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腸活で認知機能や心の健康を守る 腸と脳の深い関係

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NIKKEI STYLE

脳と腸が互いの健康状態に関わっていることがわかってきた。免疫細胞や神経回路を通して影響を与え合っているのだ。腸に良いとされる乳酸菌やビフィズス菌をとることで認知機能が改善されたという報告や、食物繊維を多くとる人たちはうつになるリスクが低い、といった報告も相次いでいる。「脳腸相関」の最前線と、脳や心の健康維持につながる腸活方法を見ていこう。

脳と腸の関係でよく知られるのは、ストレスに伴う急な下痢症状や便秘だろう。腸の動きには自律神経が大きく関わっていて、精神的ストレスにさらされたり、激しい運動を行ったりすることで交感神経が優位になると胃腸の動きは低下する。そのため、胃が荒れ下痢を引き起こしたり、逆に腸の動きがにぶることで便秘になったりするわけだ。

近年、腸の機能研究が進み、「脳腸相関」を解明する研究が続出している。最近は脳やメンタルの状態が腸に影響するだけでなく、どんな腸内細菌が多いかといった腸内細菌叢(そう)の質がうつ、自閉症、ストレスへの反応などに関係するらしいとする報告が増えてきた。これを受けて、腸内環境を整え、維持することが「脳の健康」に役立つのではという期待が高まっている。

まず、認知機能と腸内環境に関する最新動向を見てみよう。

認知症が腸内細菌の組成に関連も

長期にわたり認知症の有病率調査を行っている福岡県久山町研究のデータから推計した日本における65歳以上の認知症有病者数は2020年で約600万~630万人とされている。これは高齢者の6人に1人の割合だ。患者数は今後さらに増えると考えられている(平成29年版高齢社会白書・内閣府より)。

注目を集めたのが、19年2月に国立長寿医療研究センターの佐治直樹もの忘れセンター副センター長らが発表した、認知症と腸内細菌の関連についての報告だ。同センターのもの忘れ外来を受診した認知症および非認知症患者計127人から便を採取し、腸内細菌を調べたところ、両者には腸内細菌叢に違いが見られたという。認知症患者ではバクテロイデスという種類の腸内細菌が少ない人が明らかに多かったというのだ。

バクテロイデスは日本人の大腸に多い「日和見菌(ひよりみきん)」といわれ、近年、この菌が少ないことが肥満や動脈硬化などと関連することを示唆する研究が複数報告されている。日和見菌とは、健康なときはおとなしくしているが、体が弱り病気状態になると悪さをすることもある菌のこと。

「同じバクテロイデスの中でも菌の種類によって腸でつくる物質(代謝物)や特徴は異なるようなので、一概にバクテロイデスさえ多ければいいといえるのかはまだわからない」(佐治副センター長)。

ほかに、認知症の約半数を占めるアルツハイマー型認知症の患者の脳の変異に、大腸菌をはじめとするグラム陰性菌という種類の菌とそれがつくる毒素が関係していそうだとする研究など[注1]、バクテロイデス以外の菌による影響を指摘する報告も多く、認知症ならではの腸内細菌叢の特徴が明らかになるまでには至っていない。

それでも、腸内細菌が認知機能に関与する可能性が高いとはいえそうだ。佐治副センター長による研究では、腸内細菌の構成以外に、認知症患者の腸内では炎症を引き起こす原因になるインドールなどの物質が増えており、更なる検証を行っているとのこと。少なくとも腸内環境の乱れが何らかのリスク要因になっているようだ。「食事で腸内細菌の構成は大きく変わる可能性があるので、どのような食事が認知症予防に効果があるか今後さらなる解析をおこなっていく」(佐治副センター長)。

[注1]  Neurology. 2016 Nov 29;87(22):2324-2332.

乳酸菌・ビフィズス菌の摂取で認知機能が改善

佐治副センター長は「食事と認知機能の関係に着目している」と話す。だが、腸内環境の改善が期待される食品類で認知機能にいい影響がある、というデータはあるのだろうか。

生きた乳酸菌やビフィズス菌を食品としてとることをプロバイオティクスという。このプロバイオティクスの摂取ではいくつかの研究報告がある。

アルツハイマー型認知症と腸内細菌の関連性はまだ明確な結論には至っていないが、アルツハイマー型認知症の患者60人を半分に分け、3種類の乳酸菌と1種類のビフィズス菌が入った牛乳を12週間飲む群と、普通の牛乳を飲む群を比較したイランの研究では、前者で認知機能を評価するMMSEというテストのスコアが有意に改善した。血中脂質の酸化度を示す指標(MDA)や体で起きている慢性的な炎症の強さを表す指標(高感度CRP)なども低下し、酸化度や炎症も改善していた[注2]

森永乳業がビフィズス菌で効果を調べた研究がある。軽度認知障害(MCI)の疑いがある人27人を対象に6か月間毎日、特定のビフィズス菌を摂取してもらい、認知機能への影響を調べた研究だ。このビフィズス菌の摂取期間が長くなるほどMMSEテストのスコア上昇が確認され、ビフィズス菌摂取による認知機能改善の可能性が示唆されたという。

この研究に先立ち行われたアルツハイマーモデルマウスを使った研究では、同じビフィズス菌の摂取で、空間認識力および、学習・記憶能力の低下が抑制され、記憶や学習に関わる海馬で遺伝子変異や炎症などが抑えられていた[注3]

「アルツハイマー型認知症の患者は、健康な人に比べ、腸内細菌の多様性が低く(細菌の種類が少ないこと)、ビフィズス菌の占有率が低いという報告がある。ビフィズス菌摂取による腸内環境の変化が、免疫反応を介して脳内での炎症を抑制したことで、認知機能の改善につながったのではないかと推察している」と森永乳業基礎研究所の清水金忠所長は推測する。

この話を踏まえると、腸内のビフィズス菌量が増えることも、認知機能の維持や改善につながる可能性を秘めていそうだ。ビフィズス菌の餌である食物繊維類を食べ続けたらビフィズス菌量が増えたというデータは多くあるので、食物繊維類をしっかり食べることも心掛けるようにしたい。

国立長寿医療研究センターが実施した8年にわたる食事と認知機能の調査でも、ビフィズス菌や食物繊維の摂取により腸内で産生される短鎖脂肪酸という物質が増えると、認知機能低下リスクが抑制されると報告されている[注4]

また、動物試験ではあるが、高齢のマウスの餌を高食物繊維食にすると、アルツハイマー型認知症と関連が指摘される海馬での炎症が緩和されるという報告がある。この試験では、高齢での食物繊維不足が、腸の機能低下を介して脳に影響を与える可能性が示唆されている[注5]。人での研究が待たれる。

[注2]  Front Aging Neurosci. 2016 Nov 10;8:256. eCollection 2016.

[注3]  Sci Rep. 2017 Oct 18;7(1):13510.

[注4] 日本栄養・食糧学会誌 68: 101-111,2015

[注5]  Front Immunol. 2018 Aug 14;9:1832

うつ・自閉症と腸内環境の関係

認知症だけでなく、うつ病や自閉症といった精神疾患と腸内環境の関係についての研究も進んでいる。

国立精神・神経医療研究センターが43人のうつ病患者と57人の健常者の腸内細菌叢を比較したところ、患者群ではビフィズス菌量が健康者より有意に少なく、乳酸菌も少ない傾向が見られたという[注6]

研究チームはうつ病の発生には、末梢(まっしょう)神経や中枢神経で発生する慢性的な炎症が関与する場合があると指摘しており、この炎症がビフィズス菌といった有用菌の減少や腸内細菌叢の乱れに起因する可能性もあるとしている。

一方、発達障害の一つである自閉症スペクトラム障害(ASD)と腸内細菌の関係も、世界で注目されている研究分野のひとつ。米アリゾナ州立大学の調査では、自閉症児の腸内細菌は非常に多様性が低く、腸がもろい傾向にあること、胃腸障害があるほどよりASD症状が重いことがわかった。そこで、同大学研究チームは、ASDの児童18人に抗生物質や健康な人の腸内細菌移植を組み合わせて腸内細菌叢を変化させる治療を行い、その後2年間追跡。その結果、2年間で腸内細菌叢の変化に伴う症状の大幅な改善が見られたと報告した。

試験前に被験者の83%が重度の症状だったが、2年後には重度は17%に減り腸内細菌叢では多様性が増し、ビフィズス菌や、腸を守る上皮細胞の栄養となる酪酸という物質をつくる菌(プレボテラ菌)の増加が顕著だったという。

健康な人の腸内細菌移植といった医療はまだその安全性や実効性が評価中の方法で、私たちが普通に受ける段階には至っていないが、食物繊維やビフィズス菌、乳酸菌の摂取を心がけることは可能だ。実際に、こうした食品の摂取でうつや自閉症が改善したという報告はいくつもある。

例えば、米国の成人1万6000人以上の食生活とうつ症状の関係を調べた研究では、食物繊維を多くとっているほどうつ症状になるリスクが低いという結果が出ている。また、台湾の研究では、7~15歳の自閉症の子供71人に毎日乳酸菌を摂取させたところ、イライラや挑発行動が減り、ADHD(注意欠陥多動症)の中核症状評価テストで、スコアの明らかな改善がみられたという報告がある[注7]。まずは、認知機能や心の健康のためにも、腸にいい食生活を送ってみよう。

[注6] J Affect Disord. 2016 Sep 15;202:254-7.

[注7] Nutrition. 2018 Oct;54:48-53.

  Nutrients. 2019 Apr 11;11(4).

(ライター 堀田恵美)

佐治直樹副センター長
国立長寿医療研究センター もの忘れセンター

岐阜大学医学部卒業、岐阜大学医学部附属病院、兵庫県立姫路循環器病センター(神経内科医長)、川崎医科大学脳卒中医学教室(特任講師・特任准教授)などを経て、2015年から現職。脳血管障害と認知症の共通リスク因子が専門。腸内細菌以外にも難聴や不整脈と認知症の関連についても研究。
清水金忠所長
森永乳業 基礎研究所

名古屋大学大学院農学研究科後期課程修了。理化学研究所での研究職を経て、森永乳業へ入社。2015年より現職。ビフィズス菌や乳酸菌の保健機能、製造技術に関する研究を行う。農学博士。

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