鈴木さんは、これこそ自分だからできる、そして、やるべき仕事だと考えたという。

関東を逃れ大阪に隠れ住んだ16歳

横浜市生まれ。幼少期から子どもを習い事に通わせる教育熱心な家庭に育った。「常に1番でいたい」との思いが人一倍強く、スポーツも勉強もよくできたという。その強い思いが屈折するのは中学2年のころだ。

単に負けず嫌いというだけでは周りの生徒にかなわなくなっていた。「どの世界でなら1番になれるだろう」。見回したとき、かっこよくて簡単そうに思えたのが「不良の世界」だった。近隣の中学校にケンカしに行ったり、無免許でバイクを運転したり。警察のお世話になることはしょっちゅう。いつしか通っていた中学の不良仲間を仕切るまでになった。

3人の息子がいる家計を支えるため、両親は共働きで不在がち。居場所を求めて遊び仲間と過ごす時間が長くなり、反社会的勢力との接点も生まれた。高校に進学したが3カ月で中退。通信制の高校に籍は置いたものの、行動はエスカレートし、親も手を付けられなくなっていた。「1番」になろうと、進んで危険な場所に飛び込んで組織の上層部に自分を売り込み、リーダー格になるまでに時間はかからなかったという。

逮捕された当初は犯罪への反省はなく、ただ「しくじった」という気持ちだったという

組織間のもめごとから関東を離れ大阪に隠れ住んでいた16歳のとき。突然、警察に踏み込まれ、窃盗や傷害などの容疑で逮捕された。「あんた、大阪に行ってたの?」。両親との久しぶりの面会は、留置所のアクリル板越しだった。涙を流す母を見るのはつらかったが、当初は後悔や反省はなく、ただ「しくじった」という気持ちだった。

「考え方が完全に悪い世界の基準になっていて、視野が狭かった。まるで外の世界が見えていなかった」。当時は「体の中に大暴れする竜を飼っているような感覚」だったという。自分がしたことの重大さに気づいたのは、少年院に入った後。瞑想(めいそう)の時間に母のことを考えていたとき、ふと「自分は母の自己肯定感も傷つけ、人生を狂わせてしまった」と気づき、被害を受けた人たちの痛みや怒りにもようやく思い至った。自分しか見えていなかったことへのどうしようもない自責の念。もう決して人を傷つけない。これからは自分とかかわった人たちを幸せにしよう。そう誓った。

少年院で過ごした1年半の間に危険物取扱者や溶接などの資格を取得し、高卒認定試験にも合格した。読書の習慣を身につけ、約400冊の本から多くを教えられた。「社会の外で社会を知った」と思う。本気で向き合ってくれる法務教官とも出会えた。叱られて泣いたのは、中学に入って以降、初めてのことだった。自分の弱さに対する悔しさ、自分をこんなにも思ってくれているのだというありがたさから、涙を抑えきれなかった。

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