メリハリつけるフィンランド流 働き方の原点は小学校『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』 堀内都喜子氏

堀内都喜子氏

日本では定時までにその日の業務があらかた片付いていても、同じチームの上司や先輩が席に着いている場合、帰りづらいムードになりがちだ。こうした無言の「圧力」は長時間勤務が減らない一因とも指摘される。しかし、フィンランドでは「周りの人に関係なく、自分のペースで切り上げる人が多い」という。自分勝手なわけではなく、時間が来たから引き上げるというごく単純な割り切りだ。ほとんどの働き手が共有している意識だから、周囲の視線を気にする必要はない。

背景には、フィンランドならではの職場文化がある。「役職者が上に立って仕切るというよりは、割とフラットな間柄。チームメートのような関係で、部下も上司に意見を言いやすい」という。働き手はそれぞれが自分の責任で業務を管理して、自主的に自分の役割をきっちりこなす。

オンとオフをきっちり分ける

対等の立場で意見を交わす習慣は、ビジネスのスピードアップにも一役買っている。日本では複数の役職者が稟議(りんぎ)書類に押印して、承認を重ねる手順が珍しくないが、フィンランドでは担当者の裁量権が大きい。部下に任せるという仕事の進め方が浸透しているため、仕事のペースも意思決定のスピードも速いのだ。

こうしたフィンランド流の働き方が広まった背景には、オンとオフをきっちり分けて考える割り切った思考があるという。「スポーツや学びなどやりたいことに時間を使って、自分らしく健全に生きたいというウェルビーイング意識がフィンランド人には強い。疲れやストレスをプライベートの時間でしっかり取り去って、仕事の時間では濃い密度で働くという切り替えがはっきりしている」(堀内氏)。だから、職場を離れれば、基本的にメールチェックはしない。たとえチェックしても、返信はしない。返信する義務もなければ、それを期待する風潮もない。睡眠も重視されていて、午後11時にベッドに入り、午前6~7時に起きるような生活パターンが多いそうだ。

仕事帰りに仲間と一杯というアフター5の過ごし方はフィンランドではなじみが薄い。「仕事が終われば、寄り道はせず職場からまっすぐ家に帰る。午後5時ごろに帰宅して、夕食は家族と食べるのが一般的な夕方の過ごし方」(堀内氏)。だが、フィンランド人が時間を持て余しているわけではない。子供の習い事につきあったり、趣味の集まりに顔を出したり。スポーツや勉強、読書、散歩などで寝る前の時間を過ごす人も少なくない。「週に3日はスポーツを楽しんでいるという統計もある」という。同国は、森や湖といった自然と触れやすい環境にも恵まれている。

生涯学習に熱心なのも、フィンランド人の傾向だ。「公的な支援を受けたカルチャーセンター的な学びの場があちこちにあり、公的補助のおかげで料金も割安。大学も幅広い世代に門戸を開いている。将来の転職を見据えて、新たな資格や知見を得ようと働きながら学ぶ人も多い」と、堀内氏は学びと仕事の関係を説明する。「転職にあたっては、学びを通じて能力を高め、次の働き先で専門技能を生かしたいと考える人も多い」(堀内氏)。日本では転職前の職場で培ったスキルや知見を生かして、似たような業界・職種に移ろうと試みるケースが一般的だが、フィンランドでは「あえて全然別の分野にチャレンジする人もかなりいる。働きながらの学びはその準備に役立っている」という。

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