新型コロナ、無症状の感染者からも発症者並みウイルス症状がない人から感染が広がる可能性も

日経Gooday

無症状の感染者も発症者並みのウイルスを排出し、感染を拡大させる恐れが。画像はイメージ=(C) Sebastian Kaulitzki-123RF
無症状の感染者も発症者並みのウイルスを排出し、感染を拡大させる恐れが。画像はイメージ=(C) Sebastian Kaulitzki-123RF
日経Gooday(グッデイ)

中国・広東省で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したものの、症状が出なかった(発症しなかった)患者の鼻とのどから、発症者と同程度の量のウイルスが検出されたことが、2020年2月19日付New England Journal of Medicine誌のCorrespondence欄に報告されました[注1]。この結果は、感染しても症状がない、またはわずかな症状しかない人からも、新型コロナウイルスの感染が広がる可能性を示唆するものです。

新型コロナウイルス感染症がSARSよりも爆発的に広がっているのは、ウイルスの排出パターンの違いのせい?(写真提供:国立感染症研究所)

SARSが古典的な「隔離と検疫」で終息した理由は?

2002~2003年に、世界25カ国以上で8096人が発症したSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合、原因となったコロナウイルス(SARS-CoV)には以下のような特徴がありました。

【SARSコロナウイルスの特徴】
・患者本人の発症から数日を経てから、周囲の人に感染し始める
・発症から間もない患者の気道にはウイルスは少ない
・気道のウイルス量が最も多くなるのは、発症から10日前後

SARSは、ウイルスの持つこうした特徴から、古典的な「隔離と検疫」によって終息したと考えられています。

では、今回の新型コロナウイルスの場合はどうなのでしょうか。

中国広東省疾病管理予防センター(CDC)のLirong Zou氏は、広東州南部の珠海市で、18人の新型コロナウイルス感染確定患者(男性9人女性9人、26歳~76歳、中央値は59歳)の、鼻とのどから標本を採取しました。具体的には、鼻の奥から採取する鼻スワブと、のどの奥から採取する咽頭スワブを、患者1人当たり、それぞれ1本から最大9本まで、計72本採取しました。

18人のうち14人は発症前に武漢を訪問しており、1月7日から1月26日までの期間に37.3度以上の発熱があったため、中国CDCが開発したPCR検査を受けて、新型コロナウイルスによる肺炎と診断されました。14人中13人はCT検査でも肺炎と診断されました。14人中3人がICUに入院しましたが、それ以外の患者は軽症から中等症にとどまりました。

一方、18人中4人は、武漢訪問歴がある患者から感染した二次感染者で、うち3人は発症しましたが、1人は、症状が現れない状態を維持していました。

[注1]Zou L, et al. N Engl J Med. 2020 Feb 19. doi: 10.1056/NEJMc2001737.

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無症状にもかかわらず、ウイルス量は発症者並み