通勤電車で新型コロナに感染 労災は適用される?人生100年時代のキャリアとワークスタイル

新型コロナウイルスに通勤電車で感染したら(写真はイメージ=PIXTA)
新型コロナウイルスに通勤電車で感染したら(写真はイメージ=PIXTA)

最近では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、電車など公共交通機関の利用を控えたり、時差通勤をしたりしている人が増えています。「通勤」は私たちにとって非常に身近なもの。通勤途中に転倒するなどしてケガをするのは、実は珍しいものではありません。しかし、負傷した際に「通勤災害」になり得る可能性があることを知らずに、自己負担で治療してしまう方もいます。通勤災害の基本について、人事労務コンサルタントで社会保険労務士の佐佐木由美子氏が解説します。

通勤災害の例外ルール

通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷や疾病、障害または死亡のことをいいます。ここでいう「通勤」とは、就業に関して、住まいと就業場所の往復や事業所から他の事業所への移動などについて、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を帯びる移動については通勤とはなりません。たとえば、休日・休暇中に呼び出しを受け予定外に緊急出勤するような場合がこれに当たります。単身赴任先の住まいと帰省先の住まいとの間の移動なども含まれます。なお、共働き労働者が託児所や親せきなどに子どもを預けるためにとる経路は、合理的な経路と考えられます。また、労働者であれば、パートやアルバイトなど、雇用形態を問わず対象となります。

具体的には、通勤の途中において、自動車にひかれた場合や駅の階段から転落した場合、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体によって負傷した場合など、一般に通勤中に発生した災害は通勤によるものと認められます。

基本的に、通勤ルートからそれてしまったり(これを「逸脱」といいます)、通勤のルート上で通勤とは関係のない行為を行ったり(これを「中断」といいます)してしまうと、逸脱または中断の間やその後の移動中に事故にあったとしても、通勤災害とはなりません。

たとえば、仕事帰りに、通勤途中にある駅の近くの映画館で映画を見たり、友人と食事をしたり、そういった後でいつもの通勤経路に戻っても、通勤とはみなされないということです。

ただし、例外もあって、通勤の途中で近くのトイレを使用する場合や、乗換駅など通勤経路上のコンビニエンスストアなどで飲み物を購入する場合など、ささいな行為については認められます。これらは一例ですが、厚生労働省令で定める日常生活上必要な行為は、逸脱または中断の間を除き、合理的な経路に戻った後は再び通勤となります。

この日常生活上必要な行為とは、日用品の購入のほか、職業訓練や教育訓練を受ける行為、選挙の投票、病院の受診などが該当します。また、2017年1月からは、要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、並びに孫、祖父母、兄弟姉妹を継続的または反復的に行う介護についても、日常生活上必要な行為として認められるようになりました。

通勤の範囲(出所:厚生労働省「労災保険給付の概要」)※就業の場所から他の就業の場所への移動、赴任先住居と帰省先住居との間の移動も同様
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こうしたケースは通勤災害になるか