新型コロナで可能性指摘 「エアロゾル感染」とは?

日経Gooday

新型コロナの飛沫核感染は未確認

これまで、新型コロナウイルスの飛沫核感染の発生は確認されていません。それでも、インフルエンザ予防策と同様、室内の換気は、感染リスクを減らすために役立つと考えられています[注10]

新型コロナウイルスが、人に感染する際に利用する受容体は、SARSコロナウイルスと同じであることが既に示されています。したがって、感染経路はSARSと同様である可能性が高いと考えられています。SARSの場合には「特別な条件下での空気感染なども完全に否定することはできませんが、可能性はかなり低いと考えられています」とされていました[注11]

医療現場ではエアロゾル感染のリスクが高い

前述したように、医療現場では、気道吸引や気管内挿管、検体採取などの医療行為の最中に、さまざまな粒子径の飛沫が生じる可能性があります。したがって、新型コロナウイルスと闘う医療従事者は、医療行為の最中に発生する可能性のある、ウイルスを含んだエアロゾルの発生を想定して細心の注意を払っています[注12]

WHOが2013年に発表した「新型コロナウイルス感染症の疑い例と確定例に対する医療における感染予防と感染管理」[注13]には、「エアロゾル発生手技とは5μmより小さい粒子を含むさまざまなサイズのエアロゾルが発生する全ての手技と定義される。現在のエビデンス、なかでも最良のエビデンスはSARSコロナウイルス感染症の研究から得られたものだが、気管内挿管によって病原体が伝播していることについては一貫性があることを示している」とあり、医療従事者はそうした場面でN95マスクを含めた対応をしています。

患者の嘔吐と下痢の際のエアロゾル発生には注意が必要

私たちの日常生活においても、ウイルスを含むさまざまな粒子径のエアロゾルが発生する危険性がある場面が2つあります。それは、新型コロナウイルス感染患者が嘔吐した場合と、下痢をしている場合です。嘔吐物、便にコロナウイルスが含まれている可能性は高いです。

嘔吐物の処理は、ノロウイルス感染者が嘔吐した場合と同様に行う必要があります。

また、患者が排便後に、便器に蓋をかぶせずに流すと、ウイルスを含むエアロゾルが舞い上がり、しばらく空気中に漂う可能性があります[注14]。もし、洗面台も同じ空間にあるなら、歯ブラシやうがい用のコップに付着する可能性さえあります。

トイレを含む家庭内や施設内の消毒方法については、東京都健康安全研究センター[注15]などのページを参考にしてください。

日本でエアロゾル感染する病気といえば「レジオネラ症」

ちなみに、日本でエアロゾル感染する病気といえば「レジオネラ症」が有名です。温泉施設などでの「レジオネラ症」の患者発生に関するニュースを耳にしたことがある人も多いと思います。レジオネラ症は、河川、湖水、温泉や土壌などに生息しているレジオネラ属菌による細菌感染症で、重症の肺炎(レジオネラ肺炎)を引き起こすことがあります。

厚生労働省のサイト[注16]では、以下のように説明しています。

レジオネラ症は、主にレジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(細かい霧やしぶき)の吸入などによって、細菌が感染して発症します。レジオネラ属菌はヒトからヒトへ感染することはありません。

1.エアロゾル感染
 レジオネラ属菌に汚染されたエアロゾルを吸入することによって感染します。代表的なエアロゾル感染源としては、冷却塔水、加湿器や循環式浴槽などが報告されています。

レジオネラ症の病原体はレジオネラ属の細菌で、ウイルスではありません。肺の奥の肺胞までこの細菌が達した場合に、肺炎を引き起こすため、エアロゾルの直径がおおよそ5μm以下になると感染すると考えられています[注17]

上記の厚生労働省のサイトでは、感染予防策として「超音波振動などの加湿器を使用するときには、毎日水を入れ替えて容器を洗浄しましょう」と述べています。

手洗いや消毒に加え、換気にも注意が必要

新型コロナウイルス感染症は、現時点では先が見えないために、SNSでは、悲観的な情報ばかりが大きく取り上げられる状況になっています。しかし、不確かな情報にあわてることなく、持病があればしっかり治療をし、免疫力を落とさないよう健康的な生活を続けながら、感染する可能性がある場面をできるだけ避け、正しく予防することが大切です。今回のエアロゾル感染に関する報道は、インフルエンザ予防策のひとつとして換気が大切だったことを思い出させてくれました。これまでの手洗いや消毒に加えて、換気も適切に実施していくことが大切です。

[注10]http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/respiratory/ncov/disin.pdf

[注11]http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/QA/QAver2G002.html

[注12]https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/2019nCoV-01-200210.pdf

[注13]http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/1305_coronavirus_who_j.pdf

[注14]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4692156/

[注15]http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/assets/diseases/respiratory/ncov/disin.pdf

[注16]https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html

[注17]https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/86/11/86_11_2039/_pdf

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday2020年2月20日付記事を再構成]

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