腸活で認知機能や心の健康を守る 腸と脳の深い関係

バクテロイデスは日本人の大腸に多い「日和見菌(ひよりみきん)」といわれ、近年、この菌が少ないことが肥満や動脈硬化などと関連することを示唆する研究が複数報告されている。日和見菌とは、健康なときはおとなしくしているが、体が弱り病気状態になると悪さをすることもある菌のこと。

「同じバクテロイデスの中でも菌の種類によって腸でつくる物質(代謝物)や特徴は異なるようなので、一概にバクテロイデスさえ多ければいいといえるのかはまだわからない」(佐治副センター長)。

ほかに、認知症の約半数を占めるアルツハイマー型認知症の患者の脳の変異に、大腸菌をはじめとするグラム陰性菌という種類の菌とそれがつくる毒素が関係していそうだとする研究など[注1]、バクテロイデス以外の菌による影響を指摘する報告も多く、認知症ならではの腸内細菌叢の特徴が明らかになるまでには至っていない。

それでも、腸内細菌が認知機能に関与する可能性が高いとはいえそうだ。佐治副センター長による研究では、腸内細菌の構成以外に、認知症患者の腸内では炎症を引き起こす原因になるインドールなどの物質が増えており、更なる検証を行っているとのこと。少なくとも腸内環境の乱れが何らかのリスク要因になっているようだ。「食事で腸内細菌の構成は大きく変わる可能性があるので、どのような食事が認知症予防に効果があるか今後さらなる解析をおこなっていく」(佐治副センター長)。

[注1]  Neurology. 2016 Nov 29;87(22):2324-2332.

乳酸菌・ビフィズス菌の摂取で認知機能が改善

佐治副センター長は「食事と認知機能の関係に着目している」と話す。だが、腸内環境の改善が期待される食品類で認知機能にいい影響がある、というデータはあるのだろうか。

生きた乳酸菌やビフィズス菌を食品としてとることをプロバイオティクスという。このプロバイオティクスの摂取ではいくつかの研究報告がある。

アルツハイマー型認知症と腸内細菌の関連性はまだ明確な結論には至っていないが、アルツハイマー型認知症の患者60人を半分に分け、3種類の乳酸菌と1種類のビフィズス菌が入った牛乳を12週間飲む群と、普通の牛乳を飲む群を比較したイランの研究では、前者で認知機能を評価するMMSEというテストのスコアが有意に改善した。血中脂質の酸化度を示す指標(MDA)や体で起きている慢性的な炎症の強さを表す指標(高感度CRP)なども低下し、酸化度や炎症も改善していた[注2]

森永乳業がビフィズス菌で効果を調べた研究がある。軽度認知障害(MCI)の疑いがある人27人を対象に6か月間毎日、特定のビフィズス菌を摂取してもらい、認知機能への影響を調べた研究だ。このビフィズス菌の摂取期間が長くなるほどMMSEテストのスコア上昇が確認され、ビフィズス菌摂取による認知機能改善の可能性が示唆されたという。

軽度認知障害の疑いのある高齢者27人に、ビフィズス菌A1が100億個入ったカプセルを1日2個、24週間のんでもらい、摂取前、8、16、24週後にそれぞれ認知機能評価テストMMSEを受けてもらった。試験を完了した19人で検証したところ、経時的にMMSEスコアの上昇が確認された。(J Prev Alzheimers Dis. 2019;6(1):70-75)

この研究に先立ち行われたアルツハイマーモデルマウスを使った研究では、同じビフィズス菌の摂取で、空間認識力および、学習・記憶能力の低下が抑制され、記憶や学習に関わる海馬で遺伝子変異や炎症などが抑えられていた[注3]

「アルツハイマー型認知症の患者は、健康な人に比べ、腸内細菌の多様性が低く(細菌の種類が少ないこと)、ビフィズス菌の占有率が低いという報告がある。ビフィズス菌摂取による腸内環境の変化が、免疫反応を介して脳内での炎症を抑制したことで、認知機能の改善につながったのではないかと推察している」と森永乳業基礎研究所の清水金忠所長は推測する。

この話を踏まえると、腸内のビフィズス菌量が増えることも、認知機能の維持や改善につながる可能性を秘めていそうだ。ビフィズス菌の餌である食物繊維類を食べ続けたらビフィズス菌量が増えたというデータは多くあるので、食物繊維類をしっかり食べることも心掛けるようにしたい。

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