どんな学生か面接でわかる? 悩める採用担当の本音第2回・企業の採用担当覆面座談会(上)

2020/2/28
グラフィックレコーディングは園木優美子さん(武蔵野大学工学部環境システム学科4年)が作成
就職活動の経験者なら思ったことがあるかもしれない。就活って化かし合いだな、と。お互いに目に見えない仮面をかぶった会話に終始し、企業の採用担当者が本当はどう思っていたのか最後までわからなかったなんてことも少なくない。いったい本音はどうなのか。匿名による採用担当者らの「覆面座談会」で、就活生の素朴な疑問について語り合う。

2020年1月末、都内で開いた覆面座談会。前半のテーマは、ずばり「どんな人が採用されるのか」。21年の卒業を予定する就活生向けの広報解禁を3月に控え、企業側も学生も準備に余念がない時期。業界研究や自己分析を突き詰めながらも、学生がやっぱり気になるのは「大企業に内定する学生って、結局どんな人」ということではないだろうか。3人の採用担当者に本音を語ってもらった。

【出席者】
Aさん 金融機関の30代男性。営業を経て人事部門に10年在籍。
Bさん 素材メーカーの40代男性。営業などを経て人事部門に13年。
Cさん 食品メーカーの30代女性。研究開発を経て、2年前から採用担当。
司会はU22編集長の安田亜紀代。

――就活でよく「優秀な人」という言葉を聞きますが、それってどんな人ですか?

Bさん 人事の間では、だいたい「地頭(じあたま)が良い」という意味ですね。ただ人によって微妙に解釈が違う気がします。論理的な思考力だったり、答えがない状況でも自分の経験をもとに考えられることだったり。

Cさん 地頭って難しいですね。例えばエントリーシート(ES)は、すごく正しい日本語でロジカルに書かれてあっても、会いたいとは全然思えなかったり、人となりがよくわからなかったりということがあるんです。本の感覚に近くて、フォントとか文体によって読みたくないものってあるじゃないですか。

――結局は主観ってことでしょうか。

Cさん はい。ですから、(複数の人間の主観による)複眼で見ようとしていて、面接官が1人でも「また会いたい」と言う学生だったら、次の面接に段階を進めます。

Aさん 会社として、こんな人材を採ろうという要件は定めていません。好奇心と主体性、サービス精神など、僕が勝手に言っていることはあるのですが。

具体的な人材要件「なくていい」

――会社として決めていないんですか。

Aさん 会社の上の方からは、ちゃんと採用したい人物像を決めた方がいいんじゃないかと言われるのですが、そう思う部分と、やらなくてもいいと思う部分が半々です。

Bさん 当社には過去につくった人材要件がありますが、中身は抽象的なものしかないです。まあ、自分が覚えていないぐらいです(笑)。もっと具体化した方がいいという社内の声もありますが、仮に「チャレンジングな人」について具体的な要件をつくっても現実問題として面接官が定量的に測れるものじゃない気がします。

Cさん 個人的には「ほしい人材」を定義するのは絶対反対派です。要件をつくると「満たない」「欠けている」「惜しい」と足りないことばかり指摘するようになって、ステキな部分を見落としてしまう。「ここがいいね」「ここがステキ」「ここが生かせる」、そういうことを積み上げていけばいいと思うんです。

――採用したい人物像を明確に決めないのは意外ですね。とは言え、採用・不採用はあるわけで、その境目は気になります。逆にこういう人は不採用という考えはありませんか。

Aさん これも好みですが、素直さに欠けるのはあまり好きじゃないかもしれません。フィーリングだと思いますけどね。

Bさん 他人の話を聞けない人、自分の話しかしない人は嫌だなと思います。うちの面接は聞くだけじゃなくて、なるべく学生からも質問してもらうんですね。どんな視点を持っているのか、どういうふうにして人の話を聞くのかをみています。そうすると一緒に働く姿がイメージしやすくなるんです。

Cさん 面接の場をコミュニケーションの場と捉えてもらえない学生の人柄は結局わからない。例えば何が好きなのかを聞いているだけなのに、頑張ったことを話されてしまうとか。

Aさん それって「あるある」です。テープレコーダーのように話し始められると、こちらも急速に興味を失ってしまう。失礼ですけど、その部分はほとんど聞かずに、どう人柄がわかるようなことを聞き出そうかと考え始めてしまいます。

――テープレコーダーのように話す人は不採用ということですか。

Aさん そういう人は「準備をしっかりして、準備したものをしっかり出したい人」なんだと思うようにしています。それだけで終わると、それ以上は判断しようがないのですが、例えば帰り際にエレベーターホールで何気ない会話をしてみると、本来のキャラクターが顔を出すケースがあります。そうすると、別の面接官に見てもらう機会をつくってもいいかなと思い直すんですね。

Bさん こちらが「それじゃないんだよな」という表情をしていると、たまにハッと気づく子がいるんですよね。「すみません、一方的に話しすぎました」と。そうすると評価が変わることもあります。無口なタイプの場合は、帰り際や待合室で少し話をして、そのときの雰囲気をメモしておくことはあります。

Cさん 面接の時間そのものを大事にしてくれるかどうか。流ちょうに答える必要はなくて「質問がわからなかったのでもう一度お願いします」「それは考えたことがないので少し待ってもらえますか」と言ったっていいんです。そういう姿勢が一緒に仕事をしていく上で大事かなと。

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面接官も問われている