今までは、銀行など貸金の根保証人となる場合のみ、極度額(上限額)を定めなければならないことになっていましたが、今般の改正民法では、すべての根保証契約について極度額(上限額)の設定を義務付けたのです。
身元保証契約には身元保証法が適用されると申し上げましたが、そこに書いてない場合には民法が適用されます。このため、身元保証契約においても極度額(上限額)を設けなければ、その保証は無効ということになります(厳密にいうと、前述した身元引き受けは保証ではありませんが、この規定が類推適用されるとの解釈が一般的です)。
妥当な上限額は?
改正民法施行後は会社側も身元保証書の条項を改定する必要があります。一例として挙げるなら、
「●●(社員の氏名)が故意または重過失によって貴社に損害を与えた場合、直ちに●●と連帯して、金〇〇万円を極度額として、その損害額を賠償します」
というような条項にすべきでしょう。金額の部分をいくらにするか、会社側としては難しいところでしょうが、あまり安すぎても実効性がなく、かといってあまりに高額だとだれも身元保証人を引き受けてくれません。
あくまでも私見ですが、社員本人の1年分の給与相当額ぐらいが妥当ではないでしょうか(なお、この金額を記載しても、前述のとおり身元保証法によってさらに裁判所が減額することはありえます)。
相談のケースで、もし提示された身元保証契約書に極度額(上限額)の記載がない場合には、改正民法施行前ではありますが、会社に追記を要請してみてもよいと思います。
保証人を不要とする会社も
ところで、入社に際して身元保証人が求められる場合、「1人は親族、もう1人は独立して生計を立てている者」や「両親以外」などの条件が付される場合もあり、保証人を探すのに苦労する人がいるという話も耳にします。少子化や核家族化が進行し親戚づきあいが疎遠になる人も多い中で、身元保証人を不要とする企業も最近では増えつつあります。
今までは頼まれてなんとなく身元保証書にサインしていた人も、今後は具体的な金額を目にすることになります。「え?上限300万円? 怖くてサインできないなぁ」。こういう人が増えてくることが予想され、身元保証人探しはますます難しくなるのではないでしょうか。
身元保証制度を維持し続けるのかどうか、改正民法の施行を契機に採用する企業側も再考してみてはいかがでしょうか。
