逃げない・決める・責任とる トップの覚悟、常に自問大和証券グループ本社 社長 中田誠司氏(上)

――社員をどう励ましたのですか。

「毎週月曜の朝礼では、私がマイクを取って部門の社員全員に話をしていました。そこで『お客さんに信を問おう』と、毎回のように呼びかけました。顧客のことを真剣に考え、きちんとした提案をすることで、大和が必要な存在かどうか判断してもらおうじゃないかと」

「それから、競合他社の悪口は絶対に言ってはいけない、もしそれが私の耳に入ってきたら承知しないぞとも伝えていました。厳しい状況では、どうしても横に目が行きがちです。ただ顧客に信を問うのに、他社がどうとかは関係ない。社員には正々堂々と、顧客に向き合ってほしかったのです」

入社から5年は日比谷支店に勤務。営業成績は全国上位で、新入社員の教育係を務めたことも(前列右から3人目)

――法人部門の再出発はうまくいきましたか。

「三井住友との提携解消の結果、顧客との取引が減ったり、関係が切れたりするのは珍しくありませんでした。一生懸命営業しても、顧客から『銀行との関係で、大和さんとは取引できないんだよ』と言われることもありました。独立を保つというのはそれぐらい難しいのです。社員もやりきれないですから、きちんとしたプロセスを踏んで営業したのに結果に結びつかなかった場合、一切何も言いませんでした」

「そうしていくうちに『うちは大和さんでいくよ』と言ってくれる顧客も現れました。そうした声はかつてよりも何倍も響き、部内の士気も上がりました。社員が自信を取り戻し、攻めの態勢が整うまでに、2~3年はかかりました」

部下40人の身上調書を暗記

――リーダーとしての原点になった経験は何ですか。

「初めて部店長職に就いたのは40歳代前半、事業法人営業部長のときでした。週末に部下40人の身上調書を持ち帰り、丸2日かけて暗記しました。部下たちのご両親がお元気か、お子さんはいるのか、いるなら何歳か。こうした情報を頭に入れて、例えば『きょうは息子さんの誕生日だろう、早く帰っていいぞ』と言えるようにしていました。実は若手社員の頃、住友銀行出身の上司が同じことをやっていて、自分も部下を持つようになったらやってみようと思っていました」

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