お笑いコンビの納言 実在の街「ディスる」漫才で飛躍

「池袋はバイオハザードみてぇな街だなぁ、おぇい」など、革ジャン姿の薄(すすき)が漫才中にタバコを吸うしぐさで街をディスる、“街ディス”で人気の男女コンビ・納言。細身なメガネ男子の安部がホストのキャッチやキャバ嬢のスカウトとして薄を口説き落とす漫才を得意とし、2019年は飛躍の年になった。

納言 左/安部紀克、1992年6月12日生まれ、埼玉県出身。右/薄幸、93年1月24日、千葉県出身。薄幸の芸名はビートたけしが名付けた。太田プロダクション所属

1年前の仕事量に比べて、「40倍? いや100倍くらい? 分からないくらい増えてバイトも辞めました」と薄は現在の多忙ぶりを語る。

『ネタパレ』(フジテレビ系)の常連であり、『有田ジェネレーション』(TBS系)のレギュラーメンバー入りも果たした。トークバラエティでは酒やタバコ好きを公言する薄のやさぐれぶりにスポットが当たることが多く、これまでに自宅訪問や母親との共演などでその素顔が掘り下げられてきた。2人とも、お笑い界では霜降り明星、EXIT、宮下草薙らと共に「第7世代」として注目されている。

お笑い好きのきっかけは「中学の修学旅行で関西に行ったとき、海原やすよともこさんを初めて見て『マジかっけー』と思って。他にもブラックマヨネーズさんとチュートリアルさんが関西のみ放送の番組をやっていて『こんな面白い番組があったんだ』って驚いた。そこからお笑いを意識し始めました」(薄)。

安部は「高校生のときに『M―1グランプリ2008』で敗者復活したオードリーさんを見て、初めてお笑いをカッコいいと思ったんです。ピンクのよく分からない人がゆっくり歩いてきて、めちゃめちゃ面白いというのが衝撃で。自分もやってみたいと思うようになりました」と語る。

結成は17年。ワタナベコメディスクールを卒業した薄と、東京アナウンス学院を卒業した安部がそれぞれ別のコンビで太田プロダクションに入り、先輩(薄)と後輩(安部)という関係だったが、互いにコンビが解散。ピン芸人だった薄に安部から声をかけた。薄は「嫌だったけど、断ったら恨まれるんじゃないかと思って『1回組んであげましょう』と。でも最近知ったんですけど、声をかけたのは私で7人目だったらしいです(笑)」と当時を振り返る。

転機が訪れたのは、結成から半年後のこと。それまでは安部が100%ネタを書いていたが、薄もネタ作りに加わり、漫才の中にタバコを吸うくだりを入れて“街ディス”を始めたところ、客席の反応が一変した。安部は「これはいけるかもと手応えを感じた」と語り、薄は「そこからネタを書く比率が変わって、気づいたら10対0で私が書くようになってた(笑)」と明かす。

理想のコンビ像は「やすともさん(海原やすよともこ)」と薄。安部は「千鳥さん、オードリーさんもそうだけど、2人で番組をやっている形が理想」と加える。これから出てみたい番組については『しゃべくり007』(日本テレビ系)を挙げた安部。これに同調した薄は「有田(哲平)さんの番組にもっと出たい」とラブコールを送った。

新年の抱負は「深夜番組もうれしいけど、ゴールデンの番組にもどんどん出て、次の段階に進みたい」(薄)「30分単発でもいいんで、僕らの冠番組ができたら」(安部)と前のめりに答えた。第7世代の波に乗って、お笑い界を盛り上げてくれそうだ。

(日経エンタテインメント!2月号の記事を再構成 文/遠藤敏文 写真/中村嘉昭)

[日経MJ2020年2月28日付]