私に判断能力がなくなる日 任意後見で認知症に備える終活見聞録(19)

長寿は喜ばしいが、それも健康であってこそ。中でも気になるのは、病気や認知症などによる判断能力の低下だろう。高齢になるほどそのリスクは高まる。自分や親の終活を考える際は認知症に備える対策も重要になる。有効な手段とされる任意後見契約など成年後見制度について知っておきたい。

ATMの操作に支障、先行き不安に

横浜市に住むAさんの母親(79)は東京都内で一人暮らしをしていたが、足腰が弱ってきたので老人ホームに入ることになった。母親は自分で銀行に行って生活費を下ろしていたが、ATMの画面が見えづらいのか操作が遅く、手元がおぼつかない。後ろからのぞかれたり、お金を取られたりするリスクがあるとAさんは思った。今のところ判断能力はしっかりしているが、先行きは不安だった。知り合いの弁護士に相談すると、成年後見制度のうちの任意後見契約を薦められた。選んだのは、母親が元気なうちは「財産管理契約」でAさんが財産管理を行い、母親が判断能力を失った際に「任意後見契約」に変わる「移行型」と呼ぶ2段階の契約だ。

成年後見制度について説明するパンフレットはたくさんある

Aさんと母親は弁護士と一緒に公証役場に行き、公正証書を作成した。公証人が一条一条内容を読み上げ、母親に確認を求めながら作った。任意後見契約については、母親の任意後見受任者がAさんであること、そして「不動産、動産などすべての財産の管理・保存・処分などに関する一切の事項」「金融機関、保険会社とのすべての取引に関する一切の事項」など9項目を代理権目録にまとめ、登記した。弁護士に払った報酬は2つの契約が10万円(税別)ずつ、これに公正証書作成の手数料約3万円が加算された。

それから3年。今も母親はしっかりしているので財産管理契約のままだ。Aさんのすることは、母親と銀行に行って月々のお金を下ろすこと、毎月のホームの利用料や訪問医の診察代・薬代が引き落とされるのでそれらを通帳に記帳すること、そして半年ごとに母親に対して財産の状況を報告すること。母親の通帳やカードはAさんが保管しているという。

年齢が上がるほど増える認知症有病率

介護や認知症は突然にやってくる。中でも近年増えているのが認知症だ。2012年に462万人だった患者数は25年には700万人を超えるという試算がある。高齢になるほど有病率が増えるのも特徴で、70代前半は4%程度と少ないが、80代前半になると20%を超え、80代後半になると40%、90代前半になると60%と右肩上がりに増えていく。

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