浮気した夫に仕返ししたい作家、石田衣良さん

NIKKEIプラス1

作家。東京都生まれ。2003年「4TEENフォーティーン」で直木賞。石田衣良のブックサロン「世界はフィクションでできている」主催(https://yakan-hiko.com/meeting/ishidaira/top.html)。
作家。東京都生まれ。2003年「4TEENフォーティーン」で直木賞。石田衣良のブックサロン「世界はフィクションでできている」主催(https://yakan-hiko.com/meeting/ishidaira/top.html)。

夫が過去に浮気したことがあるので、私も同じことをやり返すまで死ねないと思っています。でも残念ながら、普通の主婦にそんな機会は訪れません。どうすれば気持ちが晴れますか。(奈良県・40代・女性)

ニッポン社会では、不倫は殺人につぐ大罪に昇格しました。特にネット世論の反応は激烈で、不倫によって社会的な生命を抹殺された俳優・タレントは数え切れないほど。つい最近も妻が妊娠中に不倫をしていた若い俳優の記事が、政治経済といった重要ニュースを抑えて、アクセス数トップを独走していました。

警察やマトリ(麻薬取締官)に逮捕され、検察に起訴されるれっきとした犯罪である覚醒剤事案より、不倫は社会的にはむしろ重い咎(とが)を受けるのです。執行猶予もなく、常識的な量刑判断というのも存在しません。法に反した罪ではなく、モラルの問題ですから、永遠に叩(たた)かれるのです。

あなたは夫の不倫で、深く傷ついた。いつか復讐してやろうと心の底で誓っている。まだ40代と若い(ほんとです!)ので、本気になればチャンスはつかめるはず。普通の主婦も不倫をする人はちゃんとしています。それも特に美しくも、お洒落でもない女性がしている。そういうのは、その人の生まれついての資質や性格の問題ですから、する人は当然のように中年女性でも「する」のです。

チャンスについていえば、これだけSNSが発達した時代です。手近なところでなく後腐れのない相手を慎重に捜すことも、そうハードルが高いとはいえません。

結論にいきましょう。悔しい気もちもわからない訳ではありませんが、本当はあなたはそれほど浮気をしたいのではないのではありませんか。復讐心から一度だけ浮気をしたら、あとはどうでもいい。やり返さなければ死ねないといいますが、そんなふうに想像することで怒りをやりすごし、暗い復讐心を慰めているだけではないでしょうか。

いや絶対そうじゃないというのなら、SNSで相手を見つけ、さっさと復讐すればいい。そんなことめんどくさいなあと思うなら、いつか浮気してやると心の底で考えながら、今のまま普通の暮らしを送ったらいかがでしょうか。

あなたが本気なら浮気もいいでしょう。世の男性のほとんどと異なり、浮気を隠すことに関しては、女性たちは命がけの秘密諜報部員よりもタフですから、あなたは結婚生活にひびを入れずに、無事任務を完遂することでしょう。決めるのはあなたです。でもね、浮気ってけっこうたいへんだよ。そのあたりもよく考えてくださいね。

[NIKKEIプラス1 2020年3月12日付]

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