ペンギンがいるのは? 南極と北極の動物、なぜ違う

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/1
ナショナルジオグラフィック日本版

南極海の一部、ロス海に面したワシントン岬を行進するコウテイペンギン(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

どこまでも広がる氷。いつまでも続く昼または夜。極地は北も南も同じに見えるかもしれない。しかし実際は、全く異なる世界だ。

南極は隔絶された大陸で、周囲の海は生命に満ちあふれている。一方、北極の真ん中にあるのは海か氷だけで、人口の多いヨーロッパや北米といった大陸に囲まれている。海氷が季節とともに大きく変動するのも北極の特徴だ。

それぞれのユニークな特性は、両極の野生生物にも反映されている。絶えず変化する氷の上で捕食、繁殖するよう進化を遂げたホッキョクグマのような種もいれば、ワモンアザラシとウェッデルアザラシなど、近縁なのにそれぞれの地域のみに適応している種もいる。そして、1年のうちに地球の両端で暮らす驚くべき動物もいる。最も長距離の渡りをする鳥のキョクアジサシだ。

極地の動物に関しては、誤解や都市伝説がいくつも存在する。そこで、彼らが本当はどこで暮らしているかを明確にしておこう。

北極にペンギンはいない

ペンギンは北極で暮らしているという思い込みは、最もよくある間違いの一つだ。実際はペンギンではなく、パフィン(ニシツノメドリ)という別の人気者がいる。カラフルな鳥で、白と黒の羽毛をオレンジ色の足とオウムのようなくちばしでドレスアップしている。

先のとがった色鮮やかなくちばしから「海のオウム」とも呼ばれるパフィン(ニシツノメドリ)。ペンギンと混同されがちな鳥だ。(写真はアイスランドで撮影)(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

ペンギンと同様、パフィンは泳ぎや潜水が得意だ。羽毛は水をはじき、海水を飲むこともできる。繁殖期になると、沿岸で大きなコロニーをつくる。

ただし、ペンギンと異なり、パフィンは時速90キロ近い猛スピードで飛行できる。海で魚を捕まえた後、沿岸の巣で待つ子供たちに素早く届ける。なお、北極にもオオウミガラスという飛ばない鳥がいたが、1844年に絶滅した。

南極で最大の陸生動物は

北極の捕食者といえば、食物連鎖の頂点に君臨するホッキョクグマだろう。この巨大な哺乳類は北極圏に広く分布し、英国ロンドンとほぼ同じ緯度にあるカナダのジェームズ湾にもいる。

ホッキョクグマにとって、氷は不可欠だ。氷を狩りの拠点として、息継ぎのため海から出てきたアザラシを捕まえる。「簡単に言えば、ホッキョクグマは最も栄養価の高い食料、つまり、アザラシを手に入れるために進化を遂げているのです」と、カナダ環境・気候変動省の名誉研究員とアルバータ大学の非常勤教授を兼任するイアン・スターリング氏は説明する。

北極圏内の陸地には、ホッキョクギツネやオオカミの亜種であるホッキョクオオカミといった捕食者も生息している。

一方、「南極に陸生の捕食者はいません」と言うのは、アルバータ大学の生態学者アンドリュー・デロシェール氏だ。

地球上で最も寒く、最も乾燥し、最も風が強い南極は、生命を寄せ付けない巨大な砂漠のような場所だ。最大の陸生動物は翅のない小さな昆虫ナンキョクユスリカで、成虫は1週間ほどしか生存できない。

南極半島やロス海など、南極大陸の沿岸部で繁栄しているペンギンは陸生ではなく、水生あるいは海生動物とされる。漫画や大衆向けのメディアなどで目にするシーンと異なり、南極点のような内陸部にペンギンはいないということだ。

いてつく南極の海は生命の宝庫

南極そのものは荒涼とした大陸だが、いてつく海の中と外、そして周辺では、いろいろな野生生物が繁栄している。

「南極圏の海は本当に豊かで、生物多様性の王国です。あちこちがさまざまな種でにぎわっています」と、英南極研究所で保全生物学の研究を率いるフィル・トラサン氏は語る。

南極の海は小さな甲殻類オキアミの宝庫で、ペンギンはもちろん、シロナガスクジラ、ザトウクジラ、ミンククジラといった大きなクジラたちの餌になっている。

ペンギンは南極の代名詞だが、南極大陸で子どもを産み、育てるのはコウテイペンギンとアデリーペンギンのみだ。ほかには、ヒゲペンギンやジェンツーペンギン、マカロニペンギンの3種が南極圏に暮らしている。ペンギンは泳ぎが得意で、オキアミ、魚、イカなどを水中で追い回す。氷上には天敵が少なく、空を飛ばないように進化した。

ただし、ペンギンは海中でヒョウアザラシと戦わなければならない。ヒョウアザラシは恐ろしいハンターだ。そのうえ、興味深いことにオキアミも食べる。ニュージーランドのコサトカ・コンサルティングで南極の研究に従事するレジーナ・アイサート氏は、ヒョウアザラシは「大きな犬歯で鳥や哺乳類を捕食します。さらに、ざるのような歯を持ち、海水からオキアミをこしとって食べます」と説明する。

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南極にサメはいないが、北極にはたくさんいる
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