視線は高く 仕事のスキルは人格の後からついてくる大和証券グループ本社 社長 中田誠司氏(下)

――社長就任後、証券以外の事業の拡大に力を入れています。

「リーマン危機で壁にぶつかった不動産ファンド運営ですが、その後は順調に拡大し、今では1兆円規模まで拡大しました。証券会社でありながら、インターネット銀行も運営しています。19年には有料老人ホームの運営会社を買収しました。農業関連の新会社も設立し、熊本県で葉物野菜、ベビーリーフの栽培を始めています」

「こうした取り組みは『証券会社なのになぜ』と思われるかもしれませんが、どれも証券会社の業務とシナジー(相乗効果)を発揮できる領域だと考えています。例えば、証券会社の顧客の多くは高齢者です。今は元気でも、将来の住まいに関する悩みを抱えています。当社グループが有料老人ホームを運営していれば、施設の紹介も含め、より詳しい相談に乗れるようになります」

「新たな事業が実るまでには長い時間がかかりますが、グループが今後も成長し続けるためには非常に重要です」

「農業も欧州では大規模化、機械化が進んでおり、株や債券、不動産と同じような投資対象となっており、実際に年金基金などのお金が入っています。一方、日本では食料自給率が低いうえに、農業従事者の高齢化・後継者不足に直面しています。総合証券会社としてのノウハウを生かし、こうした課題を解決できるのではと考えています」

「こうした取り組みはリーマン危機前、私が経営企画を担当していた頃に着手しました。証券一本では厳しいとの危機感は、リーマン危機を経て一層強くなりました。証券業務の収益は株式マーケットに大きく左右されますし、手数料の引き下げ競争も進んでいます。個人投資家が高齢になり、マーケットが良いときでもあまり株を売買しなくなってきました。新たな事業が実るまでには長い時間がかかりますが、グループが今後も成長し続けるためには非常に重要です。社長就任からこれまでの3年間は種まきの時期で、20年度から大きく育てていきます」

――次世代のリーダーに求められる条件は何だと考えますか。

「大和リーダーシップ・プログラムという、次世代リーダー育成のための研修を実施しています。約2カ月間で、経営理論やマネジメントスキルを学んだり、部署やグループ会社の垣根を越えて交流してもらったりしています。研修を受けた社員の中から選抜したプログラムもあります。約4カ月間、隔週で宿泊を伴う研修をして、幹部候補を育てます」

とにかく人格を磨いてほしい

「もっとも、リーダーの基本として、とにかく人格を磨いてほしいですね。立派な人間になろうと日々努力する姿勢こそが大事です。あとは胆力。何事も恐れず、挑戦してほしい。研修は充実させていますが、仕事のスキルは人格や胆力の後についてくると思っています」

「ここ数年で、グループの事業領域がかなり広がってきました。1つの業務を長くやっていると、うまくこなせるようになりますが、グループ全体に気を配る必要があるリーダーの育成にはなりません。社員にはなるべく新しい業務、新しい環境を経験させるようにしています」

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中田誠司
1960年生まれ、東京都出身。83年早大政経卒、大和証券入社。日比谷支店(東京・千代田)に5年間勤務した後、事業法人部門に約15年間在籍。経営企画部長などを経て、2009年大和証券グループ本社取締役、16年副社長、17年から現職。

(和田大蔵)

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