逃げない・決める・責任とる トップの覚悟、常に自問大和証券グループ本社 社長 中田誠司氏(上)

「宮仕えの身である以上、部下は上司を選ぶことはできません。上司は部下の人生の一時期を担い、その後の人生を変えてしまうかもしれません。そうであれば、部下のことをよく知り、その上できちんと仕事にかかわる指導をすることで、会社員人生をより良い方向に持っていけるかもしれない。そうやって互いの信頼関係が強まれば、組織も強くなります」

稲盛和夫氏に感銘

――尊敬するリーダーはいますか。

「証券会社に長く勤めていますので、経営者にお会いする機会には恵まれています。中でも影響を受けたのは、京セラ創業者の稲盛和夫さんです。人格を磨き続けようとする姿勢に感動し、私もそうありたいと、毎日の行動を振り返るようにしています。会社の私の書棚には稲盛さんの本が置いてあります。迷いが生まれたときに読み返すようにしています」

――稲盛さんとの思い出はありますか。

「法人部門で課長に昇格したばかりの1994年、稲盛さんが創業した第二電電、DDI(現KDDI)の公募増資を担当しました。バブル景気が崩壊し、株式相場が低迷するなかで500億円の調達を試みました。嵐の中に船を出すようなものだと、周囲には言われていました」

「30歳代で初めてお会いした稲盛さんは雲の上の存在でした。迫力があって、怖かった印象があります。役員を含めた数人で足を運び、公募増資について直接ご説明した場面は今でも鮮明に覚えています。私が同僚と徹夜して作った資料1枚を、稲盛さんはじっと読んでいました」

企業の資金調達などをアドバイスする、いわゆる「事法マン」の経験が長い。当時やっていたのが、生活を担当企業の色に染めること。「東芝を担当したら、家中の家電を東芝製品に替えました。雪印乳業を担当すれば冷蔵庫の中は雪印製品ばかり。アサヒビールを担当したときは他社のビールは飲みませんでした」。こうした地道な取り組みを通じて顧客との話題を増やし、営業に役立てたという

「稲盛さんは資料を読み終えた後、『相場環境が悪いときだからこそ、しっかりした会社には資金が集まることを、世の中に示そうじゃないか』と言いました。さすが稲盛さんらしい言葉だなと思いました。結果的に、この公募増資はバブル崩壊後で最大の資金調達になり、マスコミなどで注目されました」

――心がけている健康法はありますか。

「よく寝るようにしています。宴席があっても午後9時半には帰宅し、10時半には布団に入るようにしています。日中、ひとりで過ごす時間がほとんどないので、布団の中で、日々の行動や仕事についてじっくり考えます。リーダーは決めるのが仕事ですから、冷静に判断できるよう、しっかりと休み、心身ともに整えておくようにしています」

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中田誠司
1960年生まれ、東京都出身。83年早大政経卒、大和証券入社。日比谷支店(東京・千代田)に5年間勤務した後、事業法人部門に約15年間在籍。経営企画部長などを経て、2009年大和証券グループ本社取締役、16年副社長、17年から現職。

(和田大蔵)

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