無症状にもかかわらず、ウイルス量は発症者並み

この無症状の男性は、1月17日に発症してICUに入院した3人のうちの1人と発症当日に濃厚接触していたため、監視下に置かれていました。追跡期間中に症状は現れませんでしたが、濃厚接触から7日後、10日後、11日後のPCR検査では、鼻スワブも咽頭スワブも陽性でした。鼻スワブのCt値(下記参照)は22から28で、咽頭スワブのCt値は30から32でした。濃厚接触から21日となる2月6日に、念のため胸部CT検査を行いましたが、肺炎の所見は見られませんでした。

【Ct値とは】
 PCRで標的とするウイルス遺伝子を倍々増幅させる過程で、ウイルス遺伝子の量が設定された閾値に達した時点までに要した増幅回数を意味する。標本中に含まれているウイルス遺伝子が多ければ、少ない回数で十分に検出でき、ウイルス遺伝子が少なければ、検出可能になるまでに要する増幅の回数が多くなる。

 このPCR検査では、Ct値が40以内でウイルス遺伝子の量が検出可能になれば陽性と判断している。

無症状だった患者を除く17人の患者の、鼻スワブのCt値の最低は19(発症から6日目)、次いで別の患者の21(同2日目)。咽頭スワブでは19(同6日目)、次いで別の患者の25(同7日目)でした。どちらの標本においても、重症患者のCt値の平均は、軽症から中等症の患者より低く、重症者の方が、鼻やのどに存在するウイルス量が多かったことを示しました。

なお、18人に対して複数回行われたPCRの結果は一貫して陽性にはなっておらず、いったん陰性化してから再び陽性になる例が複数見られました。

無症状だった患者以外の17人の患者のPCR検査の結果をまとめて分析し、標本中に存在するウイルス量と、発症からの日数との関係を検討したところ、ウイルス量が多いと、症状発現後すぐにPCR陽性となること、咽頭スワブより鼻スワブの方がより多くのウイルスを含んでいることが明らかになりました。

今回の分析結果は、新型コロナウイルス感染者のウイルス排出パターンは、SARS患者とは異なることを示唆しました。無症状の患者の鼻とのどに存在するウイルス量が、症状のある患者と同程度であったことは、感染しても症状がない、またはわずかな症状しかない人からも感染が広がる可能性を示唆しており、「感染拡大を防ぐためにはSARSの場合とは異なる戦略が必要だ」とZou氏らは述べています。

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday2020年2月28日付記事を再構成]

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