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「超小型ルンバ」でエサ捕り サカサクラゲの驚嘆技

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

米フロリダの沿岸からミクロネシアまで、世界のマングローブ林の海では、クラゲに触れなくても、海に入るだけでクラゲに刺されてしまうかもしれない。新たな研究で、相手に触らずに攻撃するサカサクラゲのスゴ技が明らかになった。

どうしてそんなことが可能なのだろうか? 2020年2月13日付けで学術誌「Communications Biology」に発表された論文によると、サカサクラゲ(Cassiopea xamachana)が放つ粘液の中に、超小型の「毒入り手榴弾」が大量に含まれているという。

サカサクラゲの仲間は、べたつく粘液を大量に放出して、ブラインシュリンプ(アルテミアとも呼ばれる甲殻類)などの小さな獲物を捕らえる。一部の魚はその粘液で死ぬこともある。さらに、人がサカサクラゲのいる海を泳ぐだけで、露出した皮膚がかゆくなったり、ヒリヒリすることがある。クラゲに触らず、海に入るだけで起きるため、こうした現象は「刺し水」とも言われ、度を超すと有害であることも知られていた。

他のクラゲとは異なり、腹側を上にして海底で暮らすサカサクラゲは、100年以上にわたり研究の対象になってきた。だが、このクラゲの粘液がどのように機能するのかは、これまで解明されていなかった。

「粘液に何かあるはずだということは、わかっていました」と論文の筆頭著者である米スミソニアン国立自然史博物館の海洋生物学者シェリル・エイムズ氏は話す。

エイムズ氏らの研究チームが、高倍率の顕微鏡で粘液を観察したところ、何かが泳いでいるのを見つけ、「カシオソーム」と命名した。カシオソームは、極小のポップコーンのような見た目で、ゼリー状の物質で満たされた核の周りを多くの「刺胞」が覆っている。また、60~100本の繊毛があり、粘液の中を移動できる。

「それは自律していました」とエイムズ氏は話す。「自ら動き回り、私たちが与えたブラインシュリンプにぶつかると、触れて殺して次の獲物を探しに行くのです。小さなロボット掃除機ルンバのようでした」

最長10日間も自力で生存

当初、発見したものは寄生虫かもしれないと、研究者らは考えた。だが、DNA分析をはじめ、多くの新たな技術を用いて調査し、顕微鏡で3次元的に観察したところ、カシオソームの刺胞とゼリー状の物質はサカサクラゲのものと判明した。

研究対象を広げてさらに調査を進めると、他にも同じ目のクラゲ4種からカシオソームが見つかった。これにより、カシオソームは、1種のみが有する特異なものではなく、グループの中でおそらく一般的に見られるものだと示唆された。

さらに、多くのカシオソームの内部から、もう1つ驚くべきものが見つかった。藻類だ。

サカサクラゲはある種の藻類と共生しており、藻類が光合成により日光から作り出した栄養をもらっている。サカサクラゲがピンクや青、緑など色とりどりなのは、この藻類が原因だ。

「カシオソームの内部で、この藻類が何をしているのか、本当のところはわかっていません」と論文の共著者で、米カンザス大学で博士号を取得したクラゲ生物学者のアンナ・クロンペン氏は話す。

カシオソームは最長10日間も自力で生存し、移動できることがわかっている。この藻類が太陽電池のような役割を果たしているのかもしれない。「しかし、これまでの研究では、そこまでは確認できませんでした」とエイムズ氏は話す。

カシオソームには、ある程度の意志の力のようなものがあることは明らかだ。しかし、周囲の獲物を感知でき、それに向かって移動しているのか、それとも単純に刺胞を振り回しているだけなのかを解明するためには、さらなる研究が必要だ。

「獲物を探せるのかどうかは、わかっていません」とクロンペン氏は話す。「ですが、獲物を仕留められることは、間違いありません」

「驚くべき適応です」

米ハワイ大学マノア校の生化学者でクラゲの専門家でもあるエンジェル・ヤナギハラ氏にとって、今回の新発見は、「刺し水」に関する長年の疑問を解決するものだという。

「従来は、粘液それ自体が何らかのアレルギー物質である、あるいはアレルギー誘発性があると、とりあえず説明されてきました。ですが、信憑性があると私には思えませんでした」と同氏は話す。「なので、サカサクラゲが水中に厳密に何を出しているのか、これほど詳しく分析して説明した今回の論文に、非常に満足しています」。なお、同氏は今回の研究には関わっていない。

サカサクラゲは、遊泳するクラゲのグループに属すると伝統的に分類されてきたと、同氏は言う。だが奇妙にも、サカサクラゲ属は、遠縁であるイソギンチャクのように、海底に付着するよう進化した。

今回のカシオソームの発見により、付着性であるサカサクラゲの捕食方法の解明に一歩近づいた。「驚くべき適応です」とヤナギハラ氏は話す。

サカサクラゲがどうやって毒入りの粘液を活用しているのか、まだ詳しくはわからない。だが、手がかりはつかんだとエイムズ氏は語る。サカサクラゲにブラインシュリンプを与えると、その粘液は倒した大量のブラインシュリンプで「ピンクの雲」のようになる。

「その後24時間以内に、ピンクの雲は消滅します」と同氏は話す。

(文 JASON BITTEL、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年2月17日付]

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