花見の湯で春の訪れ体感 桜を眺める日帰り温泉10選
桜の季節はもうすぐそこ。ゆったり温泉につかりながら、お花見はいかが。泊まらなくても絶景を楽しめる施設を専門家が選んだ。
1位 宝川山荘
せせらぎと360度のヤマザクラ
旅館「汪泉閣(おうせんかく)」が併設する日帰り温泉施設。渓流沿いの露天風呂から、周囲の山々に咲くヤマザクラを眺められる。その数、200本近く。同施設によれば、視界の360度がピンク色に色づく。例年、4月下旬から5月上旬が見ごろだ。
川のせせらぎがヤマザクラの景色とよく合う。「雄大な自然に囲まれて美しい桜を満喫できる」(藤田聡さん)。「浮世を忘れて花とお風呂に酔ってしまいそう」(西村りえさん)
4つある露天風呂のうち、おすすめは摩訶(まか)の湯。「ここから眺めるヤマザクラが特に絶景」(石川望さん)。映画やテレビのロケで使われることもあるという。摩訶の湯を含む3つが混浴(残り1つは女性専用)で、膝付近まで隠れる専用の湯あみ着を使用する。
旅館の敷地内には遊歩道が整備されており、湯上がりに散策しながら桜を見るのもいい。
(1)大人1人の入浴料 2000円(2)営業時間 午前9時~午後5時(3)アクセス 関越交通バス停「宝川入口」から送迎車で約5分(4)公式ホームページ https://www.takaragawa.com/higaeri.html
2位 天空海遊の宿 末広
桜の先に広がる大海原
5階建ての旅館の屋上に、男女別の露天風呂と共用の足湯が並んでいて、それぞれから眼下の約300本の桜と、その先に広がる大海原を見渡せる。三河湾に突き出た半島の先端にあるため、周囲に視界を遮るものがない。
桜はソメイヨシノなどで、例年3月下旬から4月上旬が見ごろ。海の色とのコントラストが鮮やかで、「ピンクの雲が青い空に浮かんでいるように見える」(本多美也子さん)。「まさに絶景露天。開放的な気分に浸れる」(清水慶伸さん)
時間の経過とともに桜の見え方が変わる。なかでも「夕焼けを楽しみたい」と寺沢秀治さん。旅館によると、桜、海、空があかね色に染まる。ただ日没は午後6時を回るため、時間制限のある日帰りだと最後まで見られない。
(1)1200円(公式ホームページの事前購入で10%オフ)(2)金土日月の午前11時30分~午後5時30分(3)名鉄蒲郡線西浦駅から車で約10分(4)http://www.hotelsuehiro.co.jp/
3位 信貴山観光ホテル
湯船に覆いかぶさるよう
寅(とら)の信仰で知られる奈良・信貴山(しぎさん)で唯一の温泉。露天風呂の湯船に覆いかぶさるように桜の枝が伸びており、「目の高さに花がある」(大原隆明さん)。
傾斜地の上にホテルが建っているため、敷地とその周辺に咲く約100本のソメイヨシノを露天風呂から見下ろせる。満開時はピンクの雲のように見えるという。「ホテルに入館してから退館するまでずっと花を楽しめる」(大原さん)。「ライトアップされた夜桜がとてもきれい」(石川晶生さん)
例年の見ごろは4月上旬~中旬。「信貴山自体が桜の穴場」(沓掛麻里子さん)で、大阪からも手軽に行ける。
(1)1500円(施設内の喫茶・レストランを利用すれば割り引き)(2)午前11時~午後8時(3月1日から)(3)奈良交通などバス停「信貴山門」から徒歩約2分(4)https://www.shigisan.co.jp/
4位 藤野やまなみ温泉
水面に映る夜桜美しく
廃校になった中学校の跡地にある日帰り温泉施設。露天風呂を取り囲むように、ソメイヨシノや花びらが小さめのオカメザクラが咲く。ソメイヨシノのなかには樹齢80年ほどの大木も。ほかの桜より枝が多いため、花の数が多く見えるという。
「丈の低いツツジなども豊富。丈の高い桜との組み合わせで景色に開放感がある」(西山正大さん)。「ライトアップされる夜は、お湯の表面に桜が反射して美しい」(杉本圭さん)。見ごろは例年3月下旬~4月上旬。
(1)700円(2)午前10時~午後9時(3)神奈川中央交通バス停「やまなみ温泉入口」から徒歩約2分(4)http://yamanami-onsen.jp/
5位 ホテル神の湯温泉
内湯からも庭園楽しむ
甲府の街を一望できる高台の温泉旅館で、和風の庭園にはソメイヨシノなどを中心に約100本の桜が咲く。内湯と露天の両方の湯船から、その庭園を眺められる。
「内湯の大きな湯船にゆったりとつかり、一面の窓ガラス越しに見る桜は独特の風情がある」(寺沢さん)。自然石を積み重ねた「岩風呂風の露天から、桜と調和した庭園を眺めるのもいい」(石川望さん)。見ごろは例年3月下旬から4月中旬。
(1)1000円(2)午前11時~午後11時(3)JR中央線竜王駅から車で約5分(4)https://www.kaminoyu-onsen.com/
6位 くらま温泉
春らんまん 深い緑が演出
京都市北部の霊山、鞍馬山のふもとにある温泉旅館。露天風呂に入りながら、すぐそばにある1本のヤマザクラを眺められる。「山々の深い緑に桜の花が映え、春らんまんを演出する」(石川晶生さん)。「個性あるヤマザクラが山深い光景にマッチしている」(西山さん)。見ごろは例年4月上旬~中旬。
周囲の鞍馬山は、多種多様な桜が山の木々に混じって点々と咲く「雲珠(うず)桜」で知られており、その雰囲気も味わえる。
(1)1000円(2)午前10時30分~午後9時(3月末までは午後8時)(3)叡山電鉄「鞍馬駅」から送迎車で約3分(4)http://www.kurama-onsen.co.jp/index.html
7位 中川温泉 信玄館
敷地内と山中の桜満喫
神奈川の尾根、丹沢山塊(さんかい)のふもとにある温泉旅館。敷地内にはソメイヨシノなど5本の桜があり、2階の露天風呂から手が触れそうな距離に花が開く。見ごろは例年3月下旬~4月上旬。
向かいの山中に咲くヤマザクラも見える。ついたてがガラス製なので、お湯につかったまま景色を楽しめる。「自然に寄り添った温泉」(西村さん)。「山々の自然と川のせせらぎが桜とマッチしている」(本多さん)。
(1)1000円(2)午前11時30分~午後6時(土曜、休前日、繁忙期は午後5時まで)(3)富士急行湘南バス停「中川温泉入口駅」から徒歩約4分(4)http://www.shingenkan.co.jp/
8位 ゆふいん山水館
由布岳バックに「絵画のよう」
1911年に創業した老舗の温泉旅館。露天風呂からは豊後富士と呼ばれる由布岳と、その前景となる桜を眺められる。桜の本数は多くないが、「由布岳をバックにした風景は絵画のように素晴らしい」(大原さん)。「桜と由布岳の両方を眺められるのはぜいたく。開放感があって気分も爽快」(石井宏子さん)
桜の見ごろは例年3月下旬~4月上旬。露天風呂があるのは1階のゆふの湯と2階のあさぎりの湯で、日帰りの時間帯はそれぞれ男性専用、女性専用となる。
(1)700円(2)正午~午後4時(3)JR由布院駅から徒歩約8分(4)http://www.sansuikan.co.jp/
9位 どんどこ湯
濁り湯に映えるピンク
敷地面積で西日本最大級の日帰り温泉施設。男湯の露天風呂からソメイヨシノを2本、女湯からは1本を眺められる。同施設によれば、湯船に向かって幹を傾けて植えたため、枝が覆いかぶさってきて、シダレザクラのようにも見えるという。
お湯は緑白色に濁っていて、桜のピンクとコントラストをなす。「湯船は阿蘇の自然木と巨大な溶岩石を組み合わせたダイナミックなつくりで、桜の美しさが際立つ」(藤田さん)。見ごろは例年4月上旬。
(1)630円(2)午前11時~午後10時(3)九州産交バス停「アーデンホテル阿蘇」から徒歩約1分(4)https://www.dondoko.arden-aso.jp/
10位 七里川温泉
頭上で花びら舞う風情
千葉県南部の山間部に立つ一軒宿。露天風呂のそばに枝ぶりの立派な八重桜が1本立っていて、湯船に体を預けると頭上に花が広がる。「空の開放感が素晴らしい。風が吹くたびに桜の花びらが舞い、風情がある」(寺沢さん)。見ごろは例年4月中旬~下旬。
露天風呂は3つあり、桜がよく見えるのはそのうちの1つ。1日おきに男女が入れ替わるので事前に確認が必要だ。宿の囲炉裏では持ち込みの食材を焼いて食べられる。
(1)880円(2)午前9時~午後10時(3)君津市コミュニティバス「七里川温泉」から徒歩約1分(4)http://shichirigawa-onsen.com/index.html
温泉で春の訪れ感じるぜいたく
今回のランキングでは、日帰り客を断っていたり入浴時間を大幅に制限したりしているホテル・旅館を除いた。時間とお金に余裕がある人は、泊まってみてさらなる絶景を楽しみたい。
全国の温泉地のグルメや旬の情報を紹介するサイト「おんせんニュース」の清水慶伸編集長によると、「客室の専用露天風呂から桜を眺められる旅館もある」という。
お花見温泉は大きく分けて、露天風呂の敷地内に桜があるケースと、露天風呂から遠方の桜を眺めるケースの2通りがある。前者はソメイヨシノが多く、桜そのものの美しさを間近で堪能できる。後者は山あいのヤマザクラが中心で、渓流や山々などの豊かな自然とともに楽しめる。
温泉ライターの西村りえさんは「それぞれに違った良さがある。事前に施設の人に桜の種類や見え方を聞いておくと、より楽しめそう」と話す。注意したいのが開花時期。日本気象協会によれば、今年は2月以降の暖かさで全国的に例年より早まるという。
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[NIKKEIプラス1 2020年2月22日付]
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