膝つき合わせて語れ トップの仕事は切り込み役にあり島津製作所社長 上田輝久氏(下)

「ある意味、部下を細かく管理する『マイクロマネジメント』かもしれません。社長自らが鬼にならないといけない場合もあります。例えば、新たな事業を立ち上げようとして、難しい局面に突き当たると、現場は『問題が解決できない』『このまま進めるのは困難』などという雰囲気に包まれることがあります。こうなると私の出番です。諦めずにどうにか成功させようと一緒になって考えます。ただ、『社長がいうから仕方なくやる』ではいけません。説得ではなく、納得してもらい、一緒にやっていく。それが大事です」

トップの役割は新たな分野に切り込むこと

――企業のトップとして成長のための役割は何だと考えますか。

「自らの判断で新たな分野に切り込んでいくことです。島津は創業145周年を迎える歴史が長い会社です。従来と同じやり方にすがっていてはリスクとなります。新分野を開拓して目標達成のためのシナリオをつくることが重要です」

「シナリオ策定の重要性は液体クロマトグラフの事業部長を務めていたときに痛感しました。主力商品なので、売り上げ目標について経営戦略部門からいろいろと注文されます。『もっと数字を積んでほしい』と言われ、『無理だ』の繰り返し。『こんな時間があるなら、その目標を達成するシナリオをつくる方が賢いぞ』と思いました」

――どうやってシナリオを練るのですか。

「すぐにメモをとる癖があって、たまった7000件ものメモを活用しています。1990年代から電子手帳を使ってメモをとっていました。テーマごとに分類して、新聞の要約や画像を貼り付けて保存しています。メモを見返すと、書いたときと見方が異なっていることがあります。重要だと考えるポイントが変わっているわけで、それはそれで興味深いですね」

「すぐにメモをとる癖があります」と語り、1990年代から電子手帳を愛用する。現在はパソコンとスマートフォン、タブレット端末などを同期して利用している

「私の座右の銘は『寧静致遠(ねいせいちえん)』、何事もこつこつ取り組むことが重要だという意味です。ただ、シナリオをつくるためには、こつこつ集めた断片的な情報だけではいけません。大きな絵図を描く必要があります」

「2017年から取り組む中期経営計画で掲げた新事業『アドバンスト・ヘルスケア』もそのひとつです。質量分析計などの技術と医療向け画像技術の融合により、認知症やがんの発見など、新たな診断や治療法の確立を目指したもので、一見すると異なるテーマをつなげることで生み出しました」

「新たなコンセプトをつくることが社長の役割です。ただ具体化は難しい。私がテーマを設定して、はじめの一歩をスタートしましたが、次の2歩、3歩が出てこない。私が言った範囲内でしか動きません。なかなか難しいものもあります」

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