皮ごと食べられるレモン スイーツにまろやかな酸味

マイヤーレモンはレモンとオレンジの自然交雑で生まれたとされる=PIXTA
マイヤーレモンはレモンとオレンジの自然交雑で生まれたとされる=PIXTA

春が近づき、水気の多いかんきつ類がおいしく感じられる季節になってきた。レモンの中でも、皮まで食べられる「マイヤーレモン」という品種をスーパーの棚で見かけることも増えてきた。普通のレモンより果汁が多く、まろやかな酸味が特徴だ。菓子店や飲食店も食材として取り入れている。渋みも少ないので、家庭でのお菓子作りや料理にも使いやすそうだ。

マイヤーレモンは、メイヤーレモンとも呼ばれ、レモンとオレンジの自然交雑で生まれたとされる。果皮は濃い黄色からオレンジ色で、普通のレモンより一回り大きく形も少し丸みがある。一見するとオレンジに見えるものもあるレモンだ。酸味が少なく糖度は高めで、皮の苦味も少ない。香りがよく果汁をたっぷり含んでいる。

普通のレモンとの大きな違いは、皮ごと食べられる点。輸入レモンは海外から輸入する際にカビが生えたり腐ったりするのを防ぐため防かび剤が使われており、皮ごと使うには不安感が残る。一方、マイヤーレモンは輸入品も防かび剤不使用なものも多い。

果汁はもちろん、皮ごとでも利用できるため、季節の食材として菓子店は注目する。名古屋市のパティスリー「カフェタナカ」もその一つ。秋から冬にかけて出回る三重県産のマイヤーレモンを、この冬から定番の焼き菓子や季節のタルトに取り入れた。「国産のかんきつ類で良いものを探していた」というグランシェフの田中千尋さん。「低農薬栽培されており体に優しい。甘みが強く、普通のレモンより酸味はまろやかで香りもいい。皮まで使えて無駄もない」と高く評価する。

カフェタナカの「タルト・マイヤーレモン」と「バーチ・ディ・ダーマ」(2月、名古屋市)

お菓子を紹介してもらった。ひとつは丸みのある小さなクッキーでチョコをサンドした「バーチ・ディ・ダーマ」(1箱6個入り、1350円)。その形から貴婦人の口づけという意味を持つイタリアの伝統菓子だ。マイヤーレモンをクッキー生地に練り込みバタークッキーとホワイトチョコレートをサンドした。口に入れるとクッキーがほろりとくずれ、チョコの甘さと、レモンの爽やかな酸味が広がる。今年、バレンタイン向けに発売したところ店舗や百貨店などで計2000箱を売り上げた。

もうひとつは季節のタルト「タルト・マイヤーレモン」(540円)。ケーキの生地にマイヤーレモンの果汁をたっぷり使っている。濃厚だがまろやかな酸っぱさがさわやかな一品だ。カフェタナカでは春から夏の商品としてマイヤーレモンを使ったゼリーも試作中だ。

まろやかな酸味の果汁は肉のおいしさを引き立てる(2月、横浜市内の『焼肉おくう』)

マイヤーレモンは焼肉店にも広がっている。横浜市などに店を展開する「焼肉おくう」のGEMS新横浜店では「上タン塩」(1540円)など塩味で食べる肉用のタレに、マイヤーレモン100%果汁を提供する。以前は濃縮果汁にレモン果汁をブレンドして作っていたレモン汁だが、「マイヤーレモンの果汁は角のない酸っぱさで、肉のうまみを引き立てる」(おくうの飛田野一聡本部長)。来店客にも好評で、小瓶で店頭販売する果汁の売れ行きも好調という。

自宅で手軽に使えるレシピはないだろうか。クックパッドアンバサダーのち~sunさんに聞いてみた。教えてくれたのは「マイヤーレモンのハチミツ漬け●(ハートマーク)」だ。

消毒した瓶にスライスしたマイヤーレモンを、はちみつを垂らしながら1枚ずつ漬けていき、最後に上からはちみつを注ぐだけ、と作り方はいたって簡単。「はちみつは高価な食材ですが、たっぷり入れてしっかり漬けるのがコツ」(ち~sunさん)。冷蔵庫の中で3日ほど漬け込めば完成。疲れた体が癒やせそうだ。マイヤーレモンは普通のレモンより水分が多く傷みやすいので1週間くらいで食べきった方がよい、とのこと。

渋みが少なく皮まで食べられる、ち~sunさんが考案したマイヤーレモンのハチミツ漬け●(ハートマーク)

はちみつ漬けの応用レシピとして挙げてくれたのは、「蜂蜜レモンとチーズのオープンサンド●(ハートマーク)」。スライスしたパンにクリームチーズをたっぷり塗り、はちみつ漬けのマイヤーレモンをのせた手軽なスイーツだ。レモンの苦味がクリームチーズでマイルドになる。このほか、オレンジの風味も強いマイヤーレモンは、肉料理のソースやサラダにも向くという。サラダには「皮も薄く渋みが少ないので、小さくカットして具に使うのもおすすめ。使い勝手のいい食材です」と話す。

マイヤーレモンは大手スーパーにも並ぶようになり、レシピを知りたい人は増えている。クックパッドの検索データ分析サービス「たべみる」によると、「マイヤーレモン」の2月中旬の検索頻度は、前年同期より4割増。3年前の同じ時期と比べると2.5倍に増えている。

冬場には三重県などの国産、初夏から秋にかけてはニュージーランド産が出回る。同国北島のギズボーンにある農園カイマタではマイヤーレモン1万本を低農薬で栽培しており、毎年夏が近づくと東京の青果市場に新鮮なマイヤーレモンを送り届ける。「農薬は最低限に抑えているので皮まで食べられて安心。皮を削って料理に入れるのもおすすめです」と、同農園を管理するラッセル・グレッグさんは話す。

低農薬で安全に作っているとラッセルさんは話す(19年、ニュージーランド・ギズボーン)

日本の店頭店頭は1個100円程度と、店によっては国産より少し安いか同じくらい。川崎市のスーパーで青果を担当する桜井慎一さんの自宅でのお気に入りの使い方は「皮ごとすりおろしてしょうゆに入れ、ポン酢の代わりにする」こと。「皮まで安心して食べられるので、スライスしたマイヤーレモンをたっぷり入れたレモン鍋も楽しんでます」(桜井さん)

冬の寒さが少しずつ遠のき、春の足音が近づくこの時期。料理やお菓子にさわやかなマイヤーレモンを取り入れてみてはいかがだろう。

(杉山麻衣子)

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