型押しで「ブランド匂わせ」
名刺入れでオススメしたいのは、見た途端に「良いもの」とわかるものです。そうなると、それなりのブランド製品のほうがいいでしょう。と言っても、ブランド名が大きく出ていたり、すぐどこのブランドかわかるようなロゴが全面に入っているようなカラフルなデザインのものはほとんどのビジネスパーソンには似合いません。そういったデザインは、多くの場合に派手さや「ひけらかし感」が強く出て、あまり知的に感じられないからです。
「良いもの」とわかるのは、まずしっとりした上質レザーのツヤや光沢です。ただ、革があまりソフトだと形崩れしやすかったり、表面にキズがつきやすかったりしますので、適度に硬質な質感のものを選んだほうが日常使いしやすいです。その意味で、活躍するビジネスパーソンにおすすめなのは、革の表面に「型押し」がほどこされたものです。
誰もが知る有名ブランドには、独特の型押し加工をブランドの「顔」としていることも多いので、見る人が見れば「あのブランドのものだな」とわかるものです。そうすると「匂わせ」効果といいますか、質の良さはおのずとわかります。ロゴが前面に出ているようなブランドものよりも、風格が伝わります。
できる男性の財布は目立たない
さて、革製品と言えば大事なものに「財布」があります。本当を言いますと、他人のお財布にはアドバイスはしにくいものです。ライフスタイルによって、持ち方がまるで違いますから。しっかりカードなども入る厚手の長財布が必要な方もいらっしゃいますし、二つ折りの財布をさりげなくポケットに入れて身軽に過ごしている方もいるでしょう。ただ、ビジネススーツに身を包むことが多い方には、「薄手の上質な長財布が一番似合います」と言います。
私は幸運にして一流のエグゼクティブが多く集っていたホテルやビジネスクラブでの勤務経験があるため、そういった方々の振る舞いや持ち物を垣間見る経験を多くさせていただきました。上の経験の中で感じたことから「できる男の財布のセオリー」を言うとすれば、「薄くて目立たない長財布を使う」ということです。
目立たない、と言っても、見たとたん上質な革だということはわかるようなクラスのものです。なめらかで上品な光沢があるものを使っていた人が多かったのです。名刺のところでお話ししたような型押しが施され、何となくブランドがわかるものも目にしました。色は黒、ダークブラウン、渋みのある上品なボルドーなどをよく目にしました。そして、それらはいずれも、非常に薄いものでした。
その中にはピンとした紙幣が数枚とゴールドカードやプラチナカードが1~2枚だけの潔さ。それがグローバルに活躍する一流エグゼクティブ男性に共通したスタイルでした。中に入っていたのが本当にピンとした紙幣だったかどうかはわかりません。しかし、そんな想像になってしまうような凛(りん)とした印象でした。
それを、スーツ内側のポケットからスッと出し、用が終わればまたスッとすべるようにポケットに入れてしまいます。ですから、全体的には目立たないのです。スーツの表に財布の形が響くようなことはありませんでした。
こういった話をすると「それは理想だが、現実に難しい」という方は多いです。毎日持ち歩くお財布ですから、色々なものを入れたくなるのは当然でしょう。結局厚みのあるものしか持てないということになります。
違いは何でしょうか。例えば領収書などをためずに、すぐに経費処理をする。本当に必要なカードを吟味して取捨選択をする。診察券などの他のカード類は違う収納の仕方を考える。多くのものを入れっぱなしにするのではなく、今日必要なものだけを持ち歩く、などが考えられます。そう考えれば、財布の見直しは今日の自分に本当に必要なものの見直しでもあります。

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