小沢コージ ソニーのEVよりトヨタの街がすごい

トヨタが街をつくると話題になった「WOVEN CITY」。小沢氏は注目のプロジェクトだいう理由は?
トヨタが街をつくると話題になった「WOVEN CITY」。小沢氏は注目のプロジェクトだいう理由は?

ソニーとトヨタ。日本を代表する企業2社が自動車に関するユニークな提案を行った。ソニー初のEVコンセプト「VISION-S」とトヨタのコネクテッド・シティー「WOVEN CITY」。発表された世界最大の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)でも実際に取材した小沢コージ氏が、両社のプロジェクトについて改めて解説する。

◇  ◇  ◇

ソニーとトヨタの新提案について、現地で取材をしていて、多くの人たちから強い関心を感じたのはソニーのEV(電気自動車)だった。今では撤退宣言してしまったが、掃除機で有名なダイソンしかり、世界的家電メーカーがEV産業に参入するストーリーは、非常に分かりやすくショッキングだ。しかもソニーはかつて携帯型ステレオのウォークマン、次世代ゲーム機のプレイステーション、愛玩ロボットのアイボなどを生み出したパイオニアメーカー。「ソニーが造るEV」と聞いただけでみんながワクワクするのも分かるし、帰国後も多くのコメントを求められた。

いわばスポーツ選手のイチローと同じで、「イチローが新球団をつくる!?」とか「オリンピックに出る!?」と聞けば、難しいと知りつつ、誰もが期待するようなものだろう。

一方、トヨタの街にはピンと来なかった業界人もいるらしく、小沢が現場で話した仏サプライヤー、ヴァレオの開発トップはトヨタのスマートシティー計画を伝えたところ、「本当なのか? 誰がお金を出すんだ。安倍(首相)か?」と素朴な疑問をぶつけてきたし、あるITジャーナリストは、「ふーん、つくれるものならつくってみれば」と懐疑的。自動車メーカーが街をつくるという話は、少々現実離れして見えるのかもしれない。

ソニー初のEVコンセプトカー「VISION-S」

ソニーEVはセンサーのショーケース

だが、小沢的にはソニーのVISION-SよりトヨタのWOVEN CITYのほうが、よりリアルで興味深いと感じた。なぜならVISION-Sは最初から関係者が量産化を否定しているし、実車を造ったのはオーストリアのマグナ・シュタイヤー。既にメルセデス・ベンツ「Gクラス」やBMW「X3」、トヨタ「GRスープラ」などを少量生産しており、すべてをソニーで開発したクルマとは言い難い部分がある。極端な話、資金とコンセプトさえあれば小沢でもクルマ生産を発注できるのかもしれない。

それより「センサーのショーケース」としてのEVと見たほうが正解で、事実Vision-Sにはソニー製センサーが33個も搭載され、中には同社お得意のイメージセンサーのほか、次世代センサーの「LiDAR(ライダー)」も含まれている。ライダーは今後、自動運転の進化のカギを握るデバイスとも言われ、あのキヤノンもパイオニアとライダーの共同開発を発表している。

ズバリ、次世代カーは「センサーの塊」になるのである。世界年産9000万台とも1億台とも言われる四輪車に、数十個もの高性能・高精度センサーがデフォルトで搭載されるとなればこれぞビッグビジネス! ソニーがクルマごと見本を造りたくなるのもよく分かる。

次のページ
トヨタがスマートシティーをつくる理由