2020/2/28

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法定後見人、家族が手を挙げても…

法定後見人は裁判所が決める(写真はイメージ=PIXTA)

東京都内に住むBさんは「任意後見契約を早く結んでおけばよかった」と後悔した。4年前のことだ。83歳の父親が老人ホーム内で倒れ、食事や発声もできなくなってしまった。意識があってもそれを言葉にできないため、利用できるのは法定後見の方。自由度が高い任意後見と異なり、法定後見だと被後見人の財産は原則として本人のためにしか使えなくなる。下手をすると、これまで父親名義の口座から払っていた母親の住む家の家賃や光熱費、生活費も払えなくなる可能性もある。しかも、誰が法定後見人になるか決めるのは裁判所。家族がなりたいと申し出ても別の人物が指定されることもあるという。「自分を後見人に指定してくれるかどうか最後まで不安だった」とBさんは振り返る。

申請から2カ月後、Bさんは法定後見人に選ばれた。法定後見には判断能力の減退度合いによって「後見」「保佐」「補助」の3つがあるが、父親は最も重い「後見」だった。母親の生活費などについては、弁護士と相談して申請書に特記事項を加えていた。「母が居住する住居は父親名義の賃貸借契約を継続する必要がある。家賃以外にも、母の年金だけでは母の生活をまかなうことは困難」というような内容だ。これらも認められたので、母親の生活費や家賃も従来通り父親の口座から引き出せるようになった。法定後見で増えている信託の活用も求められなかった。

結局、父親は9カ月後に亡くなったので、後見人の務めは短期間で終わった。選任された監督人へ状況を報告したのは1回だけ。最後に財産がどれだけ残ったのかが分かる資料と後見人の終了届を裁判所に提出した。監督人には32万円の報酬を払った。「父親の法定後見人の期間は短かったが、次回もし制度を利用するなら任意後見契約を早めに結びたいと思う」とBさんは話す。

国は16年に「成年後見制度利用促進法」を定め、制度の活用を促している。昨年12月には金融庁が初めて任意後見制度の利用状況に関する調査結果を公表したが、それによれば、登記された約12万件の契約時の平均年齢は約80歳。「予想以上に高い」との指摘があったという。このうち18年10、11月に結ばれた任意後見契約(約1900件)を見ると、任意後見人を受任した人で最も多いのはやはり親族で、全体の7割を占めた。(土井誠司)