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弟子3人、なぜか全員元お笑い芸人 談笑流にマッチ?

立川吉笑

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NIKKEI STYLE

落語家になる前のことだが、18歳から24歳くらいまで「お笑い」を生業にしたいと思い続けていた。漫才師への憧れから始まって、挫折や出会いを繰り返すうちにアニメーションやグラフを使ったライブパフォーマンスをするようになった。少しは自分たちの表現に関心を示してくださる方が増えてきたことが後押しになって上京した。たまに声がかかってメディアに出演しつつ、定期的なライブを中心に数年活動した後、色々な事情で続けられなくなった。それでも「お笑い」を続けたかった僕は、そのとき偶然知った「落語」に魅了された。たった一人で観客と対峙するスタイルに自分も挑戦したくなった。落語のインプットをひたすら増やしながらお金をためて、26歳で師匠に入門した。今から10年前の話。

「反省ノート」に書いていたこと

先日、実家に帰った。両親は僕が家を出た20歳ごろからずっと部屋をそのままにしておいてくれたけど、さすがに片付けようかと一念発起し大掃除した。懐かしいものがたくさん出てくる中で特にグッときたのはお笑いを始めた時に作った反省ノート。ネタ帳とは別にライブに出演した時の反省点や次への課題を自問自答した内容で、そこには「大きな声でしゃべる」「堂々と舞台に上がる」「目線を定める」というような、芸人として基本中の基本が書かれていた。そんなノートを書いていたことなんて、すっかり忘れていた。

楽器の巧拙と違って、お笑いはすごさが伝わりづらい。日常を過ごす学校や職場にいる面白い人とプロの芸人との差はわかりづらい。誰でもできると思われがちだし、現に僕もひたすらテレビでお笑いを見ていた学生時代、若手芸人のネタを見ては無責任に「全然面白くないなぁ、こいつら」などと思っていた。

それが、いざ自分で漫才をやってみると、プロの技術のすごさが身にしみる。学校の友達を笑わせるのと、観客を笑わせるのとでは次元が違う。ネタの内容とかセンスの前に、単純に立ち方や発声、目線、手の置き方などでレベルの違いを痛感させられた。自分の漫才を映像で見返すと、あまりの下手さに愕然(がくぜん)とする。それに比べて面白くないと思っていた芸人さんたちのうまさよ。そこから、何度も稽古し、ライブに出て、映像で確認することを繰り返して、少しずつ芸人としての立ち振る舞いが身についてくる。「顔がこわばっていると緊張感が客席に伝わるから笑顔を心がけよう」とか「ツッコミがワンパターンにならないようにメリハリをつけよう」とか、課題を見つけては修正していく毎日だったと、反省ノートを見て思い出した。

そのときふと気づいた。いま師匠・談笑には吉笑、笑二、談洲(だんす)という3人の弟子がいるけど、全員お笑い芸人として活動した過去を持つ。僕たち以外にも入門してきた若者が5人くらいいたけど、自分から辞めたり師匠に辞めさせられたり、結果的に残っているのは僕たち3人だけだ。これは偶然じゃないのかもしれない。

師匠の弟子育成方法は独特だ。「毎朝お宅へ伺って掃除をする」とか「旅公演へ向かわれる際は空港まで見送りに行く」とか、そういう典型的な修業っぽいことは求められない。「君たちは俺の世話をするために弟子になったんじゃなくて、良い落語家になるために弟子入りしたんだから、そんな時間があるなら落語の稽古をしたり、本を読んだり、良い落語ができるようになるために使った方がいい」といつも言われた。

そして「とにかく自分が演(や)りたい落語をどんどん演りな。それを楽しんでくれるお客様がたくさんできたら一番いい。でも、もし自分の落語をお客様が求めていないようだったら、辞めた方がいいし、こっちから辞めさせる。君が活躍できる世界は他にあるだろうし、無理にしがみついて落語をやることは君の人生にとっても、お客様にとっても、落語にとっても良くないことだから」とも。

談笑一門「2つのスキル」

落語界では前座修業中にウケないのは当然で、むしろウケない方が良いと思われている節すらある。落語の内容は二の次で、とにかく前座として楽屋を快適にする気働きだったり着物を早く畳めることだったり、太鼓が上手にたたけたりと、そういう能力が求められる。落語の技術は時間をかけて身につければいいと。談笑一門の場合はそこまで悠長な時間が流れていない。技術的には拙いとしても、お客様を楽しませようとする姿勢や素養は、前座だろうが持っている人は持っているから、それが無い場合は辞めた方がいいという考え方。

今年、談笑一門に新たな見習いが入門した。僕が入門した時の年齢と同じ26歳の彼は、これまでサラリーマンをしており、一度も人前でパフォーマンスをした経験はないという。これまで後輩ができると落語界の前座としての気遣いの仕方や太鼓のたたき方、着物の畳み方だけを教えてきた。だけど今度は、18歳の時の僕が自問自答して身につけてきた人前で表現する時の基本的なコツについても教えてあげたいと思っている。

談笑一門の前座は「落語界の前座スキル」だけでなく「お客様を楽しませるためのスキル」も身につけなくちゃいけないのだ。前者は自分を消す作業で後者は自分を出す作業といえる。慣れない環境で2つのスキルを同時に習得していく必要があるから大変なんだとようやく気づけた。

立川吉笑
 本名は人羅真樹(ひとら・まさき)。1984年6月27日生まれ、京都市出身。京都教育大学教育学部数学科教育専攻中退。2010年11月、立川談笑に入門。12年04月、二ツ目に昇進。軽妙かつ時にはシュールな創作落語を多数手掛ける。エッセー連載やテレビ・ラジオ出演などで多彩な才能を発揮。19年4月から月1回定例の「ひとり会」も始めた。著書に「現在落語論」(毎日新聞出版)。
立川談笑、らくご「虎の穴」 記事一覧はこちら

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