抜群のコスパに高級感ある仕上げ HPの新型PC3モデル
戸田覚の最新デジタル機器レビュー
今回は、日本HPから最近発売されたモバイルノートパソコン(PC)を3モデル紹介する。どれも、コストパフォーマンスに優れた製品で、タブレット端末的に利用したり、ペン(機種によってオプション)を使って手書きをしたりすることも可能だ。なお、価格はそれぞれ記事執筆時の最低金額を掲載しているが、構成によって大きく変わるので、同社のウェブページで確認してほしい。
最初に紹介するのは、世界最小[注]の13インチ回転式ノートパソコンの「HP Spectre x360 13」(13万2000円から)で、個人向けのプレミアムモデルとなっている。
[注]HPによると、2019年8月時点で2in1ラップトップカテゴリーとして定義されているコンバーティブルのノートパソコンの中で最小だとしている。
この小ささを実現したのは、ディスプレーの縁が細いからだ。11インチのモバイルノートとほぼ同様の大きさで、A4用紙より若干細長いと考えればいいだろう。もちろん、カバンへの収まりは素晴らしく、ビジネスバッグの中で場所を取らない。また、最近流行しているリュックに入れる際にもかさばらないのがいいところだ。
アルミボディーは高級感があるがやや重い
ボディーはアルミ製で、精密な削り出し加工によって作られている。手にしても硬さを感じるのが素晴らしく、頑丈だ。独特のカラーリングが特徴で、カドの部分がピンクゴールドに仕上げられている。なお、ゴールドの部分はヘアライン仕上げになっているので、派手すぎることはない。もちろん、デザインは好み次第で、目立たないほうがよければ後述の2モデルを選べばよいだろう。HP Spectre x360 13は、この派手なカラーが特徴の一つだ。
本体はかなり薄く、回転式とは思えないほどスリムだ。だが、その結果、拡張性がやや犠牲になっており、HDMI端子を搭載しないのが最大の欠点だ。
また、通常サイズのUSB端子は1基しか搭載しない。USB-C端子は2つ搭載し、Thunderbolt(サンダーボルト) 3に対応する。Thunderbolt対応機器が増えれば、高速なストレージを接続してファイルをやり取りしたり、ディスプレーの接続にも利用したりできる。
バッテリー駆動は、モデルによって10時間と22時間駆動が選べる。22時間は1.24キロ、10時間駆動は1.22キロだ。
高級なボディーに加え、LTEを内蔵し、Core i 7に16ギガバイト(GB)メモリー、1テラバイト(TB)のSSDを搭載するモデルでさえ、19万9800円で買えるコスパも魅力だ。
木貼りを使った格安な高級モデル
続いて、やはり13.3インチの回転式2in1の「HP ENVY x360 13」を紹介しよう。価格は、なんと6万9500円からとコスパが良い。このプライスにして、高級なプレミアムモデルと位置づけられているので、本体は金属製で質感も上々だ。
なお、今回紹介するのは、「Wood Edition」となっており、パームレストの部分に木貼りの仕上げが施されており、価格は8万3500円からとなっている。この木の部分は、塗装などではなく、本物の木(ウォールナット)を採用している。指で触れると、木目の凹凸を感じられるのが素晴らしい。
表面をコーティングしているので、汚れにもある程度は強い。長期間使うと木材ならではの色の変化が起こる可能性もあるが、それも味だ。タッチパッドの部分まで木目になっているのには驚かされるが、操作性は文句なしだ。
ディスプレーは回転式の2in1でタブレット式にも使える。本体はアルミ製で剛性感が高く、この価格が信じられないほど高級感がある。
派手めなデザインのモバイルノートがほしい方には魅力のモデルだ。
AMD製のCPUを採用してコストを抑える
CPUは、AMD製のRyzenを採用する。価格によってRyzen 3、5、7を選択可能だ。Wood Editionの最上位モデルは、Ryzen 7に16GBメモリー、512GBのSSDを採用して12万4800円となり、選択肢の多いモバイルノートの中でも、目立ってお買い得だ。
重量は、約1.28キロと少々重いのが欠点で、バッテリー駆動は14時間半となっている。本体サイズはA4用紙より微妙に大きな程度で、HP Spectre x360 13に比べると少し大振りだが、日々の持ち歩きでは十分にコンパクトだと感じるだろう。
薄型ボディーはすてきだが、HDMI端子は搭載しないので、外部ディスプレーの出力にはアダプターが必要になる。
キーボードは独自の配列で、Enterキーの右にもキーが並んでいるのが少々気になる。一般的なモバイルノートに慣れているとミスタイプにつながることがあるのだ。
予算が限られていても、性能の高いモバイルノートを選びたい方に推奨する。
日本向けに開発した軽量モバイルノート
「HP Elite Dragonfly」は、法人(ビジネス)向けモデルとして提供されているが、日本HPのウェブページからは個人でも普通に購入できる。価格は11万6800円からとなっている。
HPのモバイルノートはコスパに秀でているが、あまり軽くないモデルが多かった。重量よりも剛性感や壊れにくいことなどを重視していたためだ。とはいえ、実は1.2~1.3キロなら欧米では十分に軽い。日本のモバイルノートは700グラムを切る製品もあり、世界でも類を見ない軽量ノートパソコン大国となっているために、そう感じるのだ。
このHP Elite Dragonflyは、日本向けに開発された製品で、モデルによって1キロを切っている。本体は、マグネシウム合金を削り出して作られており、非常に美しく仕上げられている。国内メーカーのモバイルノートは、多くがマグネシウム合金の鋳造でパーツの合わせ目のラインが目立つ。対して、HP Elite Dragonflyはパーツの合わせ目も精細だ。また、独自のドラゴンフライブルーと呼ばれる紺色がすてきだ。
ただし、重量は、999グラムもしくは1.13キロと、国内メーカーに比べるとまだやや重い。
ビジネス向けらしい拡張性
薄型ボディーながら拡張性は高く、HDMI端子も搭載している。プレゼンの利用が多い人にとっては、重要な端子だ。また、USB-C端子も2つ搭載しており、付属のACアダプターもUSB-C接続となっている。
LTE搭載モデルも用意し、最新のWi-Fi 6に対応するので、将来の高速通信も利用可能だ。
日本向けを意識したモデルらしく、キーボードの配列も文句なし。Enterキーの右にはキーがなく、スッキリとしたデザインだ。
発売当初は、HPのパソコンとしては、やや価格的な魅力が薄かったが、記事執筆時点ではキャンペーンなどで随分手にしやすくなっている。仕事向けに購入するなら、LTE搭載モデルを選びたいところだ(記事執筆時点では、まだ選択不可能)。また、1.13キロと少し重くなるが、4セルの長時間バッテリー駆動モデルがおすすめ。仕事用の、手ごろな価格の軽量モバイルノートとして魅力的な一台だ。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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