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花粉症の人は接触感染に注意を

――私たち個人が感染から身を守り、感染拡大を防ぐためにはどんなことが大切ですか。

個人レベルでできることは、風邪やインフルエンザと同様に、日常的な予防をより徹底していくことに尽きます。

新型コロナウイルスの感染ルートは、咳(せき)やくしゃみによる「飛沫感染」と、ウイルスの付いたものに触れた手で目・鼻・口の粘膜に触れる「接触感染」が中心です。そして、この時期に重要となるのが、咳・倦怠(けんたい)感・発熱などの症状のある人が行う予防行動。手洗い、マスク(症状のある人には極めて有効)、そして自宅療養です。

ですから、咳やくしゃみの症状があるときはマスクをして、手や指をこまめにしっかりと洗うことが大切です。また、むやみに人混みに出かけることも避けてください。特に、咳・倦怠感・発熱など風邪の症状があるときには、なるべく外出を控えて、できれば仕事も休み、人と接触しないようにする。こうした小さな予防行動の積み重ねが、自身や身近な人の身を守り、感染拡大の予防にもつながります。

花粉症で目のかゆみなどがある人は、ウイルスの付いた手で目をこすらないよう注意したい。写真はイメージ=(c) Antonio Guillem -123RF

目に見えないウイルスは至るところに付着している可能性があり、数日にわたって感染力が持続することもあります。その場所に触れた手で目・鼻・口に触れれば、感染が成立しますから、こまめに手を洗うことが重要になります。忘れがちなのは、マスクを外した後の手洗いです。せっかくマスクをしていても、外すときに触れた手で目・鼻・口を触ってしまえば意味がなくなってしまいますから、必ず手洗いをするように意識してください。

また、今の時期は花粉症による症状で、ウイルスの付いた手で無意識に目や鼻に触れてしまうケースも多くなります。花粉症のある人はその治療をするとともに、マスクやメガネをかけておくことでも、接触感染の予防になります。

感染の疑いがあれば「相談・受診の目安」を参考に

――新型コロナウイルス感染症の症状は、風邪と区別がつかないことが多いということですが、具体的にはどのような症状が見られますか? また、インフルエンザの症状との違いはあるでしょうか。

軽症では、咳や鼻水、37.5度程度の発熱が見られます。これらは風邪と見分けがつきにくいですし、先ほどもお話ししたように、花粉症の鼻炎症状にも似ています。インフルエンザの場合は、急に高熱が出たり、関節痛や筋肉痛が伴ったりするので、新型コロナウイルス感染症との区別がしやすいものの、軽症の場合もあるので、いずれにしても正確に判断するのは難しいでしょう。

――では、風邪と同様の症状があり、新型コロナウイルスの感染に不安を感じた場合には、何を基準にして医療機関の受診を検討すればいいでしょうか。

政府が2月17日に発表した「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」[注1]は、下記のようになっています。項目に当てはまる人はまず、「新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター」[注2]に連絡をし、センターに勧められた医療機関を受診するようにします。個人の判断で複数の医療機関を受診するのは、感染拡大のリスクがあるので、避けることが大切です。

「帰国者・接触者相談センター」は、各都道府県に設置されていますので、厚生労働省のホームページや各自治体の窓口などで確認してください。なお、相談・受診の目安に該当すれば、帰国者や接触者でなくても相談が可能です。

新型コロナウイルスの感染拡大がいつまで続くのか、または収束していくのかは、現時点では専門家でも予測しづらいのが現状です。だからこそ、行政、医療機関、一般の人たちが協力して、できる対策を徹底していくことが重要です。

【「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」のポイント】

●相談・受診の前に心がけることは

・発熱などの風邪症状が見られるときは、学校や会社を休み外出を控える

・発熱などの風邪症状が見られたら、毎日、体温を測定して記録しておく

●「新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター」に相談する目安は

・風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている人

・解熱剤を飲み続けなければならない人

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある人

●早めの相談が勧められる人は

以下の人は重症化しやすいため、上記の目安の症状が2日程度続いたら相談を

・高齢者
・糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)の基礎疾患がある人
・透析を受けている人
・免疫抑制剤や抗がん剤を使用している人
*妊婦も念のために、重症化しやすい人と同様に早めに相談を

[注1]「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000596905.pdf

[注2]各都道府県の「新型コロナウイルスに関する帰国者・接触者相談センター」まとめページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html?fbclid=IwAR0dT5CCqctP-e1s8BlfEONY0FzYZO7Q4JEZ2zzsEnP-hLkc77An-yaTyFo

(ライター 田村知子)

今村顕史さん
がん・感染症センター東京都立駒込病院感染症科部長。1992年浜松医科大学卒業。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。自身のFacebookページ「あれどこ感染症」でも、その時々の流行感染症などの情報を公開中。東京都立駒込病院感染症科ホームページ(http://www.cick.jp/kansen/)。

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