「本当に医学部でいいか」 名門東海は生徒を迷わせる東海中学・高校(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

校地はもともと建中寺の境内だった
校地はもともと建中寺の境内だった
国公立大医学部への合格実績で群を抜く東海中学校・高等学校(名古屋市)。授業やカリキュラムに何か秘密があるのかと思えば、「医学部受験のための特別な勉強なんて学校ではやっていません」。むしろ「本当に医学部でいいのか絶えず考えさせたい」のだという。どういうことなのか。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が迫った。

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名古屋の病院は東海の卒業生だらけ

愛知県名古屋市にある東海中学校・高等学校は、2019年、東大に37人、京大に40人、国公立大医学部に116人の合格者を出している超進学校だ。特に国公立大医学部合格者数では開成や灘をも凌駕(りょうが)する。なぜ医学部合格者が多いのか。

「世間的に医学部ブームだといわれています。でも本校はずっと前から医学部進学志向が非常に強い学校でした。にわかにブームに乗ったように思われるのは甚だ心外なんです」と言うのは高校教頭の西形久司さん。

1888年、もともとは浄土宗の僧侶を養成する学校としてつくられた。大正時代に教育熱が高まると、旧制中学が不足した。そこで東海も一般生を受け入れ、一般的な中学校としての認可を得た。

しかし、愛知県はいわゆる「官尊民卑」の思想が強い土地柄で、特に「官」志向で立身出世を目指す優秀な子どもたちはたいてい愛知一中(現在の旭丘高校)を選んだ。東海を選ぶのは、自営業者が多く、そのなかには医者の家庭も多かった。それで医学部進学率が当時から高かったのだ。

当時から近隣に愛知県立医科大学(現在の名古屋大医学部)があったことも大きい。現在でも名古屋大医学部の約4分の1は東海出身者で占められている。ほかにも名古屋市立大、岐阜大、三重大、浜松医大など、近隣に医学部が豊富であることも、驚異の医学部進学率の前提だ。2019年には名古屋大医学部に29人、名古屋市立大医学部に23人の合格者を出している。

「このあたりの病院は卒業生だらけなので、『病院では声をかけるな!』と卒業生たちには言っています」と西形さんは笑う。

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